36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2008年度 日本福祉大学 第6回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
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審査員の評価と感想

時代を感じる作品もあり、全体的にレベルアップしています。

6回目を迎えたエッセイコンテスト。今年も9,000点を超える多数の応募がありました。全体的に文章力が向上し、時代を感じさせる作品も印象に残りました。審査員全員の意見が一致した作品もあれば、議論が分かれたり、白熱した審査会でした。その後、審査員の方に感想を話し合っていただきました。

審査員プロフィール

日常的なメールのやりとりの影響もあり、文章力・表現力が向上。
宮田 このエッセイコンテストも6回目を迎え、高校や高校生の皆さんに定着してきたことが、2年続けて9,000点を超える応募数に表れているのではないでしょうか。特に、学校の授業等で取り組む団体応募が例年以上に多くなっています。これが、今年の特徴の一つです。
角野 文章もうまくなっていますね。自分の考えがきちんと表現され、エッセイとして上手にまとめられている作品がいくつもありました。
川名 最近の若い人は携帯電話のメールを頻繁にやりとりしているようです。短い文章かもしれませんが、文章をつづることが日常的になっており、これが文章力の向上につながっているのかもしれません。
福地 私は今回初めて審査員として参加させていただきましたが、高校生の皆さんの優しい気持ちが伝わってくる文章が多かったことに感動しました。川名先生がおっしゃるように、最近の高校生の間では携帯電話を活用したコミュニケーションが盛んです。しかも、メールで文章を送るだけでなく、紙に文章を書いて、それを写真に撮ってメールに添付して送るということもやっているようです。短い言葉で気持ちを伝えるのがうまくなっているのではないでしょうか。
川名 ただ、「題名をもう少し工夫すればいいのに」と思う作品がいくつもありました。内容がわかりやすく、読みたくなるような題名を付けてほしいですね。
社会の動きや世界にも目を向けてほしい。
杉山 「核家族化」と言われて久しく、現代は二世代家族がほとんどだと思っていました。でも、応募された作品を読むと、三世代、時には四世代の家族の絆を書いた作品が多くあり、どこかホッとしたというのが正直な気持ちです。
角野 毎回感じるのですが、自分の身の回りで起きた出来事に感動した話が多く、もう少し視野を広げてほしいですね。外国の話を書いていても、自分から見える範囲の話しか書かれていません。視線を全方位に広げるのは難しいでしょうが、もっと遠くにも視線を持っていってほしいと思います。
川名 生きている世界が狭いのでしょうね。身の回りのことだけではなく、もっと日本や世界に目を向けて、世の中でどんなことが起きているかを考えてほしいと思います。そのためには、私たち大人が子どもたちに、もっと豊かな経験を与えられるようにしなければいけないのかもしれませんね。とはいえ、狭い世界の話であっても、感動を上手に表現して等身大の成長を感じさせるいい作品もありました。
宮田 今回、どの分野でも方言をうまく使っている作品が印象的でした。
福地 会話がイキイキとして、文章のテンポも良くなりますね。
川名 自分の故郷の方言だと、イントネーションまでわかって、実際に話している光景が目に浮かんできます。
角野 私は「○○さん、○○さん」というように、同じ言葉が何度も繰り返される作品が気になりました。もう少し整理して書くとリズム良く読めるのに残念です。
宮田 そして、もう少し説明を書いてくれると、もっと話が広がるのに……と思う作品も多かったですね。たとえば、犬とのエピソードはおもしろいのですが、その犬が喜んでしっぽを振ったとか、作者の顔をなめたといった情景を書いたり、どうしてその人と出会ったかまでしっかり書くと、さらに読む人のイメージが広がっていくと思います。
新しい視点に期待したい。
宮田 私は第3分野から読み始めたのですが、全体的にレベルが上がっているものの、大きな感動を覚える抜きん出た作品がありませんでした。他の分野を読み始めると「これは!」と思える作品に出会えましたが、第3分野の「わたしが暮らすまち」は応募点数も他の分野より少ないし、いい作品を書くのが難しいようですね。
杉山 どこに行っても駅前の雰囲気がみな同じになってしまったように、まちの特徴が無くなっているのが大きな理由でしょうね。だから第3分野で印象に残るのは、離島や過疎の村の話になってしまう傾向にあります。
角野 田舎に住んでいると目が都会に向いてしまって、自分の住むまちの良さに気付かないのかもしれません。「私たちが住んでいるのはこんなまちです」にとどまらず、「こういうまちにしたい」という視点で見るのも一つの方法ではないでしょうか。
福地 分野といえば「この内容なら違う分野に応募した方が評価が高かったのに」と思う作品を見かけました。分野が適切でないと、どうしても点数が低くなってしまいます。どの分野に応募するかも大切なポイントだと思います。
川名 エッセイコンテストも回を重ねてきたため、過去の入賞作品の傾向を研究した結果、類型的になってしまった作品も目立ちました。次回は新しい視点の作品にも期待したいですね。
杉山 毎回、時代を感じさせる作品があります。そんな作品を読むと、刺激を受けて楽しいですね。また、今回は残念ながら賞には選ばれなかったのですが、一人で何点も読み応えのある作品を応募された方がいました。個人的には特別賞を贈りたい気分です。
角野 でも、一つの作品に絞って何度も推敲(すいこう)した方が、さらにレベルの高い作品に仕上がったかもしれませんね。結果はわかりませんが。
宮田 毎回「今年はどんな作品に出会えるか」と、ワクワクしながら読んでいます。来年もどんな作品の応募があるか、今から楽しみですね。
今日は長時間にわたって、熱心な審査をしていただき、ありがとうございました。
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