研究報告

携帯電話アタッチメントについての研究
研究代表者:水野 暁子
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携帯電話アタッチメントについての研究
(手が不自由な人が携帯電話を使いやすいように)

Mobile phone attachment for disabled people

研究代表者:水野 暁子 (情報社会科学部学部教授)
共同研究者:渡辺 崇史 (福祉テクノロジーセンター助教授), 田中 賢 (情報社会科学部助教授)

研究期間 2005 年度〜2006 年度

Abstract
  2004 年に行なわれた日本福祉大学高校生福祉機器アイデアコンテストでは, 特定課題 「手の不自由な人が携帯電話を使うには」 に対して, いくつかの面白いアイデアの応募があった. それらを出発点として, 手が不自由な人が携帯電話を使うためのアタッチメントの工夫を行なった. 併せて, 携帯電話による生活の変化や, 障害のある人が携帯電話を使いやすくするために配慮すべきことについて考察した.

はじめにおことわり: 文中で, 「私」 と書かれているのは, 水野暁子のことです. そのような部分については, 「私」 の主観で書かれておりますので, 「私」 が責任を負うものです.

ケータイ文化を享受する
 携帯電話は便利な道具である. 私が毎日使う機能だけでも, 電話・メール・ゲーム・ニュースや 天気予報を読むなどがある. メールは大学のアドレスに届いたものも携帯に転送しているし, 最近読んだ本の感想を友人と メールで話している. 時々使うものも会わせれば, 電車やバスの時刻表・乗換え案内・宿泊予約・カメラ・メモ・バーコード リーダー・電卓・着メロで音楽鑑賞・辞書……. 私は携帯電話を落とさない自信がないので, 電子マネーとしては 利用していないが, 数年前には財布とケータイだけを持った青年たちをコンビニでよく見かけたが, 今に, ケータイだけを 持って買いものに行くようになるのだろうと思っている.

 

 道具というのは人間が使うためにあるとは言え, 道具が人間の行動を決めることもある. 私は, 毎日新しいニュースや天気予報を知らせてくれる i チャンネルを使っているうちに, i チャンネルの星占いを 毎日見るようになってしまった. (元々は占いを見る趣味はなかったのだが.) また, 伝統的な文化である短歌や 俳句の世界でも, ケータイで投稿できる photo 短歌やケータイ写真俳句のサイトがあって, 写真付きで携帯電話でも パソコンでも読める. もともと三十一文字や十七文字から読者がイメージを膨らませていたものとは違う軽やかさがあって, 短歌や俳句も新しい文化になるように思えてくる. また, メールのやり取りで歌人からアドバイスを受けて, 短歌の表現とともに, 生き方としての成長も獲得した青年もいる. メールについて言えば, 学生たちはしばしば自分の 名前を書かないでメールを送ってくる. 友達同士でお互いにケータイの電話帳に登録していれば, 誰から送られたメールで あるかはすぐに分かるので, 名前は書く必要がないのだろう. そのようにアドレスを登録しあえるのが彼らにとって友達と いうことなのだろうし, 友達になる手続きとしてメールアドレスの交換をしていることもある. 携帯電話は友人関係も変えてきたと言えよう.
 さて, このように携帯電話が単に便利な道具であるというだけでなく, 新しくケータイ文化を作っているとすれば, 特に青年たちに共有される文化であるとすれば, 障害があるために携帯電話を使えないという状況は, 何としても 改善したいものである. そういう思いがあって, 第 1 回の高校生福祉機器アイデアコンテストの特定課題として, 「手が不自由な人が携帯電話を使うには」 を設けたところ, 自分自身が障害のために携帯電話をうまく使えないでいる 高校生からも応募があり, その他にもいくつか面白いアイデアがあった.

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Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University