CODE
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担当教員
大 泉 溥
テーマ
障害者の福祉と実践のあり方を考える
― 生活・自立・ノーマライゼーション ―
著書・論文
研究課題等
『障害者の生活と教育』 民衆社 1981年
『障害者福祉実践論』 ミネルヴァ書房 1989年
『障害者の生活教育』 法政出版 1994年
『教育と保護の心理学』 全48巻・別冊解題5冊 クレス出版 1996〜2001年
『生活実践の記録をつくる』 寄宿舎教育研究会 1999年
ゼミ概要
〔内容・方法〕
障害者問題は福祉の根幹にかかわる重要な課題です。 私たちの先輩はその時代の人間観や社会観, 発達観の根本を問いただしながら 「福祉」 という名に値する実践を切り開いてきました。 そして, 近年の急激な社会変化の中で中途障害者が激増する状況に対峙しながら, 障害のある人たちも私たちと同じ人間なのだという人権意識を高揚させてきました。 今日の障害者問題を支える思想・理念のひとつは障害者の 「自立」 であり, 社会的共生です。
障害者の 「自立」 は抽象的な問題ではなく, 生活と援助の質にかかわる現実問題です。 「親亡き後の不安」 を訴える親・家族ともども, 今日から明日への展望を見通すことができるかどうか。 そうした意味でも, 障害者の 「生活」 は本人自身のものですが, 同時に, 福祉の存立にかかわる実践の課題でもあります。 なぜなら, 「生活」 の問題を抜きにした社会福祉はまやかしの援助でしかないのですから。
施設近代化の象徴だった大規模施設中心主義を批判する形で登場した 「ノーマライゼーション」 はわが国でも 『国際障害者年』 以来, 福祉政策の基本理念となってきています。 しかし, 日本ではコトバだけが吹聴されている感があります。 ノーマライゼーションとは障害者をノーマルにすることではなく, 障害者の生活にかかわる社会のあり方をノーマルにすることです。 そこでは, 同じ人権回復でもリハビリテーションとは違います。 地域や施設での福祉実践はどうなるのか, どうするのかを含めて, 障害者の自立や生活の問題を科学的に検討していく必要があります。 障害者の自己実現を支える本人の自己認識 (障害者の受容を含む) と自己表現をいかに大切にし, またその自己決定をより確かなものとしていくのかが重要な課題です。
生活自立とノーマライゼーションは“一つの課題の二つの側面”です。 施設福祉と地域福祉を別々にしてはならないし, 一般論ではどうしようもない。 そういう現実があります。 障害者やその家族の実態を直視して福祉実践のあり方を考えていく力が必要です。 そうした理論的・実践的な力量をつける訓練の場, 課題に応える専門的自己形成の場となるようなゼミナールでありたいと考えています。
このゼミでは以上のような問題意識のもとに, 文献学習やゼミ独自の実習や見学などにもとりくみ, 障害のある人たちの過去・現在・未来を私たちと同じ人間の問題として研究し論議していきたい。 その際のキーワードが 「生活」 「自立」 「ノーマライゼーション」 だということです。
三年次の前半は, テキストによって基礎的・基本的な学習を行い, 後半には研究の方法を学ぶという課題を含めたゼミ活動にとりくみます。
四年次には, 学生生活4年間のまとめにふさわしい 「卒論」 の完成に向けたゼミ活動 (学生生活の総括と明日への羽ばたきとなるゼミ) を展開できたら…と思っています。
〔履修上の注意〕
専門の演習なので 『障害者福祉論』 の単位取得が一応の前提となりますが, それ以上の学習程度やボランティア経験などの有無は問いません。 ただ, 自分は何をやりたいのかをよく考えてほしい。 私の立場からは問題意識が明確で 「中途放棄」 はしない覚悟での希望票の提出を期待します。
使用テキスト
担当教員からのメッセージ
加藤直樹 『障害者の自立と発達保障』 全国障害者問題研究会1997年
大泉 溥 『生活実践の記録をつくる』 寄宿舎教育研究会1999年
正義感と情熱のある学生を期待します。 10年後もまたゼミの仲間に会いたくなるような, そんなゼミになれば……と思っています。
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