「サッカーボールを蹴ってみないか?」 5年前のことだ。ある先生からのたった一言で、僕の夢が始まった。 僕は生まれつき筋肉の病気で、電動車いすがないと自分の行きたいところに行くことすらできない。つまり、世間一般でいう身体障害者というやつだ。電動車いすを操作するのにもすごく大変!! それなのに、そんな僕がスポーツをするなんて信じられないでしょ! 半信半疑で昼休みの体育館に連れてこられた僕は、先生が、体育倉庫の中からある物を探すのを見つめていた。倉庫から出てきたのは、一般のサッカーボールよりもかなり大きいサッカーボールだった。 とてもワクワクしながら見ていた僕は、その時初めて『電動車いすサッカー』というスポーツがあることを先生に教えてもらった。 障害のせいでスポーツができない人生なんかじゃないんだ、諦めなくたっていいんだと、本当に嬉しくてたまらなかった。 そして僕は、その日から毎日ボールを蹴った。空き時間にはひたすら先生と練習をした。最初はなかなか上手くいかなかったけれども、日に日に上手になっていくのが自分でも実感できた。だが、何より先生との試行錯誤の毎日が楽しかった。だから、そんな日々は僕の中学時代の大切な思い出だ。 それから5年が経った今。僕は高校3年生になった。大好きなサッカーはというと、今はチームに入部してプレーをしている。先生は転勤してしまったけど、いつか僕の試合を見に来てくれるのではないかと、今からとても楽しみにしている。何よりも、障害者の僕に夢を与えてくれたこと、諦めないことを教えてくれたことに感謝している。本当にありがとう。 さぁ、いよいよ今日のスタメンの発表だ。 「背番号3番、佐藤仙務くん!」 今日も僕の精一杯の声とともに、試合コートに入っていく。「よっしゃ!」
電動車いすがないと自分の行きたいところに行くことすらできなかった作者が、ある先生からの一言がきっかけで「電動車いすサッカーを始めてよかった」と思うようになった気持ちがよく伝わってきます。自分の経験や感じたことを素直に表現している点に好感を持ちました。エッセイ全体から感じられる明るいトーンが心地よく、文章もうまく書けていると思います。特に、「さあ、いよいよ今日のスタメンの発表だ」から、最後の「よっしゃ!」までの締めくくりがよいですね。