CODE 209 担当教員 小野木 義 男
テーマ 少年非行の背景と処遇
― 児童自立支援施設・少年院・教育の課題 ―
著書・論文
研究課題等
『子どもの問題ケースブック ―児童福祉相談・援助事例集』 (共著 中央法規 1994 年)
『軌跡 ―三重県立国児学園 90 年史―』 (編・著 自費出版 1998 年)
『きみが必要だ ―非幸少年と共に生きて―』 (編・著 自費出版 1999 年 10 月)

ゼミ概要
はじめに

 私は非行少年の再教育施設である教護院 (平成 10 年4月1日, 児童福祉法の改正により児童自立支援施設に改称) 三重県立国児学園に 37 年間在職し, 約 900 人の少年少女たちとの出会いがあったが, 平成 10 年3月退職した。 ここでは, 少年たちの寮舎に夫婦の職員とその家族も住み込み, 暮らしを共にする小舎夫婦制と, 公教育に代わる教育 (準ずる教育) を取り入れており, 23 歳の独身であった私は母親と4年, 結婚して妻と 33 年間ペアを組んで苦楽を共にして来た。
 児童自立支援施設のルーツは古く, 明治 33 年の感化法誕生による不良少年収容施設, 感化院である。 その後, 昭和9年に少年教護院 (教護院) となったが, 昭和 22 年の児童福祉法制定迄は単独法であり, 児童相談所も無かった時代に, それに代る機能も果たして来た。
 現在全国に 57 施設あり, 2施設を除けば総て国公立で, それぞれが約 90 年の歴史を持ち, 他の児童福祉施設や少年院よりも老舗であるにもかかわらず, その機能が正しく理解されていない。
 今回の法改正前も, 中央児童福祉審議会の専門委員会で, 児童自立支援施設に改称するに伴い, 従来の 「不良行為をなし, 又はなすおそれのある児童」 の他に, 「環境上の理由で生活指導等を要する児童」 を加えて検討しているとの情報から, 不登校児を抱える保護者達が騒ぎ出し, 厚生大臣に公開質問状を出した。 マスコミも文部省見解を好餌にして批判的に報道した。 なかには, 児童自立支援施設に対し, 「登校拒否児は強制収容所にブチこまれる!?」 の大見出しで特集を組んだ週刊誌もあるなど, この施設が不良少年や非行少年を対象として来たことによるスティグマを改めて強く実感させられた。
 一方, 学校教育では手に負えないとして, その代替的機能も果たして来たにもかかわらず, この施設は教育史にも何ら位置づけられていない。 私の推計ではこれらの施設から 14 万人以上の少年少女が巣立っており, これは決して生半可な数字ではない。

内容と方法

 以上のことから児童自立支援施設が, 私の人生の総てであるとも言えるわけで, この窓から少年達の目を通して見た学校教育のあり方, 親子関係のあり方, 施設処遇のあり方。 さらには自立とは何か, どのようにサポートするのが望ましいかといったことが, ゼミの中心テーマとなる。
 なお, このゼミは 11 年度迄 「司法福祉」 として行われて来たものであるが, テーマが変わっても 「非行」 を対象としていることから, 少年法とも決して無縁ではない。 現に少年法の保護処分の決定によって家裁から児童自立支援施設に入所する事例, 或いは施設側からのぐ犯通告により審判に付す事例などもめずらしくない。 従ってこの領域も欠かすことはできない。
 またこれ迄同様, 一部の加藤幸雄ゼミに合流させていただいて少年院や, 少年鑑別所, 家庭裁判所, 保護観察所などの見学も実施することになろう。

〈3年生〉
1. 文献や資料による基礎学習
とは言うものの児童自立支援施設に限って言えば, 残念ながら, 出版物は殆ど無く, 資料の入手は極めて困難である。
イ 非行問題・全国児童自立支援施設協議会機関誌 207 号まで
ロ 全国教護院運営実態調査 同上で隔年実施 非売品
ハ 少年教護−法理と実際 菊田幸一著 成文堂
ニ 少年棄民−施設収容少年の人権 菊田幸一著 評論社
ホ 俺たちの少年期 山口幸男外監修 95 年 法政出版
ヘ 教護院の子どもたち 花島政三郎著 94 年 ミネルヴァ書房
ト  司法福祉の焦点 加藤幸男外編著 95 年 ミネルヴァ書房
イ〜ニ私の手持ちが各1冊ある。 ホ〜ト大学図書館に所収。
2. 見学や実習による体験的学習
岐阜県・三重県・愛知県・名古屋市の4カ所の児童自立支援施設に児童養護施設 (「養護原理」 としては共通項が多い) も含め希望があれば考える。
3.
3年次は, 広く児童問題に関心を持つ意味で, 日常の新聞報道等に目を向け, スクラップを したり, 関係書物を積極的に読んだり, ゼミの場で議論することを心がける。
〈4年生〉

 基本的には3年生時の学習が前提になる。
  1. 卒論に向けて次のような目安を置きたい。 5月にテーマを設定し, 遅くても6月には具体的作業にかかれるようにする。
  2. お互いがテーマを共有し, 論議を重ねながら内容を深めるための工夫 (例, 要点を記し, 事前に配布するなど) がほしい。
  3. 後期スタートの4週間で, 卒論の進捗状況等を含めた中間発表を求めたい。

使用テキスト 担当教員からのメッセージ
加藤幸男ほか 『司法福祉の焦点 ― 少年司法分野を中心として ―』 ミネルヴァ書房, 1995 年
小野木義男 『軌跡 ― 三重県立国児学園 90 年史 ―』 自費出版, 1998 年
小野木義男 『きみが必要だ ― 非幸少年と共に生きて ―』 自費出版, 1999 年
 ゼミは演習形式の授業で, 課題に対し発表や討論が中心となる学生主導の場。 そういう積極的な参加意識のある人を求めます。 欠席したら損をした気分になるような人と人の絆と, 共感的な雰囲気をあなた達の手で作ってみませんか。


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