CODE
010
担当教員
野 村 晃
テーマ
雇用社会と労働法
著書・論文
研究課題等
『注釈法律学全集45・労働基準法U』(共著)第6章「年少労働者」,青林書院(1994)
『戦後労働法学説史』(共著)第11章「勤労権」,旬報社(1996)
『労働者の人格と平等』(共著)第8章「労働者の思想信条・言論の自由」,日本労働法学会編,有斐閣(2000)
『人事・労務の法律実務』(共著)第8章「全額払いの原則と賃金債権の相殺」,産労総合研究所(2001)
ゼミ概要
[内容・方法]
社会・経済の急激な変化にともなって,企業のあり方やそこで働く労働者の雇用,および就業形態は激変しています。とりわけ,近年のリストラクチャリングは,労働者の雇用や就労状態を直撃して,少なからぬ影響を及ぼしています。労働法制はこの15年有余の間に,「規制緩和」に対応した改編が,矢継ぎ早に実施されてきました。例えば,終身雇用制や年功序列型賃金制に替わって,能力主義や成果主義を基軸においた雇用形態が台頭し,それとのかかわりで職業能力の開発,派遣労働の促進,労働時間の弾力化が進み,他方で,男女の雇用機会の均等化,高齢者・障害者の雇用促進,育児・介護休業の付与等々に関する法制が制定・改編されました。
バブル経済崩壊後には,派遣労働の原則自由化,労働時間のさらなる弾力化(ホワイトカラー層への裁量労働制の適用拡大),女性保護の一部廃止と男女雇用機会均等法の改正等が,労働法制の改編を決定づけ,日本型雇用慣行の変容を促してきました。その結果,「労働契約重視」ということが,大きくクローズアップされるに至りました。ところが,各地の弁護士会が行っている,「労働相談・110番活動」には,「フレキシブルな雇用形態やリストラの強行による雇用不安の悩み相談」,「過労による自殺に関する法律相談」が急増しているといわれ,法の遵守や契約意思の確立,保護法の見直しが課題とされています。
そうした今日的状況を踏まえて,私のゼミでは
(1)主に,個別的労使関係法に焦点をあて,労働者の「権利」と「義務」について整理し解明を試みます。
(2)労働者が「働くこと」,「人たるに値する生活を営むこと」の意味について法的解明を試みます。
その際,労働法制の中で最も関心の高いテーマを,学生自身に選んでもらいます。例えば,労働関係の「開始」から「終了」までの法的問題は「労働基準法」から,労働市場・雇用社会に関する法的問題は,「労働者派遣事業法」や「男女雇用機会均等法」あるいは「労災保険法」等から選んでいただきます。当然のことながら,学生の選ぶテーマについては,先輩が選んだ課題などを参考にして,興味や関心を喚起するよう心がけます。
[履修上の注意]
自分で好きなテーマを選んでください。判例研究(事実関係・判旨・論評など)や外国との比較研究を織り込むと,レベルの高い報告になるでしょう。例えば,先輩達はつぎのようなテーマを選んできましたので,参考にしてください。
「日本型雇用慣行の変容」・「規制緩和と労働法の改編」
「労働時間の弾力化(フレックスタイム制・裁量労働制等)」
「労働契約をめぐる問題(採用内定・配転・出向・単身赴任・退職強要・解雇・懲戒免職等)」
「リストラクチャリング(整理解雇・退職金不払い・賃金減額)」
「労働者派遣事業法(派遣労働の増大と不安定性・契約社員の実態と課題,パート・アルバイト)」
「育児・介護休業法」
「男女雇用機会均等法(賃金・昇給・昇格差別,セクシャル・ハラスメントと損害賠償)」
「中高年・障害者の職業訓練と(再)雇用」
「労働災害(職業病の認定基準と補償,過労死・過労自殺の認定と補償)」
「労働者生活から年金生活への移行と課題」等々
その他,学生生活も半ばを迎えるに至ったところで,アルバイトの経験などから,さまざまな就労問題への関心が高まっていることでしょう。そうした各自の経験と就職へのアプローチを互いに語り合うなかで,ゼミ活動を進めます。3年ではレジメの作成→報告→レポートの作成,4年では卒論レジメの作成→卒論の執筆,という道筋で行います。
使用テキスト
担当教員からのメッセージ
テキストは特定しません。テーマによって文献・資料を、報告レジメ作成時に紹介し,助言・指導します(ただし,「労働法」講義のテキストを参考にしてください)。
つぎの4点に留意してください。
資格試験(労働基準監督官・社会保険労務士・行政書士など)に挑戦する意欲のある学生を,歓迎します。
飾り気のない素朴で,誠実な学生の参加を期待します。
個々の学生の「個性」と「人格」を尊重し,「自律」を促します。
なお,「小六法」は,ゼミ室に用意してあります。
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