CODE 102 担当教員 石 河 久美子
テーマ 異文化間のソーシャルワーク
―多文化共生をめざす福祉実践―
著書・論文
研究課題等
論文
「滞日外国人女性を支援するソーシャルサービスの必要性―フィリピン,ラテンアメリカ, コリアン女性に対する質的調査の結果から」 「日本福祉大学紀要」第99号, 1998年
「異文化適応とソーシャルワーク」「心の障害と精神保健福祉」所収, ミネルヴァ書房2001年
研究課題
異文化間のソーシャルワーク, 在日外国人支援

ゼミ概要
 異文化間のソーシャルワークとは, 耳慣れない言葉かもしれませんが, 簡単にいいますと, 異なる文化的背景を持つ人達に対応するソーシャルワーク, もしくは異文化間適応障害に対応するソーシャルワークを意味します。 
 移民や難民を積極的に受け入れてきた欧米社会では, 人種や文化的背景の異なるクライエントに対する効果的な援助方法が, ソーシャルワーク実践に導入されていますが, 居住者の大部分が日本国籍者である日本では, まだ異なる文化からやってきた人達を対象とするソーシャルワークの枠組みが整っていません。 
 しかし, 地球規模のボーダーレス現象に伴い, 国境を越えて移動する人々の数は増加し, 日本に居住する外国人の数も増えつづけています。 外国人移住労働者, 国際結婚家族, 留学生, 就学生, 難民, 中国帰国者など日本にも多様な文化的背景を持つ人達がいます。 住む国が変わることによって, さまざまな葛藤に直面し, 今まで安定していた家族関係に亀裂が生じることがあります。 また, 新しい文化や社会, 習慣に適応できないことがストレスとなり, 精神保健の問題に発展していくことも考えられます。 近年, 各地の保育所, 学校, 児童養護施設, 母子生活支援施設などでも外国人の子どもやその家族への援助が課題になり始めています。 アジアからの移住女性に対する性的搾取や日本人夫からのドメステイック・バイオレンスは, 女性に対するソーシャルワークの視点からも深刻な問題です。 
 これらの問題に対応するため, 日本においても, 文化的・民族的背景の異なる人達への援助の枠組みや手法が開発される必要があります。 私は, アメリカという多民族国家におけるインドシナ難民を支援するソーシャルワーカーとしての経験, および日本における在日外国人援助のソーシャルワーカーを経て, 現在この異文化対応のソーシャルワークの研究に取り組んでいます。 
 このゼミでは, 異文化間のソーシャルワークに必要とされる知識・技術・価値の理解と習得をめざします。 その際, 1) 日本における在日外国人の現状と, 生活や心の問題の理解, 2) 在日外国人に対する支援の現状の把握,3) 多様な文化や価値観を理解し, 受容する態度を養うことなどを学習課題とします。 
 真の多文化共生社会を形成していくためには, 外国人に日本への同化を期待するばかりではなく, 多様な文化を抱合し外国人にも暮らしやすい地域社会をめざして, 日本社会も変容していく必要があります。 日本の内なる国際化を地域で進めていくためには, 従来の社会福祉の枠組みにとらわれず, 柔軟な思考と創造性を備え,人と社会環境に効果的に働きかけることのできるソーシャルワーカーが求められます。 こうした能力は, 児童相談所や福祉事務所のワーカー, 病院のMSW, 生活施設の職員, 多文化共生の地域作りに挑む行政職員や団体職員など, さまざまな福祉実践者にとって, ますます重要になってきます。 

ゼミの進め方

 3年前期は, 在日外国人の現状や問題を関連資料,テキスト, ビデオ, グループ発表を通して学んでいきます。 夏休みに各自, 地元もしくは自分の興味に基づいて選択した地域の外国人の現状や地域の取り組みについてフィールドワークを行ないます。 3年後期は, 夏休みの成果をゼミで共有し, 地域の実践事例を踏まえて前期の学習をさらに掘り下げます。 3年次から4年次にかけての春休みに卒論のテーマを絞り,4年前期は, ロールプレイやケースワーク事例検討を通して, 異文化間ソーシャルワークの具体的な手法の習得をめざすと共に, 各自卒論の作業を進めていきます。 後期は卒論の完成に向けて各人の研究成果の報告を積み上げます。

履修上の注意
  1. ゼミ所属決定者は, 巻末の参考文献の中から1冊を読み, ゼミのテーマと関連させながら読後感想文 (2000字程度) を作成し, 第1回のゼミが始まる前に石河研究室 (519) に提出してください。 その際, コピーを自分用に1部作成しておくこと。
  2. 期末試験終了前後にゼミの顔合わせを行ないますので,試験期間中の掲示に注意をしておいてください。
  3. ソーシャルワークの基礎知識を習得するために, 「社会福祉方法原論」「社会福祉方法各論I」,「社会福祉方法各論II」を履修するようにしてください。

使用テキスト 担当教員からのメッセージ
   異文化間のソーシャルワークは極めて新しい領域です。 開拓精神を持って一緒に日本の中の国際化に取り組んで行きましょう。


(C) Copyright 2002 Nihon Fukushi University. all rights reserved.
本ホームページからの転載を禁じます。