CODE 016 担当教員 穂 坂 光 彦
テーマ 居住福祉のための海外協力NGOをつくり、運営する
著書・論文
研究課題等
[著書]
『開発学概論』(共編著)日本福祉大学,2001年『アジアの内発的発展』(共著)藤原書店,2001年『南アジアの都市環境マネジメント』(共編著)東京大学東洋文化研究所,2001年『世界の居住運動』(共著)東大出版会,1996年『アジアの街わたしの住まい』明石書店,1994年
[研究課題]
アジアの居住福祉と参加型都市計画方法論

ゼミ概要
[ゼミの目的]
 私はかつてタイやスリランカでのんびりと暮らしていました。6年前,この大学に教員として赴任するときに,いくつかの夢を残してきました。夢を育んできた,といった方がいいかもしれません。そのひとつは,私が日本へ帰国する直前まで一緒に仕事をしていたスリランカの人々に役立つような活動を,学生とともに始めることです。その具体的な内容を,私はスリランカから名古屋へ向かう飛行機の中で考えていました。
 スリランカはインド洋に浮かぶ美しい島国です。しかし都市の2割を占める家族は,湿地帯や線路沿いに廃材やココナツの葉を利用して自分たちの力で建てた小さな住宅に暮らしています。「スラム」と呼んでいいでしょう。みなさんの多くは,「スラム」というのは貧しく無気力な人たちが吹きだまりのように集まっている社会の片隅の貧民窟であると思っているかもしれません。でも私が「スラム」というときは,官僚規制と市場機構の枠外で自分たちのニーズと合意に基づいて街をつくる人たちの,創造的でしたたかな生活の営み,を思い浮かべています。みなさんが,知らぬ間に染みついてしまっている世間の偏見やステレオタイプの殻を割って,自分の目で現場を見たり,周りの人と議論しながら,自分自身にとって確かと思える視点を築くことが,このゼミの最初の目標です。
 実際,スリランカのこうした地区に住む,特に女性たちは,こつこつと,しかし楽しそうに自分たちのお金を集め,互いに融資しあいながら,生活の向上を図っています。この組織を「女性銀行」といいます。主婦の内職や子どもの教科書購入などばかりでなく,住まいの改善にもローンが行きわたるようになり,スラムの住宅が少しずつレンガとセメントのしっかりした構造に生まれ変わり,水道やトイレが整いつつあります。
 そうした力強さを身近に学びながら,同時にその試みを外から支えることはできるでしょうか。私が考えたのは,日本で出資者を募り,そのお金を女性銀行に預金し,家の改造や,電気や水道を引くことに使ってもらう。彼女たちは対等な「市民」として,当然そのお金を利子を付けて返す。そのようにして貯まっていく基金の一部を日本の出資者と議論しながら,相互交流のために使っていく,という活動です。その運営を,この大学のゼミ活動として行うことです。

[ゼミの進め方]
 上の活動は,すでに現在の2年生によって少しずつ始められています。したがって,この演習は,原則として2年生・3年生合同で作業します。このような活動を始めるときに知っておくべき日本の法律,NGOを運営するための会計学や海外送金の知識,途上国の住宅金融の仕組み,スリランカの歴史や社会,類似の「投資型」市民協力組織の事例等について,グループで勉強しながら,実際に資金を集め,スリランカを訪れて市民交流を推進し,居住環境改善へのスリランカ女性達の活動から「開発とは何か」を学びます。

[履修上の注意]
 なんといっても「南」の国を自分の脚で歩き,自分の眼で見,自分の耳で聞くことが不可欠です。専門演習I・IIを通じて2年間の間に最低一度はアジアの現場実習に参加することを心がけてほしいものです。ゼミでも,市民出資者とともにスリランカ旅行を企画することになるでしょう。そういう機会に備えて,英語ないし関心を持つアジアの言語を習得するよう各自努力してほしいと思います。
 国際開発関係科目はもちろん,簿記,会計学,商法,金融論,非営利組織論,国際経済など,各自が興味を持つものをそれぞれ貪欲に履修してください。このゼミでは,それらを実地に応用することになります。私自身もこれまで,経済学部の先輩・同僚の先生方から貴重なコメントを頂いてきました。私が知らないことを知っている,あるいは知ろうとする意欲に満ちた諸君ほど,戦力として貴重です。
なお上記のように2・3年生合同で,すなわち2時限連続して参加する必要があります。(隔週になる可能性もあります)。時間割が未定ですが,他の科目が履修しにくくなる場合もあるので,特に水曜日配置科目の履修登録については,事前に私に相談に来てください。

[参加を希望する人に]
上に述べた私の構想について,詳しくは以下に記してあります。
  1. 穂坂光彦「開発教育資源としてのNPO/NGO」『NFU』(日本福祉大学評論誌)51号
    (研究本館の受付ないし2階の企画課で無料で入手できます)
  2. 穂坂光彦「住民によるスラムの改善」斎藤千宏編『NGOが変える南アジア』
    (図書館に複数部所蔵されています)
 ゼミ参加希望者は,この1.2.の私の論説の少なくともいずれかを読み,それに対するコメントと,志望理由とを,希望票に記してください。また私の相談日(11月7日午後5時以降夜まで,または11月9日正午以降夜まで)に研究室(408)に面談に来てください。

使用テキスト 担当教員からのメッセージ
使用しない  このゼミ参加は,単に「学生時代の思い出つくり」ではなく,卒業後も継続してこの活動に関わったり,あるいはこれを出発点として将来自分で新たな市民活動を始めたりするための「基礎づくり」であると考えてください。


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