研究報告

携帯電話アタッチメントについての研究
研究代表者:水野 暁子
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携帯電話を使いやすくするには:コンテスト応募作品から考えたこと
 
  1. ボタンの大きさや形
     第 1 回のコンテストが開催されたころ (2004 年) は, 携帯電話がどんどん小型・薄型化し, ボタンも小さく薄くなって, 中にはボタン中央が少し凹んでいるものも売られるようになっていた. そのような状況もあってか, 手が不自由な人がボタンを 間違いなく押せるようにと, ボタンを大きくすることや膨らませることを提案したアイデアが多かった. このような課題については, 特に障害がない人にも使い難いと感じられたようで, 間もなく携帯電話のボタンに 貼り付けるための膨らんだシールが売られるようになった. また, 新たに高齢者をターゲットとした携帯電話が作られ, ボタンも大きめで膨らんでいるうえに形も良いものが売られるようになった. 最近では一般ユーザーが対象となっている 携帯電話でも一時期よりボタンが使いやすくなっている傾向がある.
  2. 携帯電話を持ちやすくする
     手が不自由である場合, ボタンを押すことだけでなく, 携帯電話を持つことも難しくなることがある. 持つことが全くできない 場合だけでなく, 持つことが不安定な場合もある. コンテスト応募作品には, 指を通して持てるように穴をあけた携帯電話や, 側面を波状にして持ちやすくしたものがあった.
  3. 「携帯」 の意味
     コンテストの作品を見て, もうひとつ気付いたのが, 「携帯」 の仕方である. 一般には携帯電話は 「どこででも持って 電話がかけられる」 ものであるが, 上手く持てない状況にある場合, 持つことにこだわらず, どこにでも持って行って 「どこにでも置いて電話がかけられる」 ものとして, 携帯電話を使う方法もあるということである. コンテスト応募作品の中にも, 「安定して置ける」 ことを目指したアイデアがあった. ところで, 最近では特に障害の ない人も, 手に持たずに電話をかける状況が増えてきた. 道交法の改正で自動車運転中の携帯電話の使用等が規制されて以来, 自動車内でハンズフリーで携帯電話を使用するためのアタッチメントが多く市販されている. ハンズフリーであっても, 運転中は携帯電話を使わない方が良いが, 市販のハンズフリーキットやアタッチメントを利用して, 手が不自由な人が 使いやすいように, 携帯電話を安定して置ける方法を考えることもできよう.
  4.   

 

試作品の作製
  コンテスト応募作品にみられたアイデアの中で, 携帯電話本体の形として提案されているものがあったが, 本体の形を変えた場合に問題となるのは, それが果たしてどれだけ売れるかということである. 手の不自由さが一人一人違うことも 考えると, 不自由さに合わせて本体の形作るのは, 商売として考えた場合には難しい. たとえ作ったとしても, 使用者の 好きなものではないかもしれない. しかし, 好きな携帯電話に, その人の不自由さの状態に合わせたアタッチメントをつければ, 好みの携帯電話を選べるし, 使いながらアタッチメントの改良をしていけば, より使いやすくなる. そこで, コンテスト 応募作品のアイデアに込められた意図をもとに, アタッチメントを試作した. (アタッチメント作製に使用した材料は, アクリル板, ユニバーサル画鋲のリング部分, 紙粘土, 両面粘着シート, アクリル用接着剤である.)
 図 1 は, 試作したアタッチメントを使って, 携帯電話を手に持ったところである. 携帯電話がすっぽり入る容器の外側に 指が入るリングを取り付けてある. 特に手が不自由でない人が使う場合でも, 携帯電話が滑り落ちる心配がないのは, 特に障害がない人にとっても安心感がある. アタッチメントの底面 (外側) には, 滑り止めシートを貼り付け, 携帯電話を置いて使う場合に滑りにくいようにした (図 2). ところで, 携帯電話を置いて使う場合, 水平に置かれた状況では ボタンを押し難いことがある. それを改善するために, 携帯電話を斜めに立てて置けるように工夫したアイデアが応募されていた. 支持台を付け加えて, 斜めに置けるようにしたものが, 図 3 である. また, コンテスト応募作品でも指摘されていたが, 折りたたみ式の携帯電話が使いにくい (開けにくい) のではないかという問題がある. 図 3 にあるのは, 数年前に購入した 携帯電話で, 当時はアンテナ部分が少し突き出ていた. それを利用すると, 図 4 のようにアンテナ突起部を支えにして片手で 開けることもできたが, 最近ではアンテナ内蔵型がほとんどなので, 開けやすくするためのアタッチメントも要るようになる. ボタンが知らないうちに押されているということがないという, 折りたたみ式の安心感は大きいからである.

図 1 指は入る携帯電話アタッチメント
図 1 指は入る携帯電話
アタッチメント
図 2 アタッチメント底面に貼られた滑り止めシート 図 2 アタッチメント底面に貼られた滑り止めシート
図 3 斜めに置いた携帯電話 図 3 斜めに置いた携帯電話 図 4 アンテナ突起部を利用して開く 図 4 アンテナ突起部を利用して開く
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Copyright(C):2006, The Research Institute of System Sciences, Nihon Fukushi University