CODE
125
担当教員
柿 沼 肇
テーマ
子どもの現実と 「学校づくり・学校改革」 の課題
著書・論文
研究課題等
〔著 書〕
『新興教育運動の研究』 (ミネルヴァ書房)
『現代日本の教育状況』 『近代日本の教育史』 (ともに教育史料出版会)
『戦後日本の教育理論』 (共編著, ミネルヴァ書房)
『ゼミナール活動の発展をめざして』 (日本福祉大学生活協同組合),その他
ゼミ概要
〔目的・内容〕
今日の日本の教育は, 一面では高度に普及し, 大きな発展を遂げているということが出来ますが, 同時にその質の面からいうとかなり憂慮しなければならないような状況にあります。 このような現実を 「教育の混迷」 とか, 「学校の荒廃」 というような言い方で切って捨てるように表現することにはやや躊躇を感じざるを得ませんが, それにしても子どもたち, 若者たちの中に生まれているさまざまな問題状況や, 想像を絶するような行動を直視し, そのうえに 「どうにもなりそうにない」 教師たちの姿やその置かれている状況等を重ね合わせてみますと, 確かに事態は深刻さを増しているといわないわけにはいきません。 これまでも 「いじめ」 や校内暴力, 登校拒否や中途退学, あるいは青少年の自殺などといった事柄が広く社会問題化してきましたが, 近年は, 突然 「プッツン」 し 「キレ」 てしまう子どもたちや, 授業さえ成り立たないいわゆる 「学級崩壊」 などといった現象も見られます。
いずれにしても, 今の学校は多くの子どもたち・青年たちにとって決して居心地のよいようなものになっているとはいえません。 テストの順位や偏差値を上げることに血道をあげるか, さもなければ部活にでも没頭するかしない限り, 学校に行くことに張り合いを見出すことがきわめて困難になっています。 こういった状況が広がる中で, 子どもたちばかりでなく, 親たちの中にも, またひろく一般の人たちの中にも, 現在の公教育制度下の学校や教師に 「絶望」 してしまっている人たちさえ生まれてきています。
しかしながら本来, 教育, とりわけ学校教育というものは, 子どもや青年 (を主として) の知的・身体的な能力や, 技術的・芸術的諸能力, また道徳や自治=統治能力といった, 人間にとって, あるいは国民にとって必要な諸能力の発達を図り, それを通して彼らの人格形成や幸福追求に寄与すべき役割を担っています。 それ故に, 本当は 「国民の教育に対する思いは熱く, 学校や教師たちに対する期待はすこぶる大きい」 といわなければなりません。 そして, 事実, こういった人々の願いや期待に応えるため, あちこちの地域や学校・教室の中で困難に打ちひしがれてしまわずに地道な努力を続けている人たちがいます。
今年度のゼミは, 以上のことを念頭に入れて, さまざまな困難の中, 子どもたち・青年たちの発達のために奮闘している 「学校づくり」 の活動に焦点を当て, そこから 「学校の再生」 の可能性や, あるいは 「新たな創造」 へ向かっての取り組みなどについて学習, 研究したいと思っています。 言葉を変えていえば, 現実の学校 (教育) が陥っている困難や批判されても止むを得ないような状況の確認, つまり 「学校批判」 や 「教師批判」 という側面にのみ目を奪われるのではなく, むしろその中で展開されている積極的な営みに重点を置いて学びとっていこうということです。 もう少し大風呂敷を広げるとすれば, 次の世紀の学校 (教育) はどうあらなければならないか, それに携わる人々の仕事や力量として何が求められるのか, そのためには現在の何をどのように変えていけばよいのか, などといった事柄について検討してみようというわけです。 「鋭い現実認識に立って, 学校の未来を展望する」 などと少々しゃれた表現を使ってみてもよいでしょう。
いうまでもなく21世紀の社会は 「少子化・高齢化」 の進んだ社会です。 周知のように, 世上ではそれに対するさまざまな 「ゆがみ」 や 「ひずみ」 の指摘がなされています。 が, 私たちは事態をもう少し積極的にとらえていく必要があります。 すなわち 「一人ひとりの人間が大切にされる社会, 子どももお年寄りも障害者もそれぞれがかけがえのない存在として, 真に人間らしい生き方ができるような社会」 それが私たちの求める 「高齢化・少子化社会」 の内実だ, というようにとらえかえすということです。 私たちの 「学校づくり・学校改革」 研究もまた, そのような社会の実現を目指す取り組みの一部であり, その内容を豊かにする営みの一部だということが出来ます。
時のたつのは早いもので, 柿沼ゼミの開設以来, 既に30年余の年月が過ぎ去りました。 これまでのゼミ活動を総括し, 今後の展望をどう切り開いていくかを探ることも今年度の重要な課題の一つです。 また卒業生との交流や, ゼミにふさわしい適切なイベントを計画・実施したいと考えています。 力を合わせて楽しく学びがいのあるゼミにしたいです。
〔履修上の注意〕
このゼミではテキストの学習のほかに, ビデオ (たとえば映画 「学校」 等) を活用したり, 実際の学校見学などを実施したいと思っています。 またゼミ合宿やコンパなども重要な活動として位置付けています。 積極的な取り組みを期待します。
履修希望者は 「希望票」 にこれまで読んだことのある教育関係文献を1冊だけ記入しておいて下さい。
使用テキスト
担当教員からのメッセージ
日本子どもを守る会編 『子ども白書』 2001年版 草土文化, 2000年
その他
現在の教育界は福祉と教育・保育をともに学んだ人材を必要としています。 逆に福祉の現場は教育的知見を必要としています。 教育に関心のある人だけでなく, 福祉に関心を抱く人もこのゼミに積極的にとびこんできて下さい。
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