CODE 123 担当教員 山 本 秀 人
テーマ 乳幼児期の発達研究
― 運動発達 (学習) と認識発達を題材に ―
著書・論文
研究課題等
著書
『乳幼児の体育あそび』 (分担執筆) 草土文化, 1999年, 『子どもの身体をつくる食・運動』 (分担執筆) 新読書社, 1997年, 『幼児の運動指導法』 労働旬報社, 1995年
論文
「運動会をバネに自分自身を発達させる子どもたち」 『ちいさいなかま』 全国保育団体連絡会編, 草土文化, 1999年10月号, 「体育・運動をめぐる発達−幼児期の認識発達を考える−」 『たのしい体育・スポーツ』 学校体育研究同志会編, 1996年9月号, 「発達と幼年期の体育−幼児期の体育の学習内容をどう考えるか−」 『たのしい体育・スポーツ』 学校体育研究同志会編, 1995年7月号
研究課題
乳幼児期の運動発達 (学習) と認識発達の関連について, 幼児期に適した運動教材について

ゼミ概要
〔内容・方法〕

  「すべての子どもに豊かな文化を伝えたい」 。 多くの保育所では, このような想いを抱きながら日々の保育実践を展開しています。 つぎの時代を担ってくれるであろう子どもたちが豊かな文化に触れ, さまざまな能力を身につけていくためには, 日々の保育活動や保育者の働きかけが重要となり, 運動や体育の取り組みにおいても, 運動文化を保育の対象とした実践が求められています。
 乳幼児期の子どもたちは, 歩いたり・走ったり・跳んだり・蹴ったり・投げたりという基礎的な運動能力, さらには文化的素材である 「マット運動」 「とび箱運動」 「鉄棒運動」 「ボール運動」 「なわ運動」 「リズム運動」 「竹馬」 「コマ」 などがもっている教材固有の運動技術の獲得など, 意識的・能動的な活動によって多様な運動発達を遂げていきますが, その背景には認識活動を介在する運動学習が存在しています。
 しかしながら他方では, 「運動ぎらい・体育ぎらい」 の兆候が4歳・5歳児期の子どもたちにではじめることもあります。 そこには, 「できる−できない」 「うまい−へた」 「勝ち−負け」 など, 自分と友だち, さらには友だち同士の違いについてを, 技術認識を媒介としながら客観的にわかりはじめてくることが関係しており, たとえば 「自分は運動や体育がみんなに比べてできないんだ, へたなんだ」 と思いはじめた子どもは, 保育者が何の働きかけもしないままであれば, 運動や体育の場面を避けはじめてしまいます。
 以上のような発達的特徴から, 保育所における運動・体育の実践課題として, 技術認識 (時間・空間認識) や数量認識, さらには社会認識 (ルール認識, 対人関係・役割関係) などを, より理性的・科学的な認識へと発展させていくことがあげられます。
 これまでの保育所における運動や体育実践では, 子どもたちの発達に応じた教材選択の根拠 (この教材に取り組ませることによって, 何を子どもたちに教え・伝えようとするのか) が不明確でした。 また, 「できる」 ことを子どもたちに要求しているにもかかわらず, 「できる」 ようになるための指導方法については, 十分に検討されてきてはいませんでした。 小学校で取り組まれている教材をそのままスライドさせ, 「がんばれ, がんばれ」 ということばかけだけにおわっていたり, あげくのはてには 「どうして, あなたはできないの」 ということばをかけ, できない責任を子どもたちに転嫁してはいないでしょうか。 「がんばれ, がんばれ」 と言われても, うまくできない子どもはどこをどのようにがんばればいいのかがわからないのです。 さらに, なかなかできるようにならない子どもが, 「できなくてもいいもん」 と言うことばの裏側には, 「どうして先生はできるようにしてくれないんだろう」 「〜ちゃんのようにできるようになりたいけど, どうすればいいのかわからない」 という思いがあるはずです。 「運動ぎらい・体育ぎらい」 の子どもは, もともときらいだったのではなく, なんらかの原因によってきらいにさせられてしまうのです。
 そのような子どもたちをうみださないためにも, また子どもたちの運動発達 (学習) を保障していくためにも, 発達に応じた保育活動が展開されているかどうかが問われてきます。 つまり, 一部の限られたエリートを育てようとする早期教育のように, 小学校以降の教科内容を詰め込むのではなく, あくまでも乳幼児期固有の運動発達 (学習) のすじ道や認識発達の特徴をふまえたうえで, 各年齢で子どもたちに認識させたい対象 (わからせたい内容) を, 保育者側が科学的・系統的に選択し教材化し, 保育活動を展開していく必要があるのです。 すべての子どもが 「できて (技能習熟) 」 「わかる (技術認識) 」 力をつけ, 仲間関係を広げていける保育実践が求められているのです。
 本ゼミナールでは, 運動発達 (学習) と認識発達の関係を題材にしながら, 乳幼児期の発達について, 以下の柱にそって共に考えていきます。
  1. 子どもの発達にとって運動の果たす役割
  2. 保育所における体育の役割 (子どもたちに運動・体育で何を教え・伝えるのか)
  3. 教材研究
  4. すべての子どもが 「できて・わかり・おもしろい」 と思えるような指導内容とその方法のあり方
 3年次には, 以上の4点を, 文献学習・ゼミでの実践・保育所見学・研究会 ( 「保育問題研究会」 「全国保育合同研究集会」 「学校体育研究同志会全国大会」 ) への参加を通して学習・研究し, サブゼミ単位によるゼミ論文をまとめます。 4年次には, それぞれの関心に基づき研究テーマを設定し, 卒業論文を完成させます。

〔履修上の注意〕
  1. 個人およびサブゼミによる事前の学習を前提としてゼミナールを展開していきますので, そのための努力を惜しまないことを望みます。 さらに, 合宿 (夏, 春) は,全員参加を原則とします
  2. 研究会 (6月および8月) への参加を予定しています。 最低1つには必ず参加してもらいます。
  3. 保育者をめざす学生はもちろんですが, そうではなくても子ども・保育・教育に関心のある学生は大歓迎です。
  4. 保育所における運動や体育をゼミナールの内容としているため, 必要に応じ乳幼児体育の実技にも取り組みます。 運動・体育が大好きな人はもちろんですが, いまだに運動ぎらい・体育ぎらいの人は, 特に大歓迎です。 ゼミナールの活動を通じ, 運動ぎらい・体育ぎらいに別れを告げましょう。

使用テキスト 担当教員からのメッセージ
特に定めません。 ゼミナールの進行に応じて指示します。  とにかく, 学習もあそびも全力投球しあいましょう。


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