私は授業の一環で昨年から、雑穀・ユリについて研究をしている。ユリは町の花であり、そのユリ根は昔から高級食材として珍重されてきた。私はこのユリ根を活用して商品開発、特に新しい食感のスウィーツを作ろうと「ユリ玄プロジェクト」を立ち上げ取り組んでいる。この取り組みは町の産業振興課と連携しながら進めている。 シフォンケーキ、クッキー、餃子の皮、ようかん、アイスクリームなど様々作ってきた。そして、シフォンケーキとようかんを道の駅で試食提供し、アンケートに答えてもらい、これからの課題としている。「おいしいけど、もう少し捻りがほしい。アクセントがほしい」という感想をいただいている。町の人たちからの励ましの言葉は、私たちの活力源の一つとなっているのだ。 これまでの試作品は、まだ納得できていない。最終目標としているのは、町の特産物としての商品開発だ。素材の風味を活かすことや新しい食感となるとまだまだ時間と工夫が必要だ。 こうした取り組みの中で、NPO法人のテーブル・フォー・トゥーという取り組みを知った。簡単に言うと開発途上国の給食支援。私は、恥ずかしながら最近まで、世界で飢餓や餓死が絶えないということを知らなかった。「世界がもし100人の村だったら」という本と出合い、テレビを視聴し知ることができた。衝撃的な映像が次々と映し出され、とても悲しい気持ちになると同時に、自分の無恥さ・いい加減さをいやというほど思い知らされた。 そこで、テーブル・フォー・トゥーを私たちのスウィーツ作りのコンセプトの一つに加え、この運動に参加・協力できるのではないかと考えた。 町興しの理由から始まったこの研究は、世界の人へ視野を向けることまで広がった。まだまだ、未熟だが、「共生・共有」を心の糧として、農業高校生だからこそできる国際支援活動があることを発信したい。
第三分野の最終選考に残った作品の中で、国際的な視野が書かれた唯一のエッセイでした。田舎の分校に通っている作者が、町の特産品であるユリ根を使ったスウィーツの開発による町興しに取り組み、さらに国際支援活動まで視野を広げていく姿勢がすばらしいと思いました。エッセイの内容も、しっかり物事を見ていて、きちんとした主張がある点を評価しました。こういう作品がもっと増えて欲しいと思います。