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高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
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入賞者発表 学長メッセージ 審査員の評価と感想
第1分野 人とのふれあい 第2分野 わたしが暮らすまち 第3分野 世界とつながるとき 第4分野 社会のなかの「どうして?」
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入賞者発表 第2分野  わたしが暮らすまち

優秀賞 「私の祖母は上宿パトロール隊」
愛知県立岡崎高等学校 一年 岩佐 美穂



 黄色の派手なベストを堂々と着て歩く人々が、私の町にはいる。そのベストには、上宿見回りパトロールという文字とハートマークが書かれている。
 私の暮らす町、上宿では、中高年の方がこぞってこのベストを着て散歩をしている。初めて見たときは、何事かと思ったのだが、後に回覧で、防犯のために散歩をかねて行っていると知り、納得したのだった。パトロール隊を略して、パト隊と呼ぶそうだ。パト隊の方々は、自分の好きな時間に好きなように活動する。かなり自由な活動のようだ。私もよく、登下校の際にパト隊の方に会うが、彼らはとても楽しそうに歩いている。先日も、「おはようございます。」と挨拶をすると、「おはよう。今日も暑いけどがんばってね。」と快い、さわやかな挨拶を返してくれた。そう言うパト隊の方の顔はいきいきと輝いていた。
 私の祖母は、最近ひざも悪くなってきて、外出する回数もめっきり減ってしまっている。この前、大好きな花見へ行っても、歩くのが億劫だと言い、車から降りようとしなかった。ひざが重く、歩くのは大変だろうが、歩かないと悪くなる一方だと医師にも言われている。私は祖母に、ぜひパト隊に参加しないかと話してみた。だが、祖母はあまり乗り気ではないようだった。そこで、祖母に、祖母の友達のパト隊の活動の様子を見せることにした。車から見ただけだったが、やはり、母や祖母にもパト隊の方々の輝いている様子が伝わったようだった。初めは、無理に参加させるのはかわいそうだと言っていた母も、パト隊はとてもいい活動だと言った。私も、もちろん無理に祖母を参加させようとは思わないので、これで祖母が嫌だと言ったらあきらめようと思っていた。しかし、祖母は、彼らを見て、やってみたいと言ってくれたのだ。急いでベストを用意してもらい、一週間後、祖母が初パトロールを行った。帰ってきた祖母はとてもいきいきしていた。
 今日も祖母は黄色いベストを着ている。



講 評  「わたしが暮らすまち」がテーマにもかかわらず、町の描写はまったくありません。それでも、おばあちゃんの変化を通して「この町が好きだ」という作者の気持ちが充分に伝わってきます。素材の良さで面白く読めました。決して文章はうまいとはいえませんが、最後にむりやりまとめを入れなかったのがかえってよく「今日も祖母は黄色いベストを着ている」という一行が効果的に生きています。



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