保育士等キャリアアップ研修ってどんな研修?
その研修内容や研修の対象となる方を解説します!

2017年に厚生労働省が制定し、2023年度より研修受講が必須となった研修である「保育士等キャリアアップ研修」。
このページではその研修内容や研修の受講対象となる方、また制度についても詳しく解説していきます。

目次
  1. 保育士等キャリアアップ研修とは?
  2. 保育士等キャリアアップ研修で学ぶ内容とは?
  3. 受講するメリット? 新しい役職について
  4. 保育士等キャリアアップ研修の受講の必須化について
  5. 保育士等キャリアアップ研修の修了証について
  6. 保育士等キャリアアップ研修を受講しよう!

保育士等キャリアアップ研修とは?

近年、子どもや子育てを取り巻く環境が様々に変化をしていっており、保育所に求められる役割も多様化・複雑化しており、その対応にあたる保育士の専門性の向上が重要となっています。
その中で、一定の水準のもとで保育現場におけるリーダー的職員を育成し、これまで曖昧であった保育士等のキャリアアップの仕組みの構築及び処遇改善に繋げることを目的として、2017年に厚生労働省が制定し、2023年度より研修受講が必須となった研修のことをいいます。

研修を受けた保育士は処遇改善等加算Ⅱの対象となるため、保育士の給与アップを期待できます。
また一般保育士から主任保育士になるまでの間に、段階的な3つの役職(副主任保育士・専門リーダー・職務別リーダー)を設定し、保育士のキャリアパスを描きやすくしました。

研修の実施主体としては、各都道府県又は都道府県が指定した研修実施機関が、厚生労働省が策定したガイドラインの内容に基づき、実施をすることとなっています。

保育士等キャリアアップ研修で学ぶ内容とは?

保育士等キャリアアップ研修は大きく3種類(計8分野)に分けられています。
その3つとは以下の通りで、それぞれ対象も異なっています。

1. 専門分野別研修

専門分野別研修は以下の6分野に分けられています。

① 乳児保育、② 幼児教育、③ 障害児保育、④ 食育・アレルギー対応、⑤ 保健衛生・安全対策、⑥ 保護者支援・子育て支援

対象者
保育所等の保育現場において、各専門分野に関してリーダー的な役割を担う者
(当該役割を担うことが見込まれる者を含む)
2. マネジメント研修
対象者
各分野におけるリーダー的な役割を担うものとしての経験があり、主任保育士の下でミドルリーダーの役割を担う者
(当該役割を担うことが見込まれる者を含む)
3. 保育実践研修
対象者
保育所等の保育現場における実習経験の少ない者(保育士試験合格者等)又は長期間、保育所等の保育現場で保育を行っていない者(潜在保育士)

以上の3つ(計8分野)が設定されており、研修時間としては1分野15時間以上の受講、さらに研修の受講後にレポートを提出することで修了証の交付を受けることができます。
各分野別の詳しい内容や研修のねらいは以下の表をご覧ください。

研修分野ねらい内容
乳児保育
(主に0歳から3歳未満児向けの保育内容)
乳児保育に関する理解を深め、適切な環境を構成し、個々の子どもの発達の状態に応じた保育を行う力を養い、他の保育士等に乳児保育に関する適切な助言及び指導ができるよう、実践的な能力を身に付ける。
  • 乳児保育の意義
  • 乳児保育の環境
  • 乳児への適切な関わり
  • 乳児の発達に応じた保育内容
  • 乳児保育の指導計画、記録及び評価
幼児教育
(主に3歳以上児向けの保育内容)
幼児教育に関する理解を深め、適切な環境を構成し、個々の子どもの発達の状態に応じた幼児教育を行う力を養い、他の保育士等に幼児教育に関する適切な助言及び指導ができるよう、実践的な能力を身に付ける。
  • 幼児教育の意義
  • 幼児教育の環境
  • 幼児の発達に応じた保育内容
  • 幼児教育の指導計画、記録及び評価
  • 小学校との接続
障害児保育 障害児保育に関する理解を深め、適切な障害児保育を計画し、個々の子どもの発達の状態に応じた障害児保育を行う力を養い、他の保育士等に障害児保育に関する適切な助言及び指導ができるよう、実践的な能力を身に付ける。
  • 障害の理解
  • 障害児保育の環境
  • 障害児の発達の援助
  • 家庭及び関係機関との連携
  • 障害児保育の指導計画、記録及び評価
食育 アレルギー対応
  • 食育に関する理解を深め、適切に食育計画の作成と活用ができる力を養う。
  • アレルギー対応に関する理解を深め、適切にアレルギー対応を行うことができる力を養う。
  • 他の保育士等に食育・アレルギー対応に関する適切な助言及び指導ができるよう、実践的な能力を身に付ける。
  • 栄養に関する基礎知識
  • 食育計画の作成と活用
  • アレルギー疾患の理解
  • 保育所における食事の提供ガイドライン
  • 保育所におけるアレルギー対応ガイドライン
保健衛生・安全対策
  • 保健衛生に関する理解を深め、適切に保健計画の作成と活用ができる力を養う。
  • 安全対策に関する理解を深め、適切な対策を講じることができる力を養う。
  • 他の保育士等に保健衛生・安全対策に関する適切な助言及び指導ができるよう、実践的な能力を身に付ける。
  • 保健計画の作成と活用
  • 事故防止及び健康安全管理
  • 保育所における感染症対策ガイドライン
  • 保育の場において血液を介して感染する病気を防止するためのガイドライン
  • 教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン
保護者支援・子育て支援 保護者支援・子育て支援に関する理解を深め、適切な支援を行うことができる力を養い、他の保育士等に保護者支援・子育て支援に関する適切な助言及び指導ができるよう、実践的な能力を身に付ける。
  • 保護者支援
  • 子育て支援の意義
  • 保護者に対する相談援助
  • 地域における子育て支援
  • 虐待予防
  • 関係機関との連携、地域資源の活用
マネジメント 主任保育士の下でミドルリーダーの役割を担う立場に求められる役割と知識を理解し、自園の円滑な運営と保育の質を高めるために必要なマネジメント・リーダーシップの能力を身に付ける。
  • マネジメントの理解
  • リーダーシップ
  • 組織目標の設定
  • 人材育成
  • 働きやすい環境づくり
保育実践 子どもに対する理解を深め、保育者が主体的に様々な遊びと環境を通じた保育の展開を行うために必要な能力を身に付ける。
  • 保育における環境構成
  • 子どもとの関わり方
  • 身体を使った遊び
  • 言葉・音楽を使った遊び
  • 物を使った遊び

