36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2008年度 日本福祉大学 第6回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
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入賞者発表
第3分野 わたしが暮らすまち
優秀賞 甘酒どうですか
三重県立相可高等学校 3年  穂波

 年に一度の大晦日の夜、我が家は甘酒屋になる。というのは、伊勢神宮まで歩いて参拝する人に甘酒をふるまうのだ。
 私の家は父と母が仕事で帰りが遅く、頼りにしていた姉は家を離れて一人暮しで、普段は弟とおばあちゃんとの三人で暮らしている。 だから、家族六人が集まるこの日が私は大好きだ。 私の地域には昔から、大晦日の夜から元日にかけて伊勢神宮まで歩いて行き年越しをする恒例行事がある。 その時期どの家の田んぼにも伊勢芋の支柱がさしてあり、茶色の風景が広がっているので、ちょうど教科書で見る江戸時代のお蔭参りが復活したようである。 その通り道に、「あったか甘酒どうぞ」の看板が見えたら、それが我が家の甘酒屋である。 甘酒はたらいのように大きい鍋に入れ外のテーブルの上のガスバーナーの上に置いてある。 鍋から高く立つ白い湯気は見ているだけで心を温めてくれる。 甘酒の他におばあちゃんが漬けた奈良漬けと白菜漬けが置いてある。これはかなりの人気だ。
 家の前を通る人々に甘酒をふるまうこととなったのは今は亡きおじいちゃんが、姉が生まれたお祝いとして始めたのがきっかけであるので私が生まれた頃にはすでに存在していた。 だから立ち寄ってくれる人達の中には私が赤ちゃんの頃から知っている人もいる。
 「もう高校生なの! 名前覚えているよ、えっとね」
 高校生になった今、こうして言われた瞬間に全ての人への感謝の気持ちが広がって胸が熱くなった。 人に何かを与えると増えるもの、それは絆ではないだろうか。
 12時になり年が明けた。今年は高校を卒業しこの町を離れる私だが、来年も必ず甘酒を配りに帰ってこようと思う。

講評

 非常におもしろいエピソードです。子どもが生まれたお祝いに大晦日に甘酒をふるまうことにしたおじいちゃんに感銘を受けました。 この一家が努力している様子もよくわかり、読んでいて楽しい気持ちになります。題名もよいと思います。 文章のリズムが良くなるように表現を工夫すれば、もっと良い作品になると思います。

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