CODE 105 担当教員 長 沢 孝 司
テーマ 新しい家族関係の形成 〜現代家族の再生を求めて〜
著書・論文
研究課題等
『愛知の労働と生活』 愛知労問研, 2001年, 『企業社会と人間』 法律文化社, 1994年
『新しい家族形成の実証的研究』 (自費) , 1994年
「大草原モンゴルの生活と家族」 , 『生活問題研究』 第5号, 1997年
「出産の前後における夫婦関係の形成」 , 『日本福祉大学研究紀要』 99号, 1998年
『モンゴルの家族とコミュニティ開発』 日本経済評論社, 1999年
『新・人間性の危機と再生』 法律文化社, 2001年

ゼミ概要
 本ゼミは, 21世紀を展望した新しい家族関係, 特にその核となる結婚と夫婦関係のあり方を解明することをねらいとしている。
 周知の通り, 社会福祉は家族のあり方と非常に強く関わっている。 すなわち一方では, 家族内に生じてくるさまざまな問題 (離婚の増大, 子どもの発達の歪み, 老親の痴呆化など) に家族内では対応が困難となり, 福祉援助の対象者が増大してくる。 そして他方では, 福祉援助の対象者に対する援助は, 彼をとりまく家族全体を視野に入れた援助が求められるようになっている。 例えば障害児や痴呆性老人の援助ひとつとっても, 彼らがどういう家族の状況の中にあり, どう対処されているかを的確に捉えて対応しなければ, 福祉援助は成功しない。 このように, 今日の社会福祉は家族に対する理解力がますます求められるようになっている。
 ところでその家族は, いま大きな変動の時期に入っている。 すなわち, 戦後の高度経済成長の時代に定着し安定していたかに見えた 「男は仕事, 女は家庭」 で子供は二人という 「幸せ家族」 のパターンは, 1970年代半ばからさまざまに揺らぎ始め, 今日ではその問題性は深刻化の一途をたどっている。 夫婦の離婚の増大, 同棲カップルの増大, 家事協力や老親扶養をめぐる夫婦の葛藤に始り, 父親不在, 母子密着と子育て不安, 家庭内暴力や不登校の増大など, 数えあげればきりがない。 今日では大半の家族がこうした問題の一つや二つを抱えているのがふつうである。 社会福祉へのニーズのかつてない高まりの背景もここにある。
 では, 今日の家族はこうした問題をはらみつつ, どこへ向おうとしているのだろうか。 それを端的に言い表せば家族の 「個人化」 ということに尽きよう。 すなわち, 「個室」 , 「個食」 , 「個電」 , 「個計」 等の言葉に表現されるところの, 個人中心主義への方向である。 かつての家族は, イエに象徴されるように, 「家族」 という集団を維持し継承することが中心におかれ, その内部で個人は軽視されがちであった。 それは60年代までの 「幸せ家族」 においても例外ではなかった。 それはとりわけ女性 (主婦) の犠牲の上に成り立っていた 「安定」 にすぎなかったのである。 そこでは, 家族形成の核であるはずの夫婦関係も歪んだものであった。 この旧い 「幸せ家族」 にNOをつきつけて, 家族の各人がまずは自己の世界を作り大切にしたいという思いが 「個人化」 の方向となって現れているのである。
 だが人々は, 家族を捨て始めたわけではない。 家族が 「安らぎの場」 であってほしい, 家族の絆を強めたいという思いはむしろますます高まっている。 「結婚しない女が増えた」 どころか, 幸せな結婚, そして子どもをもつことへの希求は強い。 では, 家族の一方での 「個人化」 と, 他方での強い希求という, 一見相反するかにみえる二つの動きは何を意味しているのだろうか。 それは, 従来の 「幸せ家族」 とは異なる新しい家族, 新しい関係で結ばれた家族への希求にほかならない。 家族のカタチは今後多様化するだろうが, 個の尊重と自立を前提にした, 共生し共育する家族へと再生しつつある。 そしてその出発点となるのが新しい結婚と夫婦関係の形成に他ならない。
 夫婦関係は, それ自体としては福祉援助の対象になることはない。 それは障害児をもつ夫婦, あるいは痴呆性の親をかかえた子夫婦という形で, 福祉援助の背後に隠れている。 だが夫婦のパートナーシップこそが家族形成の核であり, それぬきに家族の再生を語るのは空論に等しい。 新しい家族関係の形成を考えるにあたって結婚と夫婦関係に焦点を当てるのはそのためである。
 以上がこのゼミテーマの主旨であるが, 具体的な進め方については以下のように予定している。

〔2年間の全体スケジュール〕
  1. 3年次11月まで…下記のテキスト講読による基礎学習。 今日の家族動向の基礎的理解, 専門用語の習得, ゼミ運営の基本パターンの習得。
  2. 3年次12月〜4年次5月まで…各自が興味あるテーマを選び, それを順次発表し討論する (個人発表) 。
  3. 4年次6月〜11月末…卒業論文作成。 各自2〜3回のレジュメ発表ののち, 文章化し 『卒業論文集』 を作成する。  なお, 卒論を11月に終るのは, 社会福祉士国家試験対策の時間を確保するためである。 4年次から国家試験受験者はゼミ内で別途に共同学習する予定である。
〔ゼミ集団の運営〕

 ゼミナールの主旨は発表に基づく討論形式の授業である。 だからゼミの主人公は学生諸君自身である。 従って具体的な進め方は皆で話し合いながら決めたいが, 次の諸点を大切にしたい。
  1. 明るく楽しい企画や雰囲気づくりを大切にする。 ゼミは苦行の場ではない。 楽しくあってこそ学びの場となる。
  2. 自分の意見を大いに言う。 ゼミは意見を言い合って学ぶ場だから, 黙っていては意味がない。 マトはずれでもよい。 まずは言ってみることが大切だ。
  3. 約束とルールを守ること, 時間を守ること。 集団として決めたルールをいい加減にすると, ゼミは相互不信の場になる。 お互いの約束は守る誠実さが必要だ。

使用テキスト 担当教員からのメッセージ
布施晶子  『結婚と家族』 岩波書店, 1993年  私の専門は家族社会学。 結婚や家族は, 福祉にとって関係が深いだけでなく, 諸君自身が将来直面する問題でもある。 夢をもって大いに語り合いたい。


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