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104 |
担当教員 |
高 島 進 |
テーマ |
高齢者問題を素材にして, 国際比較のなかでわが国の課題の把握 |
著書・論文
研究課題等 |
『超高齢社会の福祉』
大月書店, 1990年
『社会福祉の歴史』 ミネルヴァ書房, 1995年 |
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ゼミ概要 |
〔内容・方法〕
人口の高齢化や, 経済の後退にもとづく失業の問題など1970年代の半ば以後の社会変動は, 先進諸国においても社会福祉の充実を最重要の課題に押し上げている。 ところが, 現在のわが国の政策は, 多国籍企業の支配が進む中で経済のグローバライゼイション, そしてその中でのメガコンペティッション (大競争) のなかで, 勝ち抜くためには, 規制緩和と国家の負担の軽減が至上命題とする新自由主義がはびこり, わが国にも, バブルの崩壊以後, 一方で銀行救済のための60兆円の支出, ゼネコン救済の公共事業拡大中心の景気対策の反面で, 社会保障を初め国民生活への予算カットと制度改悪が進められ, また, 国際競争が激化する中で, 生き抜くためにはリストラを徹底させねばならないと, 政府はリストラを奨励し, 大企業の中高年管理職すらの失業が社会問題化しているように失業を深刻化させ, 新卒高校, 大学生の求人が激減していることが示しているように, 国民生活の不安・困難は一層深刻になっている。 社会福祉の制度との関連では, 来年4月に実施の迫った介護保険が, いまだにサービス供給条件整備が間に合わず, 「保険あって介護なし」 の危険が解消されていないことに象徴されるが, 「基礎構造改革」 の名で, 公的責任を後退させる動きは他の領域にも広げられようとしている。 そうした重大な局面で, 打開の国民的な方向を把握するためには, わが国の現状を国際的な視野で捉え直すことがますます重要になっている。 その際, 国際的に見て, わが国が福祉国家とは認められていない (たとえばエスピン・アンデルセン編 『移行期の福祉国家』 1996年) という現実を忘れることはできない。
国際比較はわが国の現状を相対化し, 客観的に把握することを助ける。 反対に, 外国の制度・政策を見るときには, わが国の現状を批判的にできるだけ正確に抑えておくことが必要である。 本ゼミは国際比較を通じてわが国の高齢者福祉問題を深めることを目的とする。 高齢者福祉問題は先進国共通の問題である。 これまで, 主としてスウェーデンとの比較を中心にしてきたが, 今年, 旬報社から講座 『世界の社会福祉』 も出版予定されているので, 来年度はあらためてイギリス, ドイツ, アメリカなど主要国に広げて勉強してみたいと考えている。
高齢者福祉の問題は社会福祉の領域に視野を限定していては正しく理解されない。 労働=失業, 所得保障, 医療, 住宅, 雇用, 教育などを含めた, いわば, 各国における福祉国家の全体状況の中で捉えるようにできたらとの期待もしている。
3年次の前半は, 下記の拙著と私の英文原書の翻訳をテキストにして課題の基礎的理解を獲得することを目標にする。 ただし, 拙著は出版後ほぼ10年を経ているので, 介護保険の問題などその後の動向をフォローすることが必要であり, 後期には, これを含めて, 諸外国の問題を分担して取り組みたい。 4年次には, 各自テーマを絞って, 論文にまとめる。 論文テーマは高齢者福祉にこだわらない。
論文を書くことは4年間の学習の主体的な総まとめであり, 掛替えのない自信と経験を与えるものである。 就職活動や資格試験の準備とうまくやりくりして取り組んでほしいと切に願っている。 就職が厳しければ厳しいほど, みずからを鍛えることが重要である。
外国の学習・研究にはせめて英語の力があると一層の力になる。 意欲のあるものには, 個別的な指導を行いたい。
〔履修上の注意〕
ゼミの最初の時間に, 外国の高齢者福祉問題に関する著書 (たとえば山井和則 『体験ルポ:世界の高齢者福祉』 岩波新書) を一冊選び, 感想を 「書評」 の形で提出すること。 |
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使用テキスト |
担当教員からのメッセージ |
高島進 『超高齢社会の福祉』 大月書店, 1990年 |
現状がどのようであれ, 常に向上心を持つこと。 将来を切り開くのは, 自分自身をおいてはない。 |
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