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高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
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入賞者発表 学長メッセージ 審査員の評価と感想
第1分野 人とのふれあい 第2分野 わたしが暮らすまち 第3分野 世界とつながるとき 第4分野 社会のなかの「どうして?」
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入賞者発表 第3分野  世界とつながるとき

最優秀賞 「初めは十六円から」
東京都立立川高等学校 一年 菊地 桃



  「暑ーい!!」
 クラブの後、体中汗だくで何か飲まずにはいられない。けれど都立高の数少ない冷水機の前には長蛇の列。
 「コンビニ行って何か買おうよ」
 私たちの放課後、お決まりのコース。
 「涼しいー!!天国!!」
 コンビニの中で久々のクーラーを感じながら、少ないお小遣いで一番安い紙パックのお茶を買う。八十四円。百円出しておつりは十六円。ふと見ると、いつもいつも横目で見ていた募金箱。「世界の子どもたちの未来のために…」確かそんな文字。いい人ぶるのが嫌で入れずに来たけれど、こんな暑さの中ろくな飲み水もない子どもたち、たくさんいるんだろうな…。思わず握っていたおつりを入れた。少なすぎて恥ずかしいけれど、かっこつけてなくて私にはちょうどいい。友達にも気づかれずにチャリンと入れた。
 普段テレビで見るイラクの子どもたち、アフリカの子どもたち。見るのがつらくて見ないようにする。分かってる。見なくちゃいけないこと。知っていなくちゃいけないこと。そして、何かしなくちゃいけないこと。でも知らないでいたかったりする。自分の幸せが申し訳ないようで、気づかずにいたかったりする。でも、本当は知っている。嫌というほど新聞やテレビで知っている。
 ただの都立高校一年の私に何ができるっていうんだろう…。こうして考えること、少しでもできることをすること…かな。
 今日からおつりは必ず入れる。それが鉛筆一本分かもしれないけれど、世界のどこかの子どもと私がつながる時。
 何もできなくてごめん。でも私はお金を入れるたび、あなたたちのことを思うようにするよ。心はあなたたちの隣に行くよ。
 コンビニのドアが開く。
 「暑ーい!!」
 また同じ夏の一日。



講 評  構成力も表現力も秀逸な作品です。「暑ーい!!」で始まり「暑ーい!!」で終わる構成は、インパクトがあって見事です。内容もまた、変にいい子ぶらず「少なすぎて恥ずかしいけれど」と思う高校生らしい若さやさわやかさに好感を持ちました。文字数の関係もあるのでしょうが、なぜ今日に限ってお金を入れたのかをもう少し説明すれば、さらに良い作品になったでしょう。



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