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高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
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入賞者発表 学長メッセージ 審査員の評価と感想
第1分野 人とのふれあい 第2分野 わたしが暮らすまち 第3分野 世界とつながるとき 第4分野 社会のなかの「どうして?」
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審査員の評価と感想

レベルが上がった2年目。若い人の新鮮な感性に審査員が驚いた作品が何点もありました。 最終選考の様子
 
長時間にわたる入賞作品の最終選考では、全審査員の評価が一致してスムーズに賞が決まった作品もあれば、熱い議論の末に選ばれた作品もありました。そんな審査の過程と作品に対する感想を、五人の審査員に話し合っていただきました。
審査員プロフィール


座談会イメージ 自分の視点で「感動」を表現することが大切。

宮田 今年の応募点数は六五〇〇点を超え、昨年より一〇〇〇点以上も増えました。多くの高校生の応募があったことは、主催者として大変嬉しく思っています。
川名 最近は若い人の活字離れや表現力の乏しさが指摘されがちですが、作品を読ませていただくと、まんざらそうでもないと思いました。多くの作品を、とても面白く読ませていただきました。
高山 昨年と比較して、全体的にレベルが上がった感じがあります。一年目の入賞作品という前例ができ「こういうことを書けばいいんだ」ということが、応募者や指導される先生方もわかってきたのではないでしょうか。その半面、均一化してきた傾向もあり、昨年の作品の方がバラエティに富んでいたような気がします。
宮田 私たち審査員も二年目で、読む側に新鮮さが薄れてしまったこともあるのでしょう。でも、今年は平均的に水準が高い半面、突出した作品がないように感じられました。
杉山 私が気になったのは、四つの分野でレベルのばらつきが大きかったことです。ある分野では「これで決まりだ」という作品があったのに対し、優秀作を残すのに苦労した分野もありました。
角野 よくまとまってはいても、いろいろな情報をまとめた「報告書」になってしまい、自分の心の内側にある「感動」を表現しきれていない作品が多かったことが残念です。感動してはいても、それがその人の想像力につながっていないんですよ。作文や報告書ではなく、エッセイなのですから、ただ「事実」を書くだけでなく、そこに自分の視点を入れることが大切になってきます。ですから私は、書いた人がいかにワクワクしたか、それがいきいきと表現されている作品を高く評価しました。障害のある方の方が、そうした洞察が深かったようですね。
 
 
荒削りでもいい。自分の体温を表現してほしい。

高山 一つのきっかけから始まって、なぜ?どうして?と問いかけがあり「どうしたらいいんだろう」まで思考の掘り下げがあると、読んでいてもホッとしますね。テレビ世代と言われますが、物事をじっくり考える若者はいるんだなと安心しました。でも、特に第4分野の「社会のなかのどうして?」では、もっと大人や社会に対する憤りがあってもよかったと思いますよ。まだ若いのですから、あまり物知り顔にならなくてもよいのでは。
川名 起承転結の構成にこだわっているせいか、最後に一般論で強引に結論づけている作品が多かったように感じます。「最後のまとめは無い方がよかったのに」と思う作品がいくつもありました。
角野 理想論を書いてみたい年頃なのかもしれませんね。でも「誰もがそう思うよ」という結論で締めくくられていてはつまらないですし、作者の姿が見えてきませんね。
杉山 荒削りでも、幼くてもいいから、その人の人間性が伝わってくる作品を読みたいですね。今回も、そんな十五歳から十八歳の「体温」が伝わってくる作品を評価しました。
宮田 「家族や周りの人がこうしたのを見て感動した」という話より、自分の体験に基づいた話の方が体温が伝わってきますね。私も「体温」をいかに表現しているかをものさしにして評価をしていきました。
川名 やはり、頭の中だけで「こうすべき」と考えたのではつまらないですね。どんな小さなことでも、体験に根ざしたものの方が好ましく感じられます。実際の自分の体験をきちんと書いてあるエッセイには好感が持てました。自転車を並べ直したり、ゴミを拾ったりというエピソードは、多くの大人が十分にできていないことでも、若い子たちはきちんとやっているのだなと感心しながら読むことができました。
 
 
もっと広い視野をもつことに期待。

宮田 家族との交流もよいのですが、身近な問題だけでこじんまりとまとめた話も多かったですね。高校生ともなれば、もう少し社会に目を広げてほしいと思います。
川名 作品の中には公共の建物のバリアフリー化を「親切」と受け止めている人がいるのですが、今は法律で義務づけられているケースも多いのです。詳しくは知らなくとも、もう高校生なのですから、そういった世の中の動きはきちんと把握してほしいと思います。
高山 最近は、インターネットなどで簡単に調べられますからね。
今回の応募作は、手書きはもちろん、パソコンやワープロで書いた作品が多かったのですが、簡単に漢字変換ができることもあり、手書きでは絶対に漢字にしない言葉を漢字にする人が目立ちました。また、「怒濤のように」「壮絶な生涯」といった型にはまった表現は、そのせいで文章が硬くなるんですね。
角野 変換ミスをしてそのままという作品では、せっかく内容がよくてもマイナス評価になってしまいます。
杉山 IT化ということで、携帯電話からの応募が何点かあったようですね。
宮田 二十点ほどあったようです。長文のため、何回かに分けて送信してきた人もいます。そうした場合に、きちんと番号を付けてくる人もいれば、番号が付いていなくて、こちらで推測してつないだ作品もあります。
杉山 私の感覚が古いのかもしれませんが、やはり作者の思いが直接伝わる自筆の原稿を見たいですね。
川名 今の若い人にとって、一番身近で、使いやすいツールが携帯電話ですから仕方がない面もあるのでしょう。
宮田 そんな若い人の実体を知る上でも、このエッセイコンテストは審査員にとっていい刺激になったようですね。本日は長時間にわたって熱心に審査していただき、ありがとうございました。

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