36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2008年度 日本福祉大学 第6回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
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入賞者発表
第2分野 あなたにとって家族とは?
審査員特別賞 隠し味を、ひとつまみ
大阪府立寝屋川高等学校 3年 安田 綾

 いつから一人で台所に立つようになっただろうか。ついこの間までは、母が料理をしている傍で、「砂糖取って、醤油取って。」という言葉にせかせかと冷蔵庫を開けたり、 お皿を出して並べたりしていただけだったのに、今では自分で食材を選んで買うところから、まな板と包丁を駆使してテーブルに料理を並べるところまで、全て一人で出来るようになった。 どこのスーパーで何が安いのかも知っている。そんな私の最近の日課といえば、夜お風呂からあがった後に、次の日のお弁当や朝ご飯、晩ご飯の為のおかず作りである。 朝は早く起きるのが苦手で、学校の準備もあって忙しいので、前の晩にある程度用意しておくのだ。 もちろん家族の分も作り、ちゃんとラップをして冷蔵庫にしまっておく。
 高校三年生になり受験生の為塾に通う時間も増え、両親の仕事の帰りが更に遅くなったのもあわさって、家族全員が揃って食卓を囲むことがほとんどなくなってしまった。 家を出る時間も帰ってくる時間も皆それぞれバラバラなので、家の中で喋ることも少ない。 一人で晩ご飯を食べていると、どこか一人暮らしをしているような、少し寂しい気分になることもある。 けれど、家に帰って来て冷蔵庫を開けた時に、朝にはぎっしり詰まっていたおかずを乗せた皿がきれいになくなっているのを見ると、 途端に何だかすごくほっとして温かい気持ちになり、疲れが和らいでいく。 「おいしかった、ごちそうさま。」などメモ書きがテーブルに乗せられているのを見た日には、どんなに塾や学校がしんどくても、二品でも三品でもいくらでもおかずを作りたくなってくる。 直接言葉を交わさなくても、こんな風に料理を通して家族と繋がっていられるのだ。
 さあ、今日は何を作ろう? 家族の笑顔を思い浮かべて、隠し味を、ひとつまみ。

講評

 家族のために一生懸命料理を作っている作者の気持ちやその楽しさが、しっかり伝わってきます。 「おいしかった、ごちそうさま」と書かれたメモがテーブルに乗せられていることや、 どんなにしんどい時でもいくらでもおかずを作りたくなるといった具体的な内容が書かれているため、 顔を合わせなくても家族がしっかりつながっているということがよく分かり、好感が持てました。

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