|
「光る汗ください」 |
立命館慶祥高等学校 三年 菅原 真紀 |
北海道の短い夏が終わりに近づく八月末。昨年私は初めて、北海道マラソンの給水ボランティアに参加した。この日は、まるでランナー達の闘魂が気温を上げているような暑さだった。
道路にテーブルを設置し、シートをかぶせ、水をコップに入れて準備完了。道路の両脇にいる応援客と共に、ランナーが来るのを今か今かと待つ。しばらくすると一位を争う二人のランナーがすごいスピードで来た。その迫力に水を差し出していた私の手は震えていた。「水をきちんと渡さなくちゃ」。大きな大会なだけに、TVカメラが上位選手の後を追っていた。
仕事にやっと慣れてきた頃、私の心にも余裕が出てきて、自然とお腹の底から声が出ていた。しばらくすると突然、「若い人のパワーを下さい」と一人の男性ランナーに話しかけられた。私は驚いたが、夏の太陽にも負けない笑顔で「頑張って下さい」と握手した。若さみなぎる私のエネルギーと水分を補給した彼は、再びゴールを目指し走り出した。汗が光る彼の笑顔が眩しかった。
お茶の間で見ていた時には気づかなかった。一人一人にそれぞれの目標があって、それを達成するためにランナーは走っている。順位だけを競っているのではないのだ。そしてボランティアは、ただの大会運営お手伝いではない。ランナーと楽しみを共感し、ランナーの数だけあるかっこいい姿を一番近くで、全て見届ける素敵なお仕事なのである。
私が担当した35km給水ポイントを全てのランナーが通過した時、私の体はたくさんの人の思いに包まれていた。何度も言われた「ありがとう」という言葉。目標に向かう強い志。そしてランナーと心を通わせたのはほんの一瞬だったけど、私も42.195kmを共に楽しんだ気がした。ランナーの皆さん、こちらこそありがとうございました。
今年も熱い夏が来た。私は、また頑張る人の背中を押し、去年以上に楽しみたい。給水も去年より上手に出来るといいな。 |
|
|
|
|
|
|
|
作者の実体験が率直に表現されていて好感を持ちました。マラソンの給水ボランティアを楽しんでいる風景が目に浮かび「ランナーと心を通わせたのは、ほんの一瞬だったけど私も42.195kmを共に楽しんだ気がした」など、作者の気持ちが読む人にしっかり伝わってきます。そんな気持ちのやりとりや情景描写も上手で、文章のリズムや段落の分け方もよく、さわやかに読むことができました。応募作品全体の中でも、印象深い作品です。 |
|
|
|