CODE 315 担当教員 水 野 信 義
テーマ 医療・精神保健に生かす心理的援助
著書・論文
研究課題等
著書
(共著)『臨床心理学』(エディケーション, 1994), 共著)『学校精神保健』(愛知県学校保健医会 1996)
訳書
(共監訳) コフート著 『自己の分析』 (みすず書房, 1994)
論文
「不安神経症ケースの精神療法過程から」 ( 『精神科症例研究』 所収, 星和書店, 1991)
「家庭内暴力への片親ガイダンスを行った 1 例」 ( 『精神療法の探求』 所収, 金剛出版, 1994)
研究課題
心身症・神経症について, 精神療法・家族療法の折衷と統合, イタリアの精神保健福祉

ゼミ概要
〔内容・方法〕

<対象分野>

 従来私は発達福祉の分野で 「福祉における心理的援助を考える」 というテーマの専門演習を続けてきた。 来年度からは, 神経保健ユニットに移行するため, テーマを若干変更することにした。 私は精神科医で, 総合病院神経科での経験が長く, 神経症, 心身症, 思春期の不登校, ひきこもりなどの診療のかたわら, 一般医療と神経保健をつなぐ連携精神医学ということにも関心があった。 主な専門領域が精神療法なので, 臨床心理士の資格も取得した。 また総合病院精神医学の延長として, 精神病院をなくして総合病院の入院だけ認めているイタリアの精神保健福祉にも関心が向かっている。
 以上のような背景から, 精神保健ユニットの中でも, 本ゼミは狭義の精神障害だけでなく, 少し広げてストレス関連障害や心身症, ひきこもりなどについても対象にしたい。 あるいは終末期や難病を抱えた当事者や家族の方への心理的理解なども大切であろう。 そのように医療ソーシャルワークの中で心理的なアプローチも取り入れれば, よりきめの細かな福祉的援助が出来るのではないかと考えている。
 一方精神保健分野は当事者についても常識的心理学だけでは理解できないこともあり, 内面を理解するために精神医学や精神療法などの知識が必要であろう。 また不登校やひきこもりも児童福祉や心理臨床だけで扱えない事例もあり, 家族アプローチなども身につけておきたい。

<方法論的立場>
 以上のような点を踏まえて, このゼミでは, 福祉の専門家になることを大前提として, (社会福祉的援助方法を十分身につけた上で) 臨床心理的理解と援助についての基礎的学習をしたい。 すなわち個人面接, 家族アプローチ, 地域支援的方法について基本的なことを学びながら, それらを医療・精神保健に応用することも考えていきたい。 いわば心理学的センスも持った福祉の専門家をめざすことになる。 (ゼミ生には精神保健福祉士もしくは社会福祉士の資格を取るようお勧めする)。 したがって, 主として環境の改善をめざす社会福祉の方法を学びながら, 一方で主体の変化をねらう臨床心理学的方法を学ぶのであるから, 頭の切り替えができる柔軟性とともに, かなりの努力をする覚悟をもって応募して頂きたい。

<具体的分野>
 精神保健分野では精神障害を持った人の心理的理解は必要なのは当然であるが, その他にもたとえば境界例的な事例, 家庭内暴力で家族調整が必要な事例などに出会うであろう。 医療の分野でも心身症, 難病終末期の事例など, 生かす分野は多いと思われる。 しかし再度強調するが, 社会福祉的援助をすることを大前提として, 自分が関心のある分野で心理的センスをどのように生かすかを考えていただきたい。 保健医療福祉, 社会福祉の分野で心理的援助そのものを行なう場面は多くはないし, 臨床心理士などに委ねた方が良い事例もあろうが, 少なくとも問題意識を持っていればセンスを生かす場面は多々あるはずである。

<進め方>
 3年次にはレジュメや論文を使って, 個人心理療法的援助から家族アプローチ, 地域アプローチへと学習を進める。 前半はそれと平行して精神保健医療, 医療, 保健等の個々の問題別セブゼミ・グループを作って具体的問題 (例えば精神障害, 心身症, 難病の心理など) と取り組み, グループ論文を書く。
 3年の後半ではグループ論文を基礎に卒論のテーマにつなげて, 4年の夏に卒論の完成をめざす (資格試験の準備のため, 卒論は早く完成させる)。 卒論のテーマはゼミに沿ったものであれば限定しない。 学年末には卒論発表会を行う。

<進路とのかかわり>
 必ずしも精神保健福祉士とはつながらないので, 他の分野での応用をめざしても良いであろう。
 例えば, 医療・保健・介護の分野ではなかなか本来の仕事が多くて, 心理的援助まで手が回らないともいわれるが, しかし一般に対人的援助を行う福祉領域では応用できると思われる。

<実習および見学>
 3年生は実習が多いので大変であるが, 希望者には精神病院や病院などの見学実習を紹介している。 また関連のある研究会も紹介するので積極的に学習していただきたい。

<履修上の注意>
  • ゼミ希望者への注文:希望者にはゼミに入って追求したいテーマや問題とそれについて考えたり実行したこと, 感銘を受けた本, などを含めて書くこと。
  • できるだけ説明会やオフィスアワーを利用して教員に会っていただきたい。
  • ゼミ決定者は4年生の卒論の発表会 (1月試験後) に参加すること。 それまでに教員に会いに来ていただきたい。
  • 春休み中に必読文献 A から2冊, B から1冊を読み, 感想文を第1回目のゼミで提出すること。

使用テキスト 担当教員からのメッセージ
 とくになし。 適宜レジュメや論文を紹介しながら進める。 必読文献は 3年次で必ず目を通すことその他の参考文献は適宜読んで, 読書感想文ノートを作っていただく。 ただし高価な本もあるので, 図書館を利用されたい。  


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