CODE 004 担当教員 大 木 一 訓
テーマ 今日のリストラと日本経済を考える
著書・論文
研究課題等
[著書]
『雇用・失業の経済分析』,『現代雇用問題と労働組合』(編著),
『産業空洞化にどう立ち向かうか』,『トヨタ・グループの新戦略』(編著),
『変貌する世界企業トヨタ』(編著),
”Japanese Business Management-Restructuring for low growth and globalization“(共著)
[論文]
「リストラ戦略とは何か」,「規制緩和の現段階をどう見るか」,
「『三つの過剰』をなくせば日本経済はよくなるか」,「グローバリゼーションと日本的労使関係の変容」,
「発達した資本主義諸国の失業問題を考える」,「失業問題の深刻化と政策課題」,「アジア経済危機と日本の将来」,
'Economic Crises of Asiaand Activities of Multinational Corporations'

ゼミ概要
〔内容と方法〕

 近年の日本では,「カラスの鳴かない日があっても,リストラが報じられない日はない」と言われるくらい,毎日のようにリストラが頻発している。そこでは,将来を悲観したサラリーマンの自殺増加が,国民の平均余命を引き下げるという,かつてない事態さえ生まれている。
 他方で,さいきん驚かされるのは,三菱自動車,雪印乳業,そごう,ブリヂストン,等々の一流企業が,つぎつぎと信じられないような不祥事をひきおこしていることである。しかも,それらの不祥事はけっして一部の会社だけの例外的な状況ではない。うちの会社にも同じような状況がある,いつ同じような事件を引き起こしてもおかしくない,という従業員の声があちこちから上がっている。聞いてみると,一連の不祥事の背後には,きびしいリストラの実施という問題があるようだ。
 本来のリストラは,企業や国の経済を健全に立て直すための経営政策でなければならないはずだが,どうやら日本における現実のリストラはそうなっていないようだ。一般にリストラ=首切りと思われていることからもわかるように,それは,従業員や下請け関連業者など,もっぱら弱い者にシワ寄せする政策になっているのではないか。しかし,そうだとしたら,なぜそうなってしまっているのかが問題である。
 リストラをめぐっては,ほかにも不思議なことがいろいろとある。リストラ政策の先頭に立って賃金の切り下げや大量の人員整理をすすめているのは,業績のよい巨大企業であることが珍しくない。ありあまるほどの利益を手に入れ,倒産の心配もない巨大企業が,なぜそこまで過酷なリストラをすすめるのか。また,株式市場の動きなどを見ていると,大胆な従業員の解雇をおこなう企業ほど評価されて,株価が上がるという現象さえ見られる。逆に,従業員の雇用の安定を大事にしている企業は,企業の格付けとしても低くなってしまうということが,実際におきている。このような,まるで,働く人たちの生活のより所を奪うことを奨励するかのような経済現象が,なぜ起きているのだろうか,という問題もある。さらに,今日では,産業再生法などの法律もできて,国が民間企業のリストラを支援し推進するようになっており,その政策が日本経済を立ち直らせることになるかどうかについては,企業経営者の間でさえも意見が分かれている。基本的な経済政策のあり方をめぐって,なぜこれほどの議論になっているのかという点も,はっきりさせたい問題の一つである。
 ともあれ,われわれのゼミでは,経済学の基本的知識を身につけつつ,いま社会問題の焦点となっている「リストラ」の考察をつうじて,日本経済の実像に迫る調査や研究をすすめたいと思う。日本の会社を健全なものとするためにも,世界に誇ってきた日本の技術を守るためにも,さらに,日本経済の明るい未来を展望するためにも,この研究は大切ではないかと思うのである。
もちろん,ゼミでの調査・研究は,教室の机上だけで終わるものではない。いろいろな所に出かけ,いろんな人たちの話を聞き,他の学生や研究者や労働者と交流し,合宿でケンケンガクガクの議論をし,成果はがっちり報告・論文にまとめ,できればインターゼミにも参加する,といった楽しいゼミ活動をすすめたいものである。

使用テキスト 担当教員からのメッセージ
 そのつど指示します。なお,本ゼミへの参加学生は,必ず新聞を購読して下さい。  履修希望学生は,(1)アルバイトやサークル活動もあると思うが,ゼミへの参加を優先するよう生活設計すること,(2)毎朝,必ず新聞の経済面や政治面を読むようにすること(ゼミでときどき報告してもらう),(3)春・夏の合宿(1泊2日ないし2泊3日)に参加できるよう,時間的にも経済的にも準備しておくこと。なお,経済的に困難な学生は相談にのるので,遠慮なく申し出てほしい。


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