36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2008年度 日本福祉大学 第6回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
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入賞者発表
第3分野 わたしが暮らすまち
審査員特別賞 人と味
国立大学法人筑波大学附属視覚特別支援学校 3年
市川 千尋

 私は3月3日になると、地元に帰りたくなる。無性に「伊賀まんじゅう」が食べたくなるからだ。 東京のデパートでひょっとして売っていないかと探してみたこともあるが、当然見つからなかった。 東京で容易に食べられれば、「伊賀まんじゅう」の良さも半減する様な気もするから、それでも仕方ないだろう。
 ある年、どうしても諦め切れなくなり、母に我が儘を言って地元の街から急ぎで送ってもらったことがあった。 少しだけ硬くなったそれは、味はかわらないのだが、なぜかふるさとで食べるものとは違う味がした。
 私は、中学を卒業してから東京の学校に進学した。東京での生活は刺激にあふれ、便利である。 それに比べると、地元には「何にもない」と言い切っていた。 しかし、「伊賀まんじゅう」のないひな祭りを初めて経験した時、その物足りなさを通じて、私の心の中に、「ふるさと」が深く根付いていたことに気付いた。
 ふるさとでは、春には春の、それぞれの季節にはその季節なりの節目があり、それにあわせて母や祖母はお菓子などを作って食べさせてくれた。 町のお菓子屋さんも、それは同様であった。 幼い頃からそれらを当たり前の様に味わって生活してきた私にとって、それらの味は、ふるさととは切り離せないものとして記憶されていたのだ。 そこで、同じまんじゅうを東京で食べても、それは既に私の記憶にある「伊賀まんじゅう」ではなくなってしまうのであろう。
 ふるさとは、そこを離れた時に初めてどのような所であるかに気付くというのはとても皮肉なものである。 しかし、心の中に根付いたものを感じた今、これからその良さをさらに知っていきたいと思う。 そしてふるさとにいる幼なじみや、それぞれのふるさとを持つ各地方出身のクラスメイトに、ふるさとの良さを伝え、語り合っていきたいと思う。 そして、「何もない所」ではなくて、「思い出が一杯詰まった所」自慢をし合っていきたい。

講評

 読んでいるだけで伊賀まんじゅうを食べたくなってくる、臨場感あふれる作品です。 しかし題名が「人と味」なので、伊賀まんじゅうの味について触れてほしかったです。 「今、東京でどんな暮らしをしているのか」「3月3日に地元ではどんな伝統行事をしているのか」というところまで詳しく書かれていると、さらに良くなると思います。

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