36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2008年度 日本福祉大学 第6回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
募集テーマ内容・募集詳細はこちら
応募状況
参加校一覧
HOME
入賞者発表
第2分野 あなたにとって家族とは?
最優秀賞 甘い玉子焼き
京都市立伏見工業高等学校 3年 菱井 希望

 母はばあちゃんと仲が良い。月に一回は実家に帰るし、多い時は毎週、なんてこともある。 母はばあちゃんによく似ている。笑い方とか考え方とか、玉子焼きの味とか。
 母とばあちゃんは親子だけど、血が繋がっていない。母の本当のお母さんは、母がまだ小さかった頃に病気で亡くなっている。 だからばあちゃんは母の本当のお母さんではないのだけど、母はばあちゃんのことをお母ちゃん≠ニ呼ぶ。
 母とばあちゃんは時々口喧嘩もする。 たまにしないと寂しいらしい。内容はいつもくだらない。
 誰かにとっての家族の定義がどんなものなのかなんて、私には理解のしようがないけれど、 少なくとも私にとっての家族の定義は、血の繋がりではない。
 ばあちゃんには本当の子供が二人いる。それから、血が繋がってない子供が四人いる。 ばあちゃんは皆を名前で呼ぶ。六人の息子達娘達を分ける壁がばあちゃんには存在しない。
 母はばあちゃんに時々愚痴をこぼす。ばあちゃんはその度にそれを拾ってはどこかに隠してくれる。 内容はいつもくだらない。
 誰かにとっては、もしかしたら血の繋がりって大切なものなのかもしれないけど、少なくとも母とばあちゃんの間にはそれよりも大切なものがある。 それがなんなのか、未熟な私にはまだ解らないけれど。いつか理解できたらいいな、と思った。
 「私には母親が二人もいるんよ。」
 自慢気に母が言う。(実際、とてもうらやましいじゃないか!)とは言え、私にもとても自慢な母親がいるので、五分五分じゃないだろうか。
 母は今日も晩ご飯に玉子焼きを焼く。ばあちゃんと同じ、砂糖を死ぬ程入れた甘い甘い玉子焼きだ。 私はあまりこれが好きではないのだけど、何となく、これが家族の味なのかもしれないなぁ、なんて思っている。

講評

 審査員全員が高い評価を付けた作品です。「甘い玉子焼き」を象徴として、家族のつながりが見事に表現されています。 文章も、具体的なエピソードを織り交ぜながら素直に書けていて良いと思います。 最後まで読みやすい文章ですが、構成や表現をもう少し工夫すれば、さらに魅力的な作品となるでしょう。

UP