36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2009年度 日本福祉大学 第7回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
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入賞者発表
第1分野  人とのふれあい
優秀賞 心が温まった日
千葉国際高等学校 2年 川上 小百合

 6月のある日、バイト先のファミリーレストランでのこと。その日は近くの二つの高校の文化祭があり、また広告で割引券が入っていたことにより、ランチの時間帯から混み合っていた。テーブルが空くとすぐに下げてまたそこにお客さんが…という繰り返しで、お客さんの勢いはなかなか止まらなかった。今の時間でさえこの状況ということは、これから先、ディナーの時間は…と嫌な予感がした。
 そして迎えたディナータイム。私の予感は的中し、あっという間に入り口は家族連れと文化祭を終えた高校生でいっぱいになってしまった。それに加え、ピンポーン、ピンポーンとコールは鳴り止まず、私の頭の中はパニックになった。待たされれば待たされる程、イライラするお客さん達。待ちきれず怒って帰る家族。料理遅いんだよ、という声。「パフェもういいので早く伝票下さい。」という高校生。たくさんのクレームを受け、私はひたすら頭を下げるしかなかった。
 オーダーをとって、料理を運んで、下げ物をして…。そんな時お会計でずっと待っている方がいるのが見えた。「大変お待たせ致しましたっ。」私が急いでレジへ向かうと、そのお客さんは言った。「忙しいのにごめんなさいね。今日すごく混んでいるのね。学生さんも多いし。あなた動きっぱなしで大変でしょう。でも、あなたの笑顔、とってもすてきよ。」その言葉を聞いた時、私は驚きと嬉しさでいっぱいになり、思わず笑顔がこぼれた。今までの疲れが一瞬にして飛んでいった。そして、お会計が済むと「あなたの笑顔は心からのスマイルね。私元気になれるわ。ありがとう。」と。そのお客さんの言葉一つ一つがとても温かいもので、その後ろ姿を見送りながら思わずじーんときてしまった。本当に嬉しかった。
 あの日、あのお客さんの言葉は、私にたくさんのパワーをくれた。今でも思い出すと心が温かい。だから私もこの気持ちを忘れず、いつまでも心からのスマイルでいたいと思う。

講評

 この作品も最優秀賞と同様に実体験をもとにして書かれていますので、具体的でわかりやすく、臨場感にあふれています。その点を高く評価しました。時にはいやな気持ちにもなったのでしょうが、自分の役割を一生懸命果たしながら笑顔でお客さんと接していた姿が目の前に浮かんできます。作者は少しも自慢をしていませんが、人柄の良さが行間から伝わってきます。だからこそ、お客さんも「あなたの笑顔、とってもすてきよ」と言ってくれたのでしょう。こういう声をかけてくれる大人もすてきだと思います。第一分野のテーマである「人とのふれあい」から生まれる温かい気持ちが感じられる秀作です。この気持ちをいつまでも大切にしてください。

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