研究報告

里山管理のための食用キノコの利用
研究代表者:坂上 雅治
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菌床接種部から3つ(上から0〜3、 3〜6、 6〜10cm)に分けたこれらの板から約2mm角の分離片を剪定鋏でそれぞれ20個作り、クリーンベンチ内でこれらの分離片を表面殺菌するために70%のエタノール液に30秒浸し、次にアンチホルミンに5分間浸し、その後、滅菌水で2回洗い、滅菌ろ紙上で水気をとった.表面殺菌を行った分離片をPDA(ジャガイモブドウ糖寒天)培地上におき、15℃の条件下で8月上旬まで菌の培養を行い、出現した菌類を光学顕微鏡で観察した.7月中旬に残りの各4プランターのうち、各3プランターについてはヒラタケの菌床ブロックを取り除き、各1プランターは、比較対象として菌床ブロックを取り除かないでおいた.

4. 結果

  菌の分離結果 

  6月〜8月上旬まで培養を行った分離片から出現した菌類を光学顕微鏡で観察した.

 

その結果、コナラ、ヒサカキ、ヤブツバキのすべての樹種で接種したヒラタケ菌は分離されず、他の腐朽菌が繁殖しており、ヒラタケ菌は材内に定着していないことがわかった.これは、野外で滅菌処理をしていない原木上に直接種菌をのせ土中に埋めるという、本研究で考案した新たな簡易的方法の場合、他の腐朽菌が先に材内に侵入し、少なくとも調査した原木ではヒラタケ菌が繁殖できなかったものと考えられた.

 

  子実体の発生結果

  2006年12月上旬および1月上旬にヒラタケの子実体が発生した.子実体が発生した樹種はコナラとヒサカキで、すべて菌床ブロックを取り除いたコナラ2本、ヒサカキ2本から発生した.コナラの一本からは湿重で13.0g、2.8gの子実体が発生し、コナラのもう1本からは29.5g、21.6gの子実体が発生した.ヒサカキの1本からは13.9g、10.5g、ヒサカキのもう1本からは12.1g、8.3g、23.5gの子実体が発生した(写真3).

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写真3
写真3 ヒサカキ除伐木から発生したヒラタケの子実体

Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University