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2019.07.17

全学FD/SD事業「情報共有を目的としたICT活用の取組報告」を実施しました

 日本福祉大学は、2016年度に文部科学省大学教育再生加速プログラム(AP)「高大接続改革推進事業」(テーマV:卒業時における質保証の取り組みの強化)に採択されました。この事業では、ICT(Information and Communication Technology)を活用し、学修履歴・成果を蓄積するポートフォリオシステムによる学修成果の可視化、教務・就職・学生生活の側面から学修到達状況を表示する「学修到達レポート」の発行、学修支援機関と学部が連携した入学時から卒業時までの学修・キャリア支援などに取り組んでいます。

 高等教育を前進させていく上で、ICTの活用が必要不可欠となっている状況をふまえ、6月27日(木)、全学教育センター主催で、「情報共有を目的としたICT活用の取組報告」をテーマに全学FD/SD事業を開催しました。、本学教職員や付属高校教諭、あわせて約30名が参加しました。

全学教育センター村川弘城助教による概要説明

 冒頭、全学教育センター村川弘城助教から、中央教育審議会の「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」に、「高等教育機関がその多様なミッションに基づき、学修者が『何を学び、身に付けることができるのか』を明確にし、学修の成果を学修者が実感できる教育を行っていること」と学習者本位の教育への転換が明記されていることを引用して、教育の質的転換の背景と全体を通したねらいが参加者に伝えられました。

 村川助教からは、“教員が何を教えたかではなく、学習者が何を学んだか”が問われており、大学は、一人ひとりの学生が何を学んだか、その“学修成果を可視化して説明責任を果たす”ことが求められるようになってきていることを説明し、それらに取り組む上で、ICTの活用が必要不可欠となってきていることが示されました。3つの学部の事例を共有することで、効果的な授業実践とICTの活用について学び、大学教育の質保証への可能性を模索することが、この日のFD/SDの目標として確認されました。

 はじめに、本学ICT推進室の職員から、本学が導入しているGoogleが提供する“G suite for Education“の機能説明が行われ、参加者はその活用方法について学びました。次に、3つの学部の教員から学部の特徴をふまえたG suiteの具体的な活用事例が報告されました。

 授業実践の1事例目は、看護学部の新美綾子准教授から、「Google Formを活用した授業内小テストの実践」をテーマに報告がされました。

看護学部 新美綾子准教授による報告

 看護学部では、看護師の国家資格取得を目指す上で、相当な専門知識をインプットしていかなければならないため、予習中心の授業展開にせざるを得ず、いかに学生に主体的に学んでもらうかが課題となっているとのことです。そこで、授業の中にGoogle Formを活用した小テストを組み込んだところ、学生は、予習前提の授業展開についていくために主体的に学習に取り組むようになりました。他方で教員は、Google Formの集計機能を活かして小テストの結果を即座に反映した授業を展開できるようになったことが報告されました。

 次に、子ども発達学部の中村信次教授から、「Google Formによる簡易クリッカーを用いた双方向授業の試み」をテーマに報告がされました。

子ども発達学部 中村信次教授による報告

 中村教授は、入職当初、600人におよぶ受講者をかかえて大講義室でいかにアクティブに学んでもらうか問題意識をもち、今でも試行錯誤しながら教育改善に取り組まれています。一般的には、クリッカーと呼ばれる機材が用いられますが、機材の配布や回収に手間取ることから、学生のスマートフォン上でGoogle Formのアンケートシステムを動かし、これを簡易クリッカーとして活用することで双方向授業を展開しているとのことです。学生からは、記述式の回答も得られるため、そのような回答に至った理由まで把握できる点にメリットがあると報告されました。

 最後に、国際福祉開発学部の佐藤慎一教授が、「成果物の作成と共有を意識した学生同士の学び合い」について報告しました。

国際福祉開発学部 佐藤慎一教授の報告

 国際福祉開発学部では、少人数教育によるアクティブラーニング型の講義を多く展開しており、学生間の学び合いや教員と学生の学び合いを重視しています。そこで、Google Classroomというサービスを使い、学生同士が意見交換を行える環境を整備することで、学生同士、また教員と学生のコミュニケーションが円滑に進んでいる事例が報告されました。学生は、他の人が提出した課題を見ることができ、相互学習にもつながっているそうです。また、一つの講義の中だけでなく複数の講義で学生がどのような学修成果をアウトプットしているのか、学生ごとに可視化できるようになると個別の支援をさらに効果的なものにしていけると述べられました。

質疑応答の様子

 質疑応答では、具体的な活用についての質問が数多く出され、ICTの教育活用への関心の高まりを実感しました。

 最後に、司会を務めた全学教育センター村川助教は、「教育にICTを活用していくことが必要だという共通認識を参加者が共有した一方で、すべての教員が(道具としてICTを)教育に使えるようにするためには、もう一歩踏み込んだ支援をしていくことが今後の課題」とふりかえりました。