36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2009年度 日本福祉大学 第7回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
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審査員の評価と感想

時代を感じる作品もあり、全体的にレベルアップしています。

今年も7,490点の作品が集まり、厳しい審査を行いました。今年は第三分野の応募数が他の3つの分野より少ないなど、分野による差があったようです。しかし、第一分野で審査員全員が最高点を付ける作品が出るなど、質の高い作品が数多くありました。白熱した審査会で感じたことを、審査員の皆さんに話し合っていただきました。

審査員プロフィール

粗削りでもいいから、突出した作品を期待したい。
加藤 私は今年から審査員になりましたが、第一回から読者として作品集を楽しく読ませてもらっていました。そんな目から見ると、第一回・第二回のころは粗削りですが、非常にインパクトのある作品があったように感じます。最近は一定のレベルを超えた秀作ぞろいですが、突出した作品がないような気がします。
川名 私は第一回から参加していますが、加藤学長と同じように感じます。最近は粒ぞろいですが、最初のころのような「おーっ、すごいな」と、強く印象に残る作品が少ないですね。
角野 最初のころは観念的で、主義主張が前面に出ている作品が多くあり、迫力があった反面、エッセイとしては疑問符が付く作品も見受けられました。高校生らしさを考えると、身の丈を超えた主張もいいけれど、生活の中からすくい出したエピソードもリアリティがあっていいと思います。
福地 圧倒的に抜きん出る作品は少ない気がしました。昨年はグローバルな視点に立った作品がいくつもあり、今年も期待していましたが、世相を反映した作品は少なかったですね。アメリカではオバマ大統領が誕生し、日本でも政治の世界が大きく動きましたが、そうした話題を取り上げた人がほとんどいなかったのは残念だと思います。
川名 高校生なのですから、内にこもらず、もっと社会に目を向けて欲しいですね。社会に目を向けた作品だと、私はいい点を付けたくなってしまいます。
題名をもう少し工夫して欲しい。
杉山 最初はどの作品も手書きでしたが、次第にワープロ・パソコンを使って書いた作品が増えてきて、数年前には携帯電話のメールで応募した作品が話題になりました。今年の最終選考まで残った作品は、手書きが多くてホッとしました。ただ、「おやっ?」と思うような難しい漢字を使っている反面、漢字にした方がいい言葉が平仮名になっているのをよく見かけました。パソコンで下書きして、清書しているのかもしれません。
川名 改行したら文頭は一文字空けるといった、私たちにとっては当たり前のルールを守っていない作品があったのは、残念です。
福地 視点はいいのですが、エッセイとしては完成度が低い作品がいくつもありました。書いたものを何度も読み返して推敲していけば、もっと内容が練られていい作品になるのに、もったいないですね。
角野 典型的な例が題名ですね。「どんなことが書かれているんだろう?」と思わず読みたくなる題名は少ないですね。そんな中で、「続きはわしがやる」は秀逸でした。キザでもいいから、若い人らしいタイトルがあってもいいと思います。
杉山 私が気になったのは、ここ二〜三年の出来事をもとに書いた作品より、小学校時代のような七年〜十年も昔の話を書いた作品が結構多かったこと。もちろん、そのころのことにふれる必要がある作品もありましたが、必ずしもそういう話ばかりではありません。どうして今の話を書かないんだろうと思いました。
第三分野と第四分野の力作に期待したい。
加藤 このエッセイコンテストは四つの分野で作品を募集していますが、第三分野の「わたしが暮らすまち」の応募作が少ないですね。
杉山 例年その傾向があるのですが、今年はとりわけ少なくなりました。今の高校生には、「ふるさと」と呼べる場所が無くなってきているんでしょう。しかし、最優秀賞と優秀賞に選ばれた作品は、ふるさとに残っているものをちゃんと受け継いでいく姿勢が感じられて、うれしく思いました。
福地 最近は屋内でゲームを楽しむ子どもは当り前で、外に出る機会が減って、視野が狭くなっているのかもしれません。外に出てもゲームや携帯と一緒、漠然と歩いているんじゃないかな。街の中でどんなことが起きているのかに、もっと注目して欲しいと思います。
加藤 第四分野の「社会のなかの『どうして?』」というテーマも高校生には難しいのかもしれません。
角野 高校生だと、隣の人たちや世界の人たちより、「自分がどうなるか」や「周囲の友だち」との関係の方に興味があるんでしょう。
加藤 確かに、学校行事の体験談を取り上げているものが多いですね。最近の若い人はボランティアや署名活動などに積極的に取り組んでいる印象がありますが、まだまだ社会に参加している高校生は少ないのかもしれません。そんな中で、広島や長崎、沖縄などでは平和教育を熱心に行っている学校が多いのだと思いますが、その地域では「平和」を取り上げた作品が多いようです。
川名 その他の地域の人でも、「平和」や世界の動きについて、もっと目を向けてもらいたいと思います。高校生も、社会を作っている一員だという認識を持って欲しいですね。そのためにも、新聞を毎日ちゃんと読んでもらいたいと思います。
角野 第二分野の「あなたにとって家族とは?」では、おじいちゃんやおばあちゃんはずいぶん大切にされているな……という印象でした。今年はお父さんやお母さん、兄弟・姉妹が活躍している話が少なかったですね。来年は、そんな作品にも期待したいですね。
加藤 今日は長時間にわたって審査をしてくださり、また、貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。

※板垣哲也審査員は都合により座談会を欠席されました。
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