研究報告

里山管理のための食用キノコの利用
研究代表者:坂上 雅治
  1/4

里山管理のための食用キノコの利用
−除伐木を利用してヒラタケを栽培できるか?−
(中間報告)

研究代表者:坂上 雅治 (情報社会科学部准教授)
共同研究者:福田 秀志 (情報社会科学部准教授), 大場 和久 (情報社会科学部准教授)
研究協力者:大橋 良平(情報社会科学部)

 
研究期間 2005 年度〜2007 年度

Abstract
  里山管理モデルを構築するための一つの手段として、雑木林の管理の際に発生する除伐木を用いて、食用キノコを発生させる技術を確立し、地域住民・都市住民の里山管理の促進への活用について論じた.なお、本研究は、プロジェクト研究「生物多様性に富み地域住民・都市住民が求める新たな里山管理モデルの構築(研究代表者:坂上雅治)」の中で行われたもので、本論文は2006年度に特に成果が上がった内容に絞って福田が報告するものである.

1.はじめに

 里山は、日々の暮らしに必要な薪炭材を得るため、防風林などとして生活環境を保全するため、人々の暮らしの中で造成・維持されてきた半自然林である(坂口 2000).しかし、1960年代に薪炭材などの木質エネルギーが次第に石炭、石油、ガスなどの化石エネルギーに転換され、里山の薪炭材供給という意義が小さくなり、また化学肥料の利用によって里山から落葉、落枝、下草を採取する必要がなくなり、必要な手入れも行わなくなった(掘 2000).里山は、人とのつながりが薄れ、宅地や工場、ゴルフ場などに転用され、残された雑木林などの里山もごみの投棄場にされるなど管理の疎放化がすすんでいる.高度成長期から今日にいたるまで、里山は人々から忘れられた存在であった.しかし近年、温暖化や希少な野生植物の減少などに対する人々の認識の深まりとともに、かつて身近にあった里山の恵みに気づき、 その保全の必要性が再認識され、各地で里山保全のための活動が展開されるようになってきた.

 

都市近郊に残された雑木林は都市住民の憩いの場として、農山村にあっては村おこしのための伝統的な民芸、木工品や山菜、キノコ類の生産のほか都市住民との交流の場としての利用が行われている(坂口2000).

  里山を再生させるためには、雑木林の定期的な管理が必要であるため(重松1991)、ボランティアや地域の人々の協力が必要となる.活動内で生じる伐採した樹木などを材料として、収穫物が得られれば、活動を継続的に行う仕組みづくりに役立つものと考えられる.収穫物の一つとして食用キノコが考えられる.

  そこで本研究では、里山管理を促進させる一つの手段として、間伐・除伐木に代表的な食用キノコであるヒラタケを発生させるための基礎的な知見を得ることを目的として、除伐木がキノコの原木として使用可能であるか、また、どのような方法で可能であるかを調査した.

2.材料と方法

ヒラタケについて

  ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)は、ヒラタケ科ヒラタケ属に属するキノコであり、温帯の世界各地に分布する木材腐朽菌であり、主に秋から春にかけて広葉樹の枯れ木や倒木、切り株などに多数重なり合って発生する.ヒラタケは世界各地で栽培されており、味はくせがなく、香りも少ないので料理の種類も多い(大森 1987).

 

 
←前の研究報告

Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University