平成22年3月をもって文部科学省『教育GP』採択プログラムとしての活動は終了いたしました。3年間の成果をまとめた報告サイトを作成しましたので、是非ともご覧ください。なお、サービスラーニング活動については、引き続き、社会福祉学部の独自プログラムとして実施していきます。活動状況については、社会福祉学部ホームページで掲載していきますのでよろしくお願いたします。

教職履修クラスのサービスラーニングクラスの風景

「青とんぼ班」の活動

「青とんぼ班」の紹介

メンバーは福冨達也君と中嶋良太君の2人。特別支援学校の教員免許取得を目指す2人は、「障害のある我が子を普通学校に通わせるのはなぜだろうか?」「普通学校に通わせるためにはどのような支援があるのだろうか?」という疑問から、障害のある子のお母さんに焦点を当てて、お母さんの気持ちや考え、支援内容について調べることにしました。 「青とんぼ」という班名の由来は、自分たちが所属するサークル名をもじっ たものです。

福冨達也君 中嶋良太君

   

〜「普通学校に通う障害児支援」の調査活動の動機〜

<福冨君>
私の夢は、普通小学校に勤めながら、特別学級などで障害とふれあうことです。そして障害の有無関係なしに、子供たちが学び、成長することができる学校こそ、本当の意味でのノーマライゼーションの始まりなのではないかと考えます。私はその理想を胸に、今現在、少数派ではありますが養護学校ではなく普通学校(の中での特別教室等)へ進学している子供たちを追いたいと考えています。

<中嶋君>
ある講義の中で普通学校の中で、6%の障害児、すなわち特別な教育的支援を必要とする児童生徒がいるということを知り、単純にそのような子どもがどのように教育を受けているのか気になり、「普通学校における障害児」というテーマにすることにしました。

〜第1回目の活動 普通学校に通う障害児のお母さんへのインタビュー〜
目的

今現在、少数派ではありますが養護学校ではなく普通学校(の中での特別教室等)へ進学している子供たちを追いたくて、今回、普通学校でがんばる自閉症を抱えたご子息をもつ川瀬さんにインタビューを依頼しました。

インタビュー項目

障害者支援を行っている施設でアルバイトをしてきた経験をもとに、インタビュー項目を作成しました。

@Oくんの学習状況について教えてください
・普通学級との交流はありますか?
・どのような生活を送っているのですか?

Aなぜ、普通学校に進学を決めたのですか?
・まずどのように就学先が決まるのですか?
・なぜ養護学校ではなく普通学校を選んだのですか?
・お母さんの思いを聴かせてください。

BOくんが生活する際に工夫していることはありますか?

C養護学校、普通学校のメリット・デメリットを教えてください。

D周囲の不理解はありますか?

E学校はどのように対応してくれていますか?

F先生との連携はどうなっているのですか?

G川瀬さんが活動している東海市キャラバン隊について教えてください

インタビュー内容

C養護学校と普通学校でのメリット・デメリット

◆養護学校のメリット
養護学校は障害を抱えた子どもたちが通う学校であるため、自閉症を抱えるOくんが過剰に目立つことはなく、穏やかに生活ができます。教員たちも専門的な知識を持っている人が多数いるため、安心です。そしてなにより、保護者もみな障害を抱える子どもたちの母であるため、健常児の母にはなかなか理解できない悩みなどを打ちあけることもでき、孤独ではありません。

◆養護学校のデメリット
デメリットは、なによりも遠いことだと言います。川瀬さんの自宅からバスで通学するとなると一時間もかかります。障害の有無関係なしに子どもの通学は心配です。自閉症を抱えるOくんとなると長時間狭い空間に閉じ込められることや、トイレの問題などストレス的に大きな問題になる。

◆普通学校のメリット
メリットは近いことです。そして地域の方に顔を覚えてもらうこと。普通学校に進学を決意した大きな理由は、保育園での出来事だといいます。保育園で受け入れてもらえないのではないか?という不安を抱えながらも通園させたところ、たくさんの園児たちがOくんに興味を持ち、世話を焼いてくれました。そのなかで離れる子ももちろんいましたが、多くの子どもたちがOくんを受け入れ、友達になってくれました。この出来事が川瀬さんを大きく勇気づけました。地域の力はすごい。地域の方に知ってもらうことはとても大切なこと。地域にOくんの居場所をつくりたい。そういった思いを込め、Oくんを普通学校に進学させたそうです。地域とより密着することができるというのも普通学級の大きなメリットです。

