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高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
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入賞者発表 学長メッセージ 審査員の評価と感想
第1分野 人とのふれあい 第2分野 わたしが暮らすまち 第3分野 世界とつながるとき 第4分野 社会のなかの「どうして?」
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入賞者発表 第2分野  わたしが暮らすまち

最優秀賞 「祭りの一歩」
愛媛県立今治西高等学校 二年 川又 夕



 ちょーいせいじゃー、ちょいさーじゃー!
 太鼓の響きに笛の音。身体の底から湧き上がる興奮。ああ、私は根っからの祭り好きだ。
 
 愛媛の片田舎、喜多台旭というまちには手作りの太鼓台がある。毎年十月になると、だんじりと神輿でひしめき合う大通り。そこで一際異彩を放つのは旭太鼓台だ。それもその筈、かき棒の上に立つ指揮者は少女。旗を振り、かき手の士気を高めていたのは私だった。
 
 だんじり祭りは男のものではないのか。女が神輿に触れていいのか。そのような声を、たまに他の地域から投げかけられる。そこには、祭りは女人禁制という慣習があるからだ。私は最初気にせず指揮を続けていた。しかし大通りに入ると、一人の男性が訝しがる視線を送りながらこう言った。
 「女が神輿に乗りゃあ神さんが穢れる。はよう降りんかい!」
 それを聞いた瞬間、私は驚きと怒りが込み上げてきた。しかし私が声を出すよりも先に、地域の人が言い返していた。
 「そんなんおかしいやろ! あんたの言うとること、立派な差別や!」
 そしてかき手の皆が無言で見つめると、その男性は聞き取れない悪態をつきながら去っていった。地域の人は、目配せしながら微笑んでくれた。私が指揮者を出来るのは、地域の人がこのように守ってくれるお陰だ。そう気付いて、私はとても嬉しくなり、このまちの「輪」に心からありがたいと思った。
 
 私はこの出来事から、太鼓台の指揮者を続けようと心に決めた。他の地域には、まだ女性が神輿に触ってはならない所もあるのだ。この姿を通して、その慣習を崩すきっかけになりたいと思った。何より自分の出来る「一歩」で人々の心に訴えたかったのだ。
 ただ声で訴えるだけでなく、行動という形にして思いを伝えたい。私はこれからも祭りで旗を振り続ける。地域の人と共に、誰もが心を通わせる祭りの一歩を踏み出すために。



講 評  出だしの「ちょーいせいじゃー、ちょいさーじゃー!」から、インパクトがありました。そして、「女性が神輿に乗ってはいけない」という古くからの慣習を崩すきっかけとして、自分が関わり、その気持ちを素直に表現している点を高く評価しました。作者はもちろん、祭りを支えている町の人たちの気持ちもよく表れています。日本中のあちこちでまだありそうな女性差別や偏見に対する問題提起となる、よい作品だと思います。



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