研究報告

里山管理のための食用キノコの利用
研究代表者:坂上 雅治
  2/4

現在、ヒラタケの主な栽培方法として主に菌床栽培と原木栽培が行われている.菌床栽培はオガ粉培地を容器に詰め、殺菌、接種を行い、施設内で培養して子実体を発生させる栽培方法で、オガ粉はブナなどの広葉樹を用いることもあるが一般的にはスギやマツなどの針葉樹を使用する.菌床栽培は施設内で培養するため1年を通じてキノコを生産することができるが冷暖房を完備した施設型周年経営を選択することになり、多額の資金と企業的経営能力が必要となる.原木栽培はオガ粉培地の代わりに短く切った丸太を用いる方法で、菌床栽培と比べてより自然発生の条件に近いと考えられる.ヒラタケの原木に適した樹種はポプラ、エノキ、ブナ、カキ、クルミ等の樹種で、コナラでの繁殖も確認されている.原木を伐採し乾燥させ、原木を玉切りし、原木に菌が繁殖しやすくするため浸水させ、野外で菌を接種し、培養させ子実体を発生させる栽培方法でキノコの発生は平均気温が15〜18℃程度になると誘導されるため、寒冷地では9月下旬、温暖地でも10月中旬頃から発生する.ヒラタケの子実体は10日〜15日程度の周期で発生を繰り返し、12月中旬頃まで発生する.また、ヒラタケの子実体が発生するのは接種を行った年だけでなく、翌年も発生させることができる(大森 1987).

3. 実験方法

  本研究では、ヒラタケを間伐・除伐木を材料として発生させるための方法として原木栽培法を用いた.2005年12月下旬に愛知県知多郡美浜町の雑木林内で、雑木林を代表とする樹種であるコナラ、陰樹の伐採処理を行う際に多く伐採されるヒサカキ、ヤブツバキ各1本を伐倒した.伐倒した木は、枝葉をつけたまま約半月間放置し、2006年1月中旬にこれらの木を10cmに玉切りし、学内に持ち帰り、丸太が乾燥するのを防ぐため、十分な水を含ませた(庄司 1996).水を含ませる方法は、学内で丸太を容器に入れ、一日間浸水させ、翌日丸太を回収した.処理を行う丸太は、コナラ、ヤブツキ、ヒサカキ各15個とした.菌接種については、本研究で新たに考案したボランティアにも実行可能な以下の簡易な方法を用いた.ヒラタケの菌床ブロックを3等分にし、各プランター内にうすく森林土壌をいれ、その上に浸水させた丸太を3個置き、その上に3等分した菌床ブロックをのせ(写真−1a b)、さらにその上に森林土壌と落葉を被せた.この作業を各木5プランターずつ行い、野外にこれらのプランターを設置し、直接日光が当たるのを防ぐため、寒冷紗をかけた.土壌が乾燥した場合、適宜散水処理を行った.6月にヒラタケの菌が丸太に繁殖をしているかを確認するため一部の原木について菌の分離を行った.各樹種1プランターから菌床ブロックを接種した原木(写真2)各樹種3本を取り出し、菌床ブロックと原木を分離し、ナタで原木を縦に割り、原木の辺材部をかまぼこ状に切り取った.

 


写真1

写真1 コナラ原木にヒラタケ菌床を摂取した様子

(a:森林土壌を敷いたプランター上に置いた1日間浸水させたコナラ丸太、b:コナラ丸太上に3等分したヒラタケ菌床を接種した様子)


写真2 ヒラタケ菌床が癒着したコナラ原木

 

 

←前ページ

Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University