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高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
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入賞者発表 学長メッセージ 審査員の評価と感想
第1分野 人とのふれあい 第2分野 わたしが暮らすまち 第3分野 世界とつながるとき 第4分野 社会のなかの「どうして?」
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入賞者発表 第3分野  世界とつながるとき

優秀賞 「相手を知る」
渋谷教育学園渋谷高等学校 三年 津川 真秀



 二年前の夏休み、私はアメリカオレゴン州にホームステイに行った。現地の子供達と教会で授業を受けたり、カリフォルニアまでキャンプに行ったりと三週間楽しく過ごし、仲良くなった数人とメールアドレスを交換し帰国した。
 日本に帰ってきてからメールのやりとりをするようになった。三、四ヶ月経った頃、メールをしていた中の一人から「これがアメリカンジョークだ」と題された七ページ分にも及ぶジョークを集めたメールが届いた。その中に「神風特攻隊は何故ヘルメットを被っているの?」というものがあった。どうせ死ぬのにヘルメットなんて変だ、という意味だ。私は驚き、腹を立て、そして悲しくなった。
 学校の研修旅行で広島へ行き、原爆資料館や江田島の特攻隊の記念館を見てきた直後だった。特攻隊の人の一人一人の写真と亡くなった場所、最後の笑顔の写真、そして遺書に書かれた彼らの死に対する恐怖を見た後で届いたメールに、私は本当に愕然とした。すぐに私は辞書を手に必死に特攻隊についての説明を英語で書き、友人に送った。
 数日後、彼から返ってきたメールには、謝罪の言葉と共に、彼が特攻隊について全く何も知らなかったことが書かれていた。日本では戦時中、命も顧みず突っ込む人がいたとだけ知っていたという。それを聞いて、私は改めて戦時中のアメリカのことを何も知らないことに気付いた。戦時中どんな生活だったのか、何を食べていたのか、どうやって戦ったのか。私には日本に爆弾を落とし、沖縄を占領する図しか浮かばなかった。一つのことでこんなにもとらえ方が違うとは。
 私は彼に、アメリカから見た日本についてもっと教えて欲しいと頼んだ。今までとは異なる、もしかしたら思いもよらない日本の見方を知ることができるかもしれない。海外の友人を持つことの本当の良さは、ここにあるのかもしれないと思った。



講 評  最優秀賞とほんの紙一重の差で、優秀賞になった作品です。「神風特攻隊」という重い素材を扱いつつ、濃い内容になっています。ただ腹を立てるのではなく、お互いに何も知らなかった事実に気付き、視点を変えて見ることの大切さがよく伝わってきます。研修旅行で広島へ行った時のエピソードが間にはさまれていることも具体性を増してよかったと思います。ただ、最後の結論を無難にまとめてしまったのが惜しいですね。



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