[内容・方法]
世界においては飽食による成人病が問題となる一方で,毎日の食事にも事欠くという慢性的な貧困に喘いでいる人々が存在します。先進国においては,そのような人々は絶対数が少なく,様々なセーフティーネット(社会保障政策)で対応しています。ところが,そのような余裕のない発展途上国における貧困は,その規模も程度も深刻であることが少なくありません。
こうした貧困は,まずもって人道上の憂慮の対象ですが,同時に社会的な混乱の原因ともなることから,その打開のための国際的な協力が求められてきました。では,どのような協力が望ましいのでしょうか。そうした貧困は,各国の経済の成長と共に自然に消滅していくものなのでしょうか。過去数十年間の経験は,必ずしもそう言えないことを示しています。国際比較をしたときに,各国の一人当りGNPの高低と貧困の度合いが対応しないということもあります。
従って,まずその実態を把握し,その諸要因を理解しておくことが不可欠です。そのためには,そもそも,どのような状態を貧困というのか,またそれをどのように計測するのかが問題になるでしょう。様々な国の事例から,共通した特徴を導きだし,その基本的概念を会得しておくことは,途上国の貧困問題を理解する出発点です。こうした貧困概念と実態を理解した上で,貧困対策として取られてきた様々な政策とその歴史的経験を検討し,望ましい諸政策のありかたを探っていきたいと思います。なお,貧困の原因としては,現実問題として,内戦など政治的問題が深くかかわっていることを知ることになりますが,それについては,ここでは深めることができません。当該国が支援可能な状態であることを前提として考えざるを得ないことを断わっておきます。
ゼミの進め方としては,以下のサブテーマに関連するテキストを紹介し,数人のグループ単位で関連するパートの「まとめ」を発表してもらった上で,議論をおこなっていきます。-
「貧困」とは何か?どのような状態を「貧困」と考えるのか?
- 貧困の度合いをどのようにはかるか?指標と計測方法
- 貧困であることは,どのような現象を伴うか?貧困の諸相
- 貧困はどうしてもたらされているのか?貧困の諸要因
- 貧困を打開する政策にはどのようなものがあるか?
- 貧困層に直接働き掛ける政策の実例にはどのようなものがあるか?またその効果は?
- どのような政策が必要か?
- どのような国際協力が可能か?当事国の社会的特質,統治能力と支援のあり方
[履修上の注意]
単に出席しているだけの「お客さん」には,必ずしも単位は保証されていません。ゼミでは,知識を結果的に吸収することよりも,問題へのアプローチの仕方などを身につけることが重要だからです。新聞などから関連するニュースを取り上げて,学生自ら質問や独自の意見を呈することは,肯定的に評価されます。また,英語文献も参考文献の原本などから利用することがありますので,辞書は必携。
|