36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2008年度 日本福祉大学 第6回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
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入賞者発表
第3分野 わたしが暮らすまち
最優秀賞 たくさんの先輩
三重県立宇治山田高等学校 3年 勢力 里那

 鳥羽から定期船に揺られること30分。海の波にゆらゆらと揺られた後、一歩足を踏み出せばあたり一面が潮の香り。 ここがわたしの暮らすまち、答志島である。
 島民のほとんどが漁業に関わって生活しているこの島の朝は早い。3時頃になれば起き出して、4時には家を出て船で漁へ向かう。 ところが夜はというと、また別の漁へ出て行ったり、準備をしたり…と仕事が尽きることはない。漁師の頑丈さには驚きである。
 少子高齢化。それはこの島にも言えることで、島に一つずつしかない小学校と中学校の生徒人数は年々減っている。 かたや高齢化。老人会の会員数は周辺地域でトップクラスらしい。しかし忘れてはならないことがある。老人は老人ではないのだ。 老いてなどいない。60〜80代の人の中で、もう漁師を引退した人というのは本当に少ないだろう。
 わたしの親戚にもうすぐ百歳を超えるおばあさんがいる。まだ17年と少ししか生きていない私からしたら、百年間はものすごく膨大な時間に思える。 そのおばあさんがよく言っていることがある。 「仕事をしとらんとすぐボケてくるから、畑仕事でも何でも自分が一生懸命にやれることを見つけてやらんといかん。」ということだ。 思わず納得である。わたしの住むこの島に元気な老人が多い理由。まさにこれだ。 そしてあと一つ。 「人生楽しいことばっかりやと、もっと生きとりたいと思うようになる。そうしたら絶対神さんが見とって長生きさせてくれるんや。生きとることを楽しまな損や。」ということ。 はっとする。そして同時に心が温かくなる。
 決して無気力ではない。しかし必死でもない。「生きることを楽しむ」そういう生き方をしている。 人生の先輩がたくさんいるこの島で暮らせることに喜びを感じる。見習うべきは、遠くの偉人よりも近くの老人。まさにこの一言に尽きる。

講評

 少子高齢化の進む島に住む作者の前向きな気持ちがよく表現されていて、好感を持ちました。 最後の「遠くの偉人よりも近くの老人」という言葉がとてもすてきですね。 「老人は老人ではないのだ」「まだ17年と少ししか生きていない私からしたら、百年間はものすごく膨大な時間に思える」といった作者独自の表現が随所に散りばめられている点も素晴らしいと思います。

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