36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2009年度 日本福祉大学 第7回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
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入賞者発表
第2分野 あなたにとって家族とは?
優秀賞 続きはわしがやる〜おじいちゃんとおばあちゃん〜
立命館高等学校 2年 岸 あんず

 私のおじいちゃんは頑固だ。まわりの意見に耳を貸さず、自分の意見を突き通す。人から指図されるのが、あまり好きではないのだろう。そして何かを思いつくと、すぐに行動に移す。つまり、何でも一人で決めてしまうのだ。
 しかし、そんなおじいちゃんにもとても大切なものがある。それはおばあちゃんだ。
 私のおばあちゃんはつい最近亡くなってしまった。おじいちゃんはおばあちゃんがいなくなって悲しんでいた。でもおじいちゃんは、おばあちゃんの祭壇の花について決めるとき、真っ先に
「おばあちゃんは、かすみ草とトルコ桔梗がいちばん好きやったから、それでいっぱいにして。」
と言った。私も家族もおばあちゃんが花をすごく好きなのは知っていた。しかし、おばあちゃんの「いちばん」好きな花を知っていたのはおじいちゃん一人だった。
 そして、おばあちゃんは刺繍をするのも好きだった。亡くなってしまう直前までしていた。それは庭に咲いているぼたんの花だった。一メートルほどあるもので、おばあちゃんは完成できずに亡くなってしまった。完成できなかった刺繍を見ておじいちゃんは、
 「続きはわしがやる。」
と言うたった一言で毎日毎日刺繍をし始めた。
 「四十九日までには完成させる。」
これがおじいちゃんの口癖にまでなっていった。私は完成した刺繍を見たとき、慣れていないおじいちゃんがした刺繍を見て、少し泣きそうになった。刺繍をおばあちゃんの写真の前に置くおじいちゃんの顔は優しかった。
 私はおじいちゃんがおばあちゃんをこんなにも大切に思っていると最近知った。でもおばあちゃんもおじいちゃんのことが同じように大切だったんだろうと思う。そんな二人は幸せ者だ。

講評

 「続きはわしがやる」という題名がとてもよいですね。思わず読みたくなる題名です。ただし、「〜おじいちゃんとおばあちゃん〜」は必要なかったと思います。全体の構成も、冒頭でおじいちゃんの頑固さがうまく表現されており、続く段ではおじいちゃんがおばあちゃんの好きだった花の名前を知っていたり、慣れない手つきで刺繍までしてしまうそのギャップが面白くて、よいエッセイになっています。孫である作者が、それまで知らなかったおじいちゃんを再発見した驚きと喜びが、エッセイを読む私たちにしっかり伝わってきます。さらに、作者以外の家族がおじいちゃんの行動に対してどう感じたのかを書くと、もっと良くなったと思います。

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