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「私の暮らすまち・日間賀島」 |
愛知県立阿久比高等学校 一年 北川 枝梨奈 |
「おかえりぃ。」「今日はどんなだったぃ?」
港で船を下りて、甲板をあがり今日も聞こえてくるのは道で出会う小さいころから知ってるおじさんや、おばさんの声。
「ただいまぁ。」
ああ、戻ってきたんだな、と心なしかほっとする一瞬。海は西日に照らされてきらきらと一日の終わりを告げる。
この春から、船と電車を乗り継いで片道一時間半の知多半島の真ん中の学校に通っている。そして夕方六時十五分の船に乗って、この日間賀島に戻ってくるのが私の日課。高校生になってはじめて島を出てみて、改めてこの自分が住んでいるまちを意識するようになった。
一周が五・五キロと、天気のいい日なんかに散歩でもしたら、あっという間に島をぐるっと一回りできてしまうくらいの小さな島が、私の生まれ育ったところ。春は潮干狩り、夏は海水浴、秋は釣り、冬はふぐ料理と海の幸と自然に恵まれて、それこそ島の外からやってくるお客さんの絶えないこの島で、私の家は旅館をやっている。物心つくころから、家の手伝いなんかをしながら、私の周りにあるものはまったく私にとっては、当たり前のこと。
でも、高校に入って部活の先輩に島のことを話すと、「えー、そうなの?」と面白がってくれるのが逆に新鮮だった。
「島の人はほとんど船をもっているんだよ。」「へえ、すごいねえ。クルージングとかするの?」…。船は島の人にとっては生活必需品。その感覚が逆におもしろい。だって、その船はレジャー用のかっこいいボートじゃなくって、漁船なんだから。そういえば、毎年岐阜県からたくさんの中学生が「体験学習」で島にやってくる。漁業体験、蛸のつかみ取り、クルージング、干物つくりなど、みんな喜んで帰っていく。私にとって当たり前のことが、とても珍しいことなんだということを思い出した。
ここで味わえる面白いことはたくさんある。この町で暮らすことに、ますます愛着を感じているこの頃である。 |
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非常に素直に書けており、自分の暮らす町を温かく見守り、愛情を持って接している気持ちがよく伝わってきます。素直に読めるいい作品です。「海は西日に照らされてきらきらと一日の終わりを告げる」といった情景が目に浮かぶ描写も、よく書けています。惜しむらくは部活の先輩との会話が方言になっていれば、日間賀島のほのぼのとした感じがもっと伝わってきたでしょう。 |
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