◆普通学校のデメリット
養護学校の教員に比べ、接する教員たちが専門的な知識を持ち合わせていないことや、先生にとって大きく変わることだといいます。自閉症の理解はまだまだ狭いです。沢山の不理解があったのではないでしょうか。

インタビューを通しての考察

<福冨君>
今回のフィールドワークでの大きな収穫はお母さんの生の声が聞けたことです。私たちはどこか「障害児のお母さんは頑張って当たり前」と思っていたように感じました。障害をもっていようがなかろうが、お母さんも人間なのです。お母さんたちにもお母さんたちの人生があります。私はそんな人たちのサポートに入りたいと思いました。

<中嶋君>
私は、このインタビューを通してまずは「知る」ということが一番大切だと感じました。子どもにしても大人にしても、その障害について少しでも知っていれば、なんらかの対応はできると思いますし、もし、街とかで何かあったときに自閉症について知っていれば、この子は自閉症なので・・・と言えばすぐわかってもらえますが、知らない人が多かったら、こうこうこういう行動を起こしちゃう障害で全く悪気があってやっているわけじゃないので、というように一人一人説明しなくてはいけないのでとても大変です。また、私は将来教員になりたいのですが、一人一人の子どもに合った対応をするという意味で子どものことを「知る」、そして保護者との連携をちゃんとするという意味での保護者の気持ちを「知る」。したがって、まずは色々な意味で「知る」ということが一番大切なのではないかなと私は思います。

〜第2回目の活動 東海市キャラバン隊の見学〜

東海市キャラバン隊は、前回のインビューを引き受けてくれた川瀬さんが活動している団体です。主な活動内容として、東海市周辺で発達障害・知的障害について知ってもらうための体験型の公演をしており、今回はその公演に参加させてもらいました。その日の公演はY小学校の教員に向けてのもので、「特別な支援が必要なこどもたちの対応について」というテーマで行われ、40人くらいの先生が参加していました。

見学の目的

@どのような方法で「障害」を理解してもらっているのか?

Aお母さんたちの気持ちを知ろう。

仮説・疑問

@「障害」の伝え方
自閉症という障害は説明するのがとても難しい障害です。私が学童のアルバイトをしていた時、健常児と障害児が触れ合う機会がありました。健常児の目から奇行でしかないことを繰り返している障害児をみて、「あの子変。」と率直に言われた時がありました。私は彼らが余計な偏見をもたないように説明したつもりでしたが、彼らが困った顔をして「あの子、馬鹿なの?」と言った時に、言葉を失ってしまいました。知るということも難しいことですが、教えるということはもっと難しいと感じた瞬間でした(福冨談)。 東海市キャラバン隊は、「障害」を子供に伝えるためにどのような工夫をしているのでしょうか。仮説としてはイラストをふんだんに使い説明しているのではないかと思います。そして実際に体験などをさせているのではないだろうかと考えています。

A教員たちは障害児をどのように感じているのか
仮説としては、教員たちにとっても「わからない」というのが正直なところではないかと考えます。そして障害児について知りたいと思っている人が多いのではないでしょうか。というよりも、そうであってほしいと思っています。

見学の様子

1)東海市キャラバン隊の公演内容

@DVDでの説明
自閉症とはどんな障害なのだろうということをわかりやすく説明しているDVDを見て、自閉症は親の育て方が悪くてなったのではないということや、自閉症は社会性の障害、こだわりが強い、コミュニケーションの障害であるということが説明されていました。

A体験コーナー

・どんなふうに見えているの?
発達障害の人の中には、注意が一箇所に集中して全体を見ることが難しい人がいます。実際にどんなふうに見えているのか、ペットボトルを使って体験しました。5人の先生が前に出て、スクリーンに写されたものを当てるというもので、体験した先生は、ぼやけていて全然わからなく、色だけで判断してしまったと言っていました。

