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「私の歩き方」 |
三重県立津高等学校 一年 鈴木 まり子 |
受験を控えた中三の冬。
頭上を偏差値、塾、内申といった言葉が飛び交っていた。
私はといえば、プチ不登校をしていた。友達もいる。成績も悪くない。でも、疑問が心の中でふくらんでいた。何のために、勉強しているのだろう。何のために生きているのだろう。
ブラックホールは広がるばかりで、勉強も身に入らない。友達との会話さえ、疲れる。心が筋肉痛だった。
学校を休むことに、親は、何も言わず見守っていてくれた。自分自身と真剣に向き合った。人生や宇宙について考えた。
答えは、簡単に見つからなかった。もしかしたら、答えなんてないのかもしれない。とにかく、私には知らないことが多すぎる。もっと、広い世界をみたい。たくさんの人に出会いたい。そのためには、高校へ行った方がよさそうだと考えた。そして、私はふつうの受験生にもどった。
高校生となって、あの二週間は無駄じゃなかったと胸を張っていえる。まだ、先の見えない毎日を手探りしている。でも、周りに流されず、自分の足で歩くことを知った。
今の子どもたちは、急ぎすぎている。私より年下の子やその親たちが、受験に鼻息を荒くしている。そんなに、ダッシュすると息が切れちゃうよ。疲れちゃうよ。大事な落とし物に気づかないよ。
人には、それぞれ自分のペースがある。それぞれ、無理にあわせることはない。歩く道が違ってもいい。もし、疲れたら、肩をかしてあげる。さびしくなったら、そばにいてあげる。大切なのは、柔軟に、どんな人も包み込める、懐の大きい社会をつくること。さまざまな生き方や個性を認め合うことだ。
私は、立ち止まり、振り返りながらも前に進んでいる。あいかわらず、躓いてばかりだけど、今は恐れずに笑い飛ばせる。 |
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自分自身の生き方の問題で、第4分野のテーマにふさわしいのかどうかは、審査員の中から疑問も出ました。とはいえ「プチ不登校」「心の筋肉痛」「受験に鼻息を荒くしている」といったおもしろい表現に代表される若者らしい発想を評価して優秀賞としました。もう一歩踏み込めば、読者の心を打つ作品になる可能性があります。まだ高校一年生ですから、これからの成長に期待しています。 |
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