CODE 120 担当教員 秋 野 勝 紀
テーマ 絵本と児童文学
著書・論文
研究課題等
著書 『生活づくりと保育の創造』 (駒草出版) , 編著 『たしかな力を育てる』 (明治図書) , 共著 『人間らしさを育てる集団づくり』 (ささら書房) , 共著 『幼児保育学の初歩』 (青木書店) , 映画監修 『みんなでうたう太陽の歌』 (わかば社) , オートスライド製作参加・出演 『やさしくつよい子に』 (共同企画)

ゼミ概要
 幼いときに読んでもらった絵本の, どんな記憶をあなたはよみがえらせることができますか。 それは誰にものぞかれたくない, 壊さずにそっととっておきたい世界でもありましょう。 自分の力で読んだ児童文学は, 空想, 冒険, 願望といったことを, 想像の世界でどんなにふくらませてくれたことでしょう。 そんな絵本と児童文学でつくった子どものときの世界を 「あれはなんだったんだろう」 と振り返ってみたくありませんか。 絵本と児童文学の学習・研究は, そこから出発します。
 ところで日本の絵本と児童文学の出版点数は, 他国に例をみないぐらい多いのです。 絵本は, 保育には欠かせないものになっているし, 親が子どもに読みきかせをすることもめずらしいことではなくなっています。 作品として国際的に評価の高いものも生み出されています。 それにくらべ児童文学は, 出版点数の多い割には不振が続いています。 児童期の子どもをめぐる生活や文化状況からだけではなく, 作品固有の問題からも検討を加えなければならないでしょう。 絵本と児童文学の学問研究は, とかく外国を対象にしがちですが, 日本の大学にも児童文学専攻が設けられるぐらい自立の道を歩みつつあります。 しかし, いっそうの裾野の広がりと時間が必要のように思われます。 とりわけ現場の人による作品研究と評価活動が, 求められているのではないでしょうか。
 このゼミでは, 次のような領域を掲げて進めて行きます。
(1) 絵本の読み聞かせ
 保育現場で, 子どもに絵本の読み聞かせの体験をします。 子どもに伝えたい絵本のメッセージをどのような声で表現することが望ましいか, 技術の開発も必要になるでしょう。
(2) 作品研究と評論
 作品の持っているテーマの読み取りは, 作品分析によって可能になります。 作品分析の手法を獲得し, 作品の内側に込めている作者の意図を読み取れるようにしましょう。 また, たとえば多くの人に読み継がれている 『さるかに』 の民話は, 10点を越える絵本が出版されています。 これらを比較すると作家の意図と出版社の絵本作りの考えを読み取ることができます。
(3) 作家研究
 斬新なアイデアの絵本作家として人気のある五味太郎の作品を集めてみると, 氏の絵本論が見えてきます。 そんな作家の世界に分けいるのもおもしろいものです。 日本の作家としては作品の多い古田足日でもいいし, 先行研究の多いサン=テグ・ジュペリの 『星の王子さま』 それともエンデの世界に挑戦してみますか。
(4) 絵本の制作, 児童文学の創作
 自分の力でオリジナルな絵本を, つくってみましょう。 また, 自分の小学生のときの生活体験を素材に, 児童文学をつくることにします。 創作の苦手な人でも評論などの理論的力をつけることになるし, 得意な人はコンクールへの出品につなげていきましょう。
(5) 福祉関係の絵本と児童文学の研究
 社会福祉専攻ならではの立場から, 福祉関係の絵本と児童文学の作品研究をするのもいいのではないでしょうか。 障害児 (者) をテーマにした絵本と児童文学の出版はすでに50冊を越えているし, お年寄りをテーマにしたものも20冊ほどの作品があります。 しかしこのジャンルの創作と作品研究は, これからの開拓が待たれるといっていいでしょう。

 ゼミの初期には, 児童文学の概論を学ぶためにテキストを使用したり, ビデオにより外国人の絵本の作家研究をします。 またゼミ運営に必要な司会, 報告, 意見発言, 討論などの技法の獲得を重視します。 さらに気軽に文章を書けるようにするために, エッセイ (400×3) を年間10本以上書くこととします。
 ゼミは知の世界のおもしろさを学ぶところですから, テーマ意識を持ち自己学習が基本です。 様々な視点を学んで相対化させ, オリジナルな考えを作り上げて行きましょう。 そのためにも4年生の前期までに学ぶ量の目安を示すと, 次のようになります。

  • 絵本50冊の作品論を展開できる。
  • 児童文学を積んで150センチを読む。
  • 作品論や作家論の本を10冊以上読む。
  • 絵本論と児童文学論の理論書を各々5冊以上読破する。
  • いくつか出版されている絵本または児童文学の雑誌のなかから, 1冊を定期購読する。

使用テキスト 担当教員からのメッセージ
『絵本の森へ』 松居 直著 日本エディタースクール出版部
『はじめて学ぶ日本児童文学史』 鳥越 信編著 ミネルヴァ書房
  1. 子どもと保育・教育に関心があれば, 絵本と児童文学についての知識がなくても歓迎されます。 読書と文章を書くことが苦痛でも, 向上心さえあれば可能性は開けてきます。
  2. 子どもの心をいつまでも持ち続けることは大事ですが, そこに留まっていては絵本と児童文学を学問対象にすることに行き詰まります。


(C) Copyright 2002 Nihon Fukushi University. all rights reserved.
本ホームページからの転載を禁じます。