CODE 128 担当教員 前 田 由紀子
テーマ 幼児から思春期までの子どもの心の
発達とその援助を考える
著書・論文
研究課題等
著書等
「今なぜスクールカウンセラーなのか」 ミネルヴァ書房 (共著)
「学校という有機体との出会い」 (こころの科学増刊スクールカウンセラーの実際)
研究課題
発達臨床・学校臨床・地域心理臨床

ゼミ概要
<内容・方法>

  「臨床心理士」 として, 保育園のカウンセラー・児童相談所の心理判定員・乳幼児検診の発達相談・小/中学校におけるスクールカウンセラー等の職歴を経てくるなかで, 多くの子どもたちとその家族に出会い, 多くのものを学ばせていただいてきた。
 特にスクールカウンセラーとして学校臨床の体験を深めるにつれ, 個別の心理療法を否定するものでは全くないが, 家族をはじめ, 保健センター・保育所・幼稚園・学校・地域の児童センター等が, 子どもたちの心的発達を育む器として十全に機能し始めたときには, 従来の心理療法以上の大きな効果が上がるという確信を深めつつある。
 社会学者の多くが声高に述べているように, 大きく揺れ動き, 非常に不安定な状況にある現代の社会では, 当然そこの中で育つ子どもたちの心的発達のプロセスも, 影響を強く受けざるを得ない。 これまで培ってきた心理学からの知見が全く無用になると言うことではないが, 新しいパラダイムが要求されていることは明らかである。 個々の子どもの理解に努めると共に, この揺れ動く社会のまっただ中でどうその子どもを育んでいくネットワークを築けるか?家庭をどれだけ, どのように支援できるかの方策を探っていく力が, 必要とされている。
 実際に福祉の現場で子どもとその家族と関わるのは, まさにあなた自身であると言うことをここで改めて考えて欲しい。 福祉の現場では心的な傷を抱えている人は多く, 直接的にそれらの人々に関わる者としては, 自分自身気づかなかった 「隠されていた自分」 が引き出されることも少なくない。
  「自分」 というフィルターを通してしか, 他者を観察し, 関わることはできないし, 「自分」 の身体を通してしか, 相手とコミュニケーションし合うことはできない。 「知識」 が 「体験」 にしっかりと裏付けられたものでなくては, 現場でその 「知識」 は実際に役立つことはない。 自分がどのように外界を認知する傾向にあるのか, 自分は自分の意志や感情を相手に伝えるために, 的確に表現することができているのか? そうした 「自分を知る」 ことなしに, 他者への援助活動を行うことは難しい。
 また福祉の現場で仕事をしていくのは, 一人でできるものではない。 あなたと共に働くスタッフとの協力, スタッフ間の信頼関係無しにはあり得ない。 「仲良し」 であれば良いというものではなく, どのような役割を担い合うことがより援助的であるのか, という視点を, お互い十分なコミニュケーションで相互に話し合う必要がある。
 以上のように考えるので, 当ゼミでは 「自分を知る・自分を表現する」 体験学習を重要な学習要素であると考えている。
 具体的には, 3年前期では自分自身の対人関係の持ち方や, 自らの行動を見直す作業を体験的に学ぶことを中心に据える。 さらにはサブゼミでの演習等を通じて, ディスカッションを深めたい。 研究テーマをこちらから与えることはありません。 自分自身の興味・問題意識を掘り起こし, 明確化, 具体化していく力を育てることを目指している。 関連のある研究会, 参考文献等も紹介しますので自分自身の関心に近いところで自主的・積極的に学習を進めていって欲しい。
 3年後期では, 各自 (あるいはグループで) 研究テーマを絞って学習を進め, 4年次の卒論につなげていく。

<履修上の注意>
  • 「自分を知る」 とはいえ, ゼミは 「自己啓発セミナー」 ではありません。 福祉職として援助活動を行うための体験学習ですので, 実習・サークル活動等を通して, 実際に子どもやその家族, 援助スタッフらと関わる体験が資本となります。 できればこれまでにそうした体験があることを希望しますが, そうでない場合はそのような機会を積極的に作るだけの意欲と時間の確保が必要条件です。
  • 適応指導教室でのボランティア, 地域の保健センターでの発達相談や, 子育て支援事業におけるボランティアなどを紹介しますので, 積極的にそれらに参加していただきたい。
  • 春休み中に参考文献の中から1冊以上を読み, その感想文を第1回のゼミに持参して下さい。

使用テキスト 担当教員からのメッセージ
   ゼミの中で十分に自己表現をし, 言語的コミュニケーションがスムーズに成り立つことがまず持っての課題となるようです。 討論・議論の楽しさが味わえるゼミにしていきたいと思ってます。


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