CODE 008 担当教員 関口和雄
テーマ 「ヘルスケア・サービスのマネジメント」
著書・論文
研究課題等
・論文「福祉産業の発展動向と課題」NFU2001年11月
・共著「経営学」日本福祉大学2002年4月

ゼミ概要
 私のゼミでは,2002年から「ヘルスケア・サービスのマネジメント」というテーマで勉強し ていきたいと新しい旗を掲げます。
私の専門領域は「経営学」,人的資源管理や経営戦略に関する研究やフィールドワークを中心にやってきました。今年は,海外留学でシカゴの郊外にあるノースウェスタン大学のビジネス・スクールに来ています。ビジネス・スクールは企業をリードする経営者やプロフェッショナル・マネジャーを育成するところですが,アメリカのGDPの約15%を占めるほど大きくなったヘルスケア産業の動向に注目し,ヘルスケア・サービスのマネジメントに関する研究と教育にも力を入れて取り組んでいます。
 アメリカでヘルスケアのマネジメントというと,医療,福祉,製薬,保険,医療・福祉機器,バイオテクノロジーまできわめて幅広い領域を含んでいます。ヘルスケア・サービスを提供する組織体をとってみると,私企業,連邦・州政府,非営利組織といったさまざまな所有形態のものがあり,施設のタイプも,コミュニティ病院,外来クリニック,救急外科ユニット,治療施設,療養看護施設,居住型施設,在宅サービス機関,リハビリ施設,ホスピス,HMO(保険サービス),検査試験部門など多様なものがあります。したがって,その組織が提供するサービスも,全般的なサービスか専門化した特定のものか,どの範囲まで取り上げているのか,どんな組み合わせなのかなどによって違っていますし,組織のある地域に住んでいる人々の年齢,性別や社会経済的な地位によっても異なってきます。こうしたさまざまな諸条件のなかで,ヘルスケア組織体の経営やマネジメントの構造が変わってきます。
 こうしたヘルスケア組織体は,アメリカの成り立ち,経済や社会の仕組み,医療・社会保障政策,産業や企業との関わりなどのなかで育まれて,多種多様な展開をとげてきました。そこに高齢化社会を迎えて,人々の健康と福祉への関心が高まり,ヘルスケア支出が急増しはじめると,ヘルスケア・サービスの質向上とコスト抑制をめぐり,科学的で合理的なマネジメントをいかに行なうのかが重要な社会的課題となっていたのです。
さて,日本のヘルスケア組織体のマネジメントについては,ようやく研究がはじまったところで,まだまだ未開拓の分野です。というのは,サービスを担っている医療法人や社会福祉法人には,お役所の手のひらの上に乗っており,経営やマネジメントについて考える必要はなかったといっても過言ではありません。私たちが医療機関や福祉施設をインタビュー調査で訪問しても,財務諸表,収益やコストに関する資料などほとんど出てきません。経営やマネジメントの指針や判断の基礎になるものができていなかったといえます。
 本学の福祉社会開発研究所では,新たな医療・福祉マネジメントの領域を切り開こうとして,「医療・保険・福祉複合体」「福祉施設経営」「地域福祉経営」「福祉機器産業」などの研究プロジェクトに取り組み,いくつかの成果をあげてきたところです。さらに,学際的な現場に足をつけたシステム的な研究を深めていって,日本にヘルスケア・サービスのマネジメントを確立していかなければ,これからやってくる高齢化社会には展望がなくなってしまいます。
 「ヘルスケア・サービスのマネジメント」,すでに出来あがった学問の知識を学ぶものではありません。ヘルスケア組織体が直面する経営上のさまざまな課題に対し,マネジメントの視点に立って,問題の合理的な解決を考えていくことが求められているのです。言い換えると,経営学やマネジメントの理論を基礎としてちゃんと勉強したうえで,ヘルスケア組織体のサービス,顧客と競争,業務の仕組み,資源の獲得と配分,計画と業績評価,組織間連携などといった問題を考えていくことです。そこには,政府や自治体の政策,保険の制度と運営などといった問題も結びついています。
 したがって,「ヘルスケア・サービスのマネジメント」を学ぼうとすれば,基礎的な知識と方法論を身につけ幅広い裾野を固めることが必要です。ビジネス・スクールでは,その基本になるものについて,「経済学」「ファイナンス」「会計学」「組織理論」としています。そして,ヘルスケア政策,ヘルスケア組織の連携戦略,サービス・マネジメント,非営利会計などといった分野に特有のものをたくさん勉強しなければなりません。
 最後に,どのようにゼミを進めていくかですが,基礎となる経営学と領域の医療・福祉の勉強をいかに結びつけるかが鍵になります。今,これだという決め手がありません,また,どこに絞り込むのか戸惑っています。いずれにしても,数多くの文献や資料を読んで,精力的に勉強してください。次に,現実の問題を把握するために,フィールドワークを重視したいと思います。社会福祉施設や在宅介護サービス会社に出かけていってインタビューをしたり,あるいはインターンシップで組織のなかに入り込んでもらいたいと思います。そして,こうしたみなさんの努力が足し算した総合計以上になるように,チームワークを組んで勉強していくことが重要になります。ゼミの時間割は,水曜の3時限目になると思いますが,午後はすべてゼミのために時間を取っておいてください。チームでの課題研究,学外での訪問インタビュー調査,自主的な勉強会などに使ってもらいます。
 「ヘルスケア・サービスのマネジメント」,大変に難しい課題ですが,是非とも,日本の高齢社会を支える担い手になるのだという大きな志をもってチャレンジしてください。私も,みなさんと一緒に勉強していきます。

使用テキスト 担当教員からのメッセージ
教科書 後日指定します。
参考文献 後日指定します。
 大学生活,ゼミに時間を惜しげなく注ぎ込んで努力してください。本を買ったり,インタビュー調査に出かけたり,ゼミ合宿をしたり,ちょっとお金もかかるかもしれません。ゼミの仲間たちと協力してグループ課題に取り組み,楽しく勉強をやってください。若い時の努力は,すぐに効果がみえなくとも,将来の自分のためだと信じ,投資をして下さい。
今,海外留学中なのでゼミの説明会には出られませんが,何でもメールで問い合わせてください。
ゼミの志望者は,次の事項をまとめ,11月13日までにメールで送ってください。
  • 自己紹介氏名,出身,サークル等活動,趣味・特技
  • 現在関心を持って勉強していること,どういうところが興味深いか。
  • 志望理由,何についてみんなと勉強してみたいか。
  • 将来の夢
  • その他


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