CODE 111 担当教員 田 中 嘉 之
テーマ 障害児・者の生活福祉研究 
― ともに学び, ともに生きる ―
著書・論文
研究課題等
(テキスト)
「障害者福祉論」 社会福祉士対策講座 (平成13年度) 日本福祉大学、2001年9月
(論文・執筆一般)
「障害児教育と生きる力」 東京の障害者教育史研究会 『会報』 No.13, 2001.8, p8〜9
「障害者の行動基盤整備の視座と課題−災害と障害者」 リハビリテーション (鉄道身障者協会) 410、1999.1、p.23〜27
「成人障害者と健康」 リハビリテーション(鉄道身障者協会)403、1998.5, p36〜38 等

(研究課題)

  1. 障害児・者の生活と行動基盤整備について
  2. 子どもの権利と教育福祉問題について
  3. 社会福祉実習教育のあり方について

ゼミ概要
(1) ねらいと視点

 このゼミでは, 障害者問題の現状や, 「ともに学び、生きる」 障害者福祉援助の課題と展望について, 生活の視点で福祉のあり方を問う 「生活福祉」 の視座から総合的・体系的に学び研究する。
 障害者の 「完全参加と平等」 を理念とした国際障害者年から20年。 日本でもようやく, 発言し, 行動し, 社会環境を変革し, 堂々と社会参加を遂げる障害者が飛躍的に増え, ノーマライゼーションやバリアフリーといった考え方も, 市民権を得られるようになった。 障害を持つ本人の生き方や自己表現 (文化・芸術等) を通して, 障害の有無を越えた 「等身大の人間」 同士の共同・連帯の輪も広がっている。 私はそこに, 障害を持つ人の生活を切りひらく現代的な可能性と発展方向を見いだしたいと思う。
 一方, わが国の障害者施策は, 社会福祉事業法や各障害種別福祉法 「改正」 の中で, 2002年度をもって国の 「障害者プラン」 の目標年次を終え, 03年4月からは, 社会福祉サービスの形態が, 利用契約制度 (支援費支給方式) へと変わる, 大きな転換期を迎えている。
 障害を持つ人の生活実態はどうだろう。 ゼミ生と共に学んだ, ある最近の調査資料は, ノーマライゼーション, バリアフリーの華やかな掛け声の一方で, 障害者本人が, 外出, 就職, 結婚, 文化活動への参加等 「障害のためにあきらめたり, 妥協したこと」 が, 様々な生活場面で数多くあることを示していた。 この人は, 障害が重いのだから, この程度の生活が保障できれば十分だ, などという 「障害者向き」 の生活水準や生き方があるはずがないし, 誰しも 「可能性を求めて輝きたい」 と願っているはずだ。 そのことは, 脳性まひ2級で, 車いすで生活をしている私も, 例外ではない。 私はいつも, 困難や苦悩が多い現在であっても, あきらめや妥協の連続ではなく, なんとか自分が納得のいく生き方をしてやろうと思って, これまで生きてきた。 私は, ゼミにおいて, 障害を持つ一人の人間としての様々な想いや実体験を, きちんと 「科学」 にし, 君たちに伝え, 共有していくことが, ねがいであるし, 課題だと思っている。
 今後の障害者福祉制度 「改革」 は, 障害者本人・家族の自己決定の尊重を基調とするが, 私はその人や家族の生活と行動基盤の強弱, それに福祉サービスを利用する能力と条件の有無等の諸要因が, 障害者間に選別と優先序列化を持ち込み, 個別性と言わない 「格差」 を一層拡大させる方向に進むことが心配だ。 社会福祉は, 本来このような 「格差」 を埋めることにその役割があるが, 社会福祉における自己決定の過度の強調は, 「格差」 を個人の責任に帰し, 容易に不平等を容認する論理にすり替わる可能性をはらむ。 即ちこのままでは 「福祉」 の名によって, すべての障害者の生活と権利が大きく歪められ, 後退することになりかねないのである。
 本ゼミでは, こうした新しい制度 「改革」 のシビアな動向をもしっかりふまえ, しかしそれに一方的に流されるのではなく, 少しでも障害を持つ人や家族の立場に立ち, かれらが何を願い, どう生きようとしているのか, という点を大切にし, 障害者福祉のポジティヴな可能性や, 今後のあり方について, みんなで丁寧に検証していきたいと考えている。