受講するメリット・新しい役職について

上記で述べたように、保育士等キャリアアップ研修の開始に伴って新たに ①副主任保育士、②専門リーダー、③職務別リーダー の3つの役職が設定されました。
以下ではその3つの違いについて解説していきます。

役職処遇改善要件
副主任保育士
※ライン職
月額4万円
  • 経験年数概ね7年以上
  • 職務分野別リーダーを経験
  • マネジメント+3つ以上の分野の専門研修を修了
  • 副主任保育士としての発令
専門リーダー
※スタッフ職
月額4万円
  • 経験年数概ね7年以上
  • 職務分野別リーダーを経験
  • 4つ以上の分野の専門研修を修了
  • 専門リーダとしての発令
職務分野別リーダー 月額5千円
※標準規模の園で3人
  • 経験年数概ね3年以上
  • 担当する職務分野の専門研修を修了
  • 修了した専門研修の研修分野に係る職務別リーダーとしての発令
    (例:乳児保育リーダー、食育・アレルギーリーダー等)
    ※ 同一分野について複数の職員に発令することも可能

上記のように3つの役職それぞれに要件及び処遇改善加算対象の金額が設定されています。
副主任保育士と専門リーダーはよく似た要件となっていますが、マネジメントの研修の修了の有無による違いがあります。
これは副主任保育士がライン職、専門リーダーがスタッフ職を想定して設定されたことによるものだと伺えます。

そして受講するメリットとして挙げられることに、処遇改善加算があります。
細かく条件が設定されていることもあり、必ずしも役職者1人あたりに加算額がそのまま上乗せされるわけではありませんが、役職者が増えることで園全体での処遇改善加算額も増え、園で働く保育士の個々の給与アップにも繋がっていくことが想定されています。

保育士等キャリアアップ研修の受講の必須化について

処遇改善等加算Ⅱに係る研修修了要件が令和5年度(2023年度)から段階的に適用されることになりました。
適用時期については役職によって異なり、副主任保育士、中核リーダー及び専門リーダーは令和5年度(2023年度)から1分野(15時間)以上の研修修了要件が適用され、令和6年度(2024年度)以降、毎年度1分野(15時間)以上ずつ段階的に必要となる研修修了数が引上げられます。
完全実施は令和8年度(2026年度)で、4分野(60時間)以上の研修修了要件が適用されます。

職務分野別リーダー及び若手リーダーは令和6年度(2024年度)から1分野(15時間以上)の研修修了要件が適用されます。

副主任保育士・中核リーダー等

職務分野別リーダー・若手リーダー

副主任保育士等において月額4万円の改善を行う者を1人以上確保したうえで、副主任保育士等に係る加算額を配分して賃金の改善を行う職務分野別リーダー等についても、令和6年度以降は、1分野 (15時間)以上の研修修了が必要

保育士等キャリアアップ研修の修了証について

各都道府県ごとで実施をする保育士等キャリアアップ研修ですが、研修を修了した際に発行される修了証は、その都道府県のみで有効な訳でなく、全国共通で活用できるものとなります。また一度取得した修了証に期限もありません。
なので引っ越しして別の都道府県で勤務することになったり、転職や復職で保育士への復帰をするといった場合でも、修了証を活用することが可能です。

保育士等キャリアアップ研修を受講しよう!

今まで解説してきました保育士等キャリアアップ研修。
専門分野をより深く学んで、今後の保育や支援に活かしていきたい、また受講したら給与アップやキャリアアップも見込めることや、受講が必須化することもあり、受講を検討していきたいと考えている方も多いのではないでしょうか?

しかしながら、業務が忙しく、なかなか1分野15時間以上という時間をまとめて確保することは難しいかと思います。
そんなあなたにおススメなのが、「学校法人 日本福祉大学 保育士等キャリアアップ研修(障害児保育分野)」です。

本研修は、全講座オンライン(オンデマンド)で実施しています。
忙しい保育士さんに合わせて場所や時間を問わずにいつでも受講できるe-ラーニングシステムを導入し、かつ、「ふくし」の大学として、保育・幼児教育の理論や方法だけでなく、様々な福祉的課題に対応できる保育者を養成してきた日本福祉大学ならではの質の高い障害児保育についての学びを提供します!


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