CODE 318 担当教員 川 田 誉 音
テーマ これからの精神保健福祉
著書・論文
研究課題等
ゾフィア・ブトゥリム 『ソーシャルワークとは何か』 (訳) 川島書店 1988年
『グループワーク/社会的意義と実践』 (編著) 海声社 1990年
シュラミット・ラモン他編 『過渡期の精神医療−英国とイタリアの経験から−』 (訳)海声社 1992年
『個別援助の方法論−ケースワークを越えて−』 (共編著) みらい 1998年

ゼミ概要
〔内容・方法〕

 人間にとって, 安心して住む場, 働く場, 憩う場, 活動の場を見出すことは容易ではない。 心の病いで長期入院を余儀なくされてきた人々や回復途上にある人々にとっては, なおさらであろう。 病気による障害の上に, 私たちの内にある偏見や差別が, 心の病をもつ人びとの生活にさまざまな壁を生じさせている。
 精神保健福祉は, すべての人の心の健康や病いを生活の問題として認識するところから始まる。 つまり, 日常生活における心の健康の維持はもとより, 健康を損ないやすい生活・労働条件の解明とその改善, 問題の早期の気づきと相談・治療の体制, 適切な治療環境の保障, 治療やリハビリテーションを行いながらの生活相談, 市民としての生活基礎づくりなど, 広く生活の質の向上を支援することをめざしている。
 しかし, 精神保健福祉に関する施策の充実はこれからだと言われなければならない。 1987年に 「精神衛生法」 が 「精神保健法」 へと改められ, 適正な医療と人権の尊重, 社会復帰の促進が国の方針として明示された。 それにより, 初めて社会福祉施設の中に精神保健福祉の社会復帰施設が認められた。 さらに, 1995年にこの法律は 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」 (通称 「精神保健福祉法」) となった。 そして, 1998年 4 月より, この法律のもとで働く社会福祉専門職の国家資格を定めた 「精神保健福祉士法」 が施行された。
 精神保健福祉にかかわるソーシャルワーカーは, 一般には PSW (Psychiatric Scoial Worker) と呼ばれる。 「精神保健福祉士」 というのは, PSW のうち国家資格を持つ者の法律上の名称である。 精神保健福祉の充実をはかるには, 専門職としての PSW の資質の向上と人数の増加, 配置機関の拡大, 他の専門職とのチームワークが重要である。 しかし, 精神保健福祉は, 専門職者だけによって担われるものではない。 広く社会の人々が偏見, 差別の壁を無くしていくことは, これからも大きな課題である。 心の病いを経験している人々と家族や友人などのこれまでの歩みと日々の取組みには, かけがえのないものがある。 専門職者は, そうした当事者に深く学びつつ, 当事者の過重な負担を軽減し, その主体的な取組を支援するシステムを作っていく役割を担わなければならない。
 このゼミでは, これからの精神保健福祉の問題に焦点をあてる。 これを通して, 生活者の人権を守る社会福祉の方法論を学び, 私たちがどう生きるかについて考えあっていきたい。 ゼミ生の卒業後の進路はさまざまであってよい。
 三年前期は, まず問題関心をほりおこすための学習をし, 後期からは, さらにくわしい研究へと発展させていく力を増すことをねらいとする。 理論学習と同時に, 次のような研究活動を行うことをのぞんでいる。 三年の夏休みには, 各自, 地元または特に関心のある地域での病院, 社会復帰施設や作業所など関係機関で見学または実習し, 精神保健福祉の実情にふれ, 報告会をもつ。 その後も, できるだけ多くの機会を求めて, 実習させていただいたり, 研究会や当事者団体の活動などに積極的に参加することをすすめたい。
 三年から四年にかけて春休みには, このゼミ恒例の 30枚レポート (400字詰め) を作成しよう。 自分にとって考えておきたいこと, 研究したいことから各自が設定したテーマで, 小論文の形式をとって書いてみる。 たいへんだが卒業論文にむかってスタートする貴重な経験としていきたい。

〔履修上の注意〕
  1. 履修者は, ゼミのテーマにふれると思う本または出来事を自由に選び, その感想文を400字詰原稿用紙5枚程度にまとめ, 「希望票」 に添えて提出してください (第2希望の場合も同じ)。 専門書, 論文, 新聞記事の他, 文学, 音楽, 美術などのジャンルは問いません。
  2. 毎年,年度末にはこのゼミの卒業論文発表と交流会を二, 三, 四年の合同で行ってきました。 日程については 1 月に提示しますので注意していて下さい。

使用テキスト 担当教員からのメッセージ
ゼミでの相談の上決定する。  ゼミは毎年のメンバーによって創っていくものです。 時にはよどみ, 時には勢いを増す川の流れのようでもあります。 いろいろな参加の仕方ができるような, 自由と創造性に富んだゼミ活動を通して, 研究と互いの理解を深め, 育ち合えることを願っています。


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