(2) 進行方法・計画
<3年次前期>
 テキストを軸に, 新聞記事やビデオなども活用して, 障害者福祉の現代的視角と諸問題についての基礎がため的研究をすすめる。
※社会福祉士国家試験における 「障害者福祉論」 の枠組みを考慮して計画する。
<夏期休暇>
 
各自が課題関心をある程度絞り, 分野を概観することに資する目的で課題レポート (8000字) を課す。
※このゼミでは, 統一的な形態でのゼミ実習はおこなわないが, ゼミ生が社会福祉士実習や課外実習を障害児・者分野で行い, その成果を, レポートや後期からの研究に生かすような場面があれば望ましい。
<3年次後期>
 
遅くとも後期中盤からは, ゼミ生の興味関心を尊重したテーマ領域別グループ研究をすすめる。
(参考:2001年度では, 障害児教育, 障害者の差別と人権, 聴覚障害者とコミュニケーション, 障害者の自立支援の4つのグループ編成で研究報告と討議が進行中)
※原則として学生の取り組みたい内容にそって, サブゼミ編成を行い, 運営する。
※演習内容には他にレジュメ作成や発表・討論, レポート・論文執筆の技法, および文献・資料検索の方法の学習等を含み, 学生の研究技術の習得を重視する。
※年間を通じて数回, 「ミニレポート」 (各1200字) を提出してもらう。
<4年になる前の春休み>
 
各自がとりくみたい 「専門演習論文」 (卒論) のテーマと意義, 論文で明らかにしたいことなどを書いた研究計画書 (プレレポート) を作成してもらう。 テーマ設定は障害児者分野なら全く自由。 もしゼミ生の自主的な発案と合意によって, 可能な場合には, 卒論テーマ発表と交流をかねた合宿等も, この時期に検討する。
<4年次> (03年度)
 
卒論計画に基づく論文指導ゼミとし, 各自またはグループで研究を進め, 論文を執筆する。 論文の形態は個人論文でも共同論文でもよいが, 個人論文の場合, 400字詰め原稿用紙にして50枚程度を分量の一応の目安とする。 「論文の書き方」 についての詳細なガイダンスを軸に, ゼミとして研究の視点や内容, 方法をお互いに検討しながら展開していく。
 ゼミナールは自分の力を付けるためにある。 実習や就職活動, 資格取得準備等の厳しさにめげず, 4年次の論文執筆にチャレンジを!2年間ゼミを履修し, 途中放棄しない決意と覚悟を固めた人に参加して欲しい。
履修上の注意
  1. 出席をきわめて重視する。 年間を通じて8回以上欠席した場合は, 無条件で不合格として扱う。
  2. 無断欠席はしないこと。 特に, 報告を担当しながら無断欠席した場合は, ゼミ放棄として扱う。
  3. 「希望票」 には, ゼミ選択の動機, 現時点での自らの問題関心と取り組みたいテーマ, 卒業後の進路希望 (社会福祉・精神保健福祉士, 教職, 保育士など資格取得の希望も明記) , 自己アピール等 「あなた」 がよくわかるように書いて下さい。
  4. 所属決定者は, ゼミ参加の要件として, 自分の関心に近い, 障害 (児) 者福祉・教育関係の文献を一冊選び, 読後レポートを2000字 (大学指定の表紙をつけ, A4横書, ワープロ使用) にまとめ, 4月の初回ゼミの時に提出すること。
    (注意:表紙に, 選んだ本の著者名 『題名』 出版社名, 出版年の順で明記すること。 )

使用テキスト 担当教員からのメッセージ
  1. 高山直樹編著 『障害のある人々の生活と福祉』 (講座・私たちの暮らしと社会福祉第4巻) 中央法規, 2000年。
  2. 障害者施策研究会編 『よくわかる障害者施策2001年版』 中央法規
    注)2冊とも開講前までに準備して4月第1回のゼミに持参してください。 学習計画を立てます。
    ※なお本学図書館には, 本ゼミ生による論文集 『現代の障害者福祉』 (1998年度) , 『障害児・者のいのち・暮らし・生きがい』 (1999年度) , 『いのち・こころ』 (2000年度) があるので, 希望者は手に取って, 学習分野の参考にして下さい。 ゼミ生が取り組むテーマの幅の広さと自由度を知ることができるでしょう。
 このゼミは 「和やかだけどやる時はやる, 勉強熱心なゼミ」 で,
担当教員 の印象は, 「写真だと怖そうだけど, すごく楽しくておもしろい先生」 (ゼミ生評) だそうです。
お互いに楽しく学びがいがあるゼミを創ろう!。


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