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高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
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入賞者発表 学長メッセージ 審査員の評価と感想
第1分野 人とのふれあい 第2分野 わたしが暮らすまち 第3分野 世界とつながるとき 第4分野 社会のなかの「どうして?」
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入賞者発表 第4分野  社会のなかの「どうして?」

最優秀賞 「やさしいバリアフリーの実現」
浜松学芸高等学校 三年 鴻江 未有



 「チェッ」
 スピーカー越しにマイクを通して、運転手さんの舌打ちが聞こえてきました。朝の通勤・通学で混み合ったバスの中のことでした。何事かと窓越しに外を見ると、車椅子の男性がバス停で手をあげて乗車の意思を示していました。そのバスは、体の不自由な方や、高齢者が乗降しやすいことを特長にした、スロープ付きのノンステップ超低床バスでした。運転手さんは、バスを停めると急いで乗降口へ行き、面倒臭そうにスロープを引き出すと、まるで押し込むように、手荒に車椅子の男性を車内に乗せました。時間を気にする乗客達も手伝いもせず、冷たい視線で車椅子スペースに移動する男性を見つめていました。その車椅子の男性に対し、「何故この忙しい時間に乗って来るんだ」と、みんなが背中越しに無言で非難しているような嫌な感じでした。立派な装置がいくらあっても、人にやさしいバリアフリーな社会は実現しないことを強く感じた出来事でした。
 毎日、街の至る所で、バリアフリーな社会を意識した設備や装置が設置されるのを目にします。でも、多くの人は、整備すれば目的が達成された、私たちは何もしなくても良い、と勘違いしているような気がします。スロープがあっても、腕に力がなくて車椅子でのぼれない方もいます。目の不自由な方は、点字ブロックがあっても行き先を読み違うこともあるそうです。設備や装置はあくまでも、障害者と一緒に暮らす私たちが、障害者の援助をするための道具にすぎないと思います。まず、私たちが真っ先にやらなければならないことは、「心のバリアフリー」を心がけること。それは、障害者の自立の意思を尊重しつつ、援助が必要な時だけ、すぐに、的確な援助ができる「心」とそれを実行する「行動力」を育てていくことだと思います。私は、人にやさしいバリアフリーの実現のため、日々の生活の中で困っている障害者を見掛けたら、一声かけることから、始めています。



講 評  車椅子でバスに乗る男性に対する運転手や乗客の冷たい態度が上手に表現され、作者の心の痛みがよく伝わってきます。最後に「一声かけることから、始めています」と書いているように、これからこういった事態に出合ったら、もっと大人に対して声を上げてほしいですし、見ているだけではなく、行動してほしいと期待しています。うまくまとまっていますが、よく見聞きする「心のバリアフリー」という表現は一考を要します。



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