CODE |
402 |
担当教員 |
槌 田 洋 |
テーマ |
地方自治の主体形成と地域福祉
〜自治体政策からの発想〜 |
著書・論文
研究課題等 |
- 「大阪大都市圏の形成とニュータウン開発」 京都大学経済学会“経済論叢”
- 「分権型福祉国家と自治体化威嚇〜スウェーデンを素材として」 京都大学経済学会“調査と研究”
- 「 『協働』 化に対応した自治体行政組織に関する基礎的研究」 総合研究機構助成研究
- 「地域福祉と地域福祉計画」 近刊“講座21世紀の社会福祉”所収予定
(課題) |
|
ゼミ概要 |
ゼミナールでは, これからの社会福祉の在り方を, 地方自治と地域政策に焦点を当てた形で学びます。 基本的な課題意識として考えていることは次のような点です。
現在の社会福祉の構造変化をめぐる主要な背景として指摘できるのは, 第一に児童虐待や高齢者介護の問題にも見られるように, 社会福祉をめぐる課題が市民生活全体に広がっていることです。 その背景には, 子育て真っ最中の家族が相談相手もなく地域で孤立していることや, 急速に進む高齢化の中で家族の介護機能が減少していると言ったことが通常挙げられます。 これらは一般的な市民の生活の中で“生活の社会化”が拡大していること, つまり家族を主体とした日常の生活が, 外部から提供されるサービスに依存する度合いを高めている状況としても指摘される点です。
第二の背景は, 福祉の課題が個別のサービス提供に止まらずに, 対象者の“生活の質”を向上させることが重視されるようになったことです。 高齢者や障害者への福祉サービスが施設入所中心から地域社会での生活を重視する方向に変化していることも, こうした“生活の質”言葉を変えれば“その人らしさ”を大切にした援助の在り方への模索という一面を持つとも言えます。
ここで重要なのは, “生活の質”や“その人らしさ”を発揮した生活を送る上での主体は, あくまで本人自身であることです。 こうした, 「生活の社会化」 の広がりや 「その人らしさ」 への注目は, NPOなどの“参加型”のサービス提供スタイルの広がりや, 子育てグループ活動などの協同型の住民活動が広がっていく背景ともなっています。 これらの傾向はあいまって, 福祉を総合的な地域政策の一環として展開することの大切さを示唆するものです。
ところで, こうした生活者としての市民を支える福祉の役割を考える場合には, 個々の市民生活は本人の所得や住宅あるいは利用可能な福祉サービスなどの直接的な資源によって制約されると共に, 地域の社会環境によっても影響を受けるのは重要な点です。 地域の社会環境を大枠で規定する要因として, 従来では国レベルでの産業構造や道路・交通網整備などの“上からの”社会資本政策などが大きな役割を果たしてきました。 これからの地域社会を変えるための地域政策の課題と主体をどう捉えるのか。 ここで地方自治にあらためて焦点を当てることの重要性が明らかになります。
ここで海外に眼をやると, 最近のスウェーデンを始めとする福祉国家もまた大きな転機を迎えています。 従来, 福祉国家の政策は, 福祉や教育の充実を通じて優秀な人材を育てることに貢献するとして, 産業の繁栄とも両立するものとして受け止められていました。 そして福祉や教育の全国的な水準を高める為に, 中央政府が決めたナショナルミニマムを地方自治体が実行していくという, 中央集権型の形が取られてきました。 こうした中央政府が主体となった福祉国家のスタイルは, 経済活動のグローバル化に伴って自治体がEUや外国資本と直接連携を取り出すと共に, 他方では中央政府が定めた画一的な福祉政策の問題点が明らかになる中で, 行き詰まりを見せています。 そしてあらためて, 自治体を主体とした政策スタイルへの転換と, 協同組合方式によるサービスを重視する事などを通じて, 分権型の福祉国家への模索が進められています。 こうしたヨーロッパの経験にも学びながら, 大きな視点でこれからの福祉政策の枠組みを考えることが求められています。
あらためて日本の地域社会の歩みを振り返ってみましょう。 第二次大戦後の日本の地域社会の形成は, 東京や大阪・名古屋などの大都市とその周辺地域に人口と産業を集中させることが出発点になりました。 この結果として例えば大都市の周辺地域では, 従来の農村地域が短期間の内に中心都市で働く人々のベッドタウンに様変わりするという事態も珍しくありませんでした。 そして, 地域開発に向けた国レベルの国土政策も, 地域社会の人々の生活よりは産業活動の支援を目的として展開されてきたと言えます。 この中で, 社会福祉事業も中央政府に権限を集中させた形でその対象も貧困者対策を中心に極めて限られものに過ぎませんでした。
こうした政策スタイルは, 一方では国際・国内的な経済環境の面から従来の産業政策が行き詰まる一方で, 生活の社会化に伴う問題の広がりや, 豊かさや“生活の質”に対する関心の広がりの中で, 福祉政策についても様々な面からの見直しが求められています。 こうした中で必要なのは, 地域社会の環境を改善して暮らしと健康をめぐる条件を整備することや, 地域に根ざした経済活動の促進などを進めるための地域政策を, 住民の創意に基づいて総合的に展開することです。 こうした意味でこれからの自治体に求められる役割は極めて大きいと言えます。
[具体的な進め方]
以上のような視点から, ゼミでは、生活の質を高める社会福祉に向けた政策を, いわゆる町づくりへの総合的な政策の一環として捉えた上で、自治体や住民組織の役割に注目する形で学んでいきます。 具体的には, 福祉国家論などの原論的な文献の学習と共に, 法令・調査報告などの検討, また市町村や施設やNPO等の団体へのヒアリング調査などを通じた学習を進めます。 |
|
使用テキスト |
担当教員からのメッセージ |
ゼミナール開始後に指定します。 |
討論と実態調査を重視し, 政策を考える実践的なゼミにしたいと考えています。 意欲のある皆さんの参加を期待します。 |
|
(C) Copyright 2002 Nihon Fukushi University.
all rights reserved.
本ホームページからの転載を禁じます。

|
|