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「星に願いを」 |
静岡県立静岡中央高等学校 三年 岡本 珠美 |
夜十時、何気なく窓から外を眺めると、空に星が輝いている。今夜は天気が良いせいか、たくさんの星が見えた。ふと、二年前に、タイで見た星空を思い出した。
タイ農村での初めてのホームステイ。不安と緊張で固まっていた私の肩を、そっと叩き、夜空を指さしてくれたのは、ステイ先の少女、モンだった。まるで朝日に輝く海面のように、キラキラと光るたくさんの星。どこまでも続く広い空に、声にならない程の感動を覚えた。そして更に驚いたことは、私の隣にいたモンが、星に向かい手を合わせていたことだった。日本では、流れ星に願い事をすると、その願い事はかなうという言い伝えがあるのだが、モンも同じ事をしていたのだ。
何だかとてもうれしかった。私とモンは、生まれた国も異なれば、使う言葉も違う。東南アジアの中で唯一独立を保ち、仏教を重んじるタイと、島国でありながら、様々な文化が融合している日本とでは、価値観も生活習慣も、異なる点が多い。
日本では、子どもの頭をなでることは“褒める”という行為だが、タイでは、子どもの頭は神聖な場所であるとされ、頭をなでることは、絶対に許されない。また、僧の社会的地位もとても高い。タイの農村では、毎朝托鉢をする僧の姿も見られ、お布施をすることは、人々にとって誇りと考えられていた。手を合わせるという習慣も、現在の日本では薄れてきているが、タイでは、あいさつをする時には、誰もが必ず手を合わせていた。彼らは、自然・人・物のすべてを大切にし、常に感謝の心を持っている。そして同時に、仏教に対する信仰の深さを痛感した。
夜空の輝く星を見ると、いつも私はモンを想う。たとえ言葉や文化、生活習慣が違っても、人は分かり合うことができるということを。
世界とつながるとき。それは、違いを認め合い、心を許し合えるときだ。
モンとの出会いは、私にとっての宝となっている。 |
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最優秀賞・優秀賞に次ぐ作品と評価して、審査員特別賞に選びました。よくまとまっていますし、文章も上手なのですが、タイでの話題が一般論に終わってしまっています。ホームステイの間に、作者とモンが理解しあったり、ぶつかったりしたことが、きっとあったはずです。その実体験を一つでも書いてあれば、きっと読む人の心を打つエッセイになったことでしょう。 |
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