・どんなふうに聞こえているの?
発達障害の人の中には、私たちとは聞こえ方が違う人がいます。私たちは普段、意識せずに不要な音をシャットアウトしたり、必要な音だけに注意を向けることを行っています。それが上手くできないとどんな気持ちなのかを体験しました。1人の先生が前に出て、その後ろから5人が同時に違う問題のクイズを言いました。クイズの答えが1つでもわかったか聞くと、一度に色んな音が聞こえるのでよくわからないという感じでした。

・上手くできないってどんな気持ち?
手先の不器用さ、上手くできないことがどんな気持ちなのかを体験しました。軍手をはめて教科書をめくってもらうと、先生たちは「上手くできないと嫌になってきた」と言っていました。次は軍手をはめながらシャツのボタンをしめるというもので、1回目は周りの人が「早くしないと追いていくよ」等とせかし、2回目は周りが何も言わないということをしました。先生たちの感想は、「せかされると余計に焦ってできないが、せかされないと落ち着いてボタンをしめることができた」いうものでした。この体験から、「早くして」等と怒るとやる気がなくなったり、余計にできなくなってしまうので、声掛けは最小限にゆっくりと、その子のペースで見守ってあげることが大切であり、どうしてもできないことだけを手伝ってあげるようにした方がいいと言っていました。

・「言葉」がわからないってどういうこと?
普段何気なく使っている「言葉」ですが、聞くよりも見る方が得意な人もいます。言葉がわからないことがどういうことかを体験してもらうために、1人の先生を部屋の外に出し、部屋の中では今から「ガンダラ」という言葉しか使ってはいけないという決まりをつくりました。部屋の外に出ていた先生が中に入ると、他の人はその先生に「ガンダラ、ガンダラ」と言いながら色んなことを指示し、言葉がわからない気持ちを体験しました。最後は、ガンダラと言いながら絵カードを見せて、どんな指示をしていたのか教えました。部屋の外に出ていた先生は、「何を言われているかわからなくてとても不安。自分だけ知らなくて疎外感を感じました。泣きたくなりました」と言っていました。 特別な支援が必要な子どもへの対応は、声掛けは短く、ゆっくり、やさしくの方がわかりやすく、ダメ・やめなさいなどの否定的な言い方ではなくて肯定的な言い方をする、簡単に言うと×ではなく〇で言うことがいいと言っていました。また、指示するときは具体的な言い方に気をつけて、ちょっとではなく、3つならいいよとか、きちんとではなく、ゴミを10個ひろってとか、早く・もうすぐではなく、あと5分でやろうね、などと言うようにする方がいいと言っていました。 Bお母さんたちの想い 最後に、キャラバン隊のお母さんたちの子どもの産まれた頃の写真や現在の写真をスライドショーにして流し、どうしてこのような名前をつけたのかを説明して公演は終了しました。

2)参加していた先生の感想
公演に参加した先生たちの感想は、どう対応すればいいかということばかり考えていたけれど、体験を通してその子の身になって考えることができたと言っていました。

3)教頭先生とのお話
終わった後は会場の片づけを手伝い、教頭先生と少しお話をすることができました。教員という仕事は忙しく、体力的にもキツイ仕事だけれども、その分、子どもと関わる中での喜びは大きいから、ぜひ、教員目指して頑張ってくださいという激励の言葉をもらいました。

感想

<福冨君>
公演を通し、お母さんたちの「知ってほしい」という気持ちを強く感じました。障害の理解が広まるということは、私たちが思っているよりも大きな意味を持つのだと思います。人は、なかなか違いを許容できない生き物です。そして、違いにばかり目がいってしまう生き物でもあります。だからこそ、私たちと違わないことを伝えるためにも「障害」というものを知ってもらう必要があると感じました。今回の活動を通し、知ってもらいたいお母さんの気持ち、知りたい教員の気持ちを知ることができ、とてもいい経験になったと思います。

<中嶋君>
私は今回の公演に参加して、実際に小学校で働いている学校の先生の気持ちを知ることができました。どのようにして発達障害・知的障害を理解してもらっているのかということも知れましたし、実際に現場で働いている先生の生の声も聞けたのでとても貴重な体験になったと思います。

 

「青とんぼ班」の活動状況は、随時更新していく予定です!!

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