2025年8月発売予定
この面接ツールは、パートナーからの暴力や支配的な言動を受けている人(その可能性がある人も含む)に対して、面接において、支援者がDVや支配のメカニズム、その影響について伝え、被害者本人とともに何ができるかを考えるためのツールです。当事者が自身の経験していることの意味や、感じているつらさや混乱の背景を理解することは、主体性を取り戻していくことにつながります。また、暴力や支配から離れた直後や離別後に新しい生活を作っている段階の人、子どもがいる人に対して使用するシートも盛り込んでいます。もちろんそれぞれの被害者の経験には個別性があります。一方で多くの被害者に共通する経験やストレングス(強み)があることも明らかになっています。本ツールは、こうした共通する要素を整理・集約したものです。被害者本人が知識を得ることは、自分自身の状況の客観視につながり、自責感や自身の経験していることが恥ずかしいことであるという認識を軽減します。また、相手(加害者)に心まで支配されない状況を生み出すとともに、安全・安心を得るための行動につながる可能性を増やし、さらに、回復を育んでいく助けにもなります。なお、今回の改訂・増補版では、2022年の初版からこの間の研究成果を盛り込み、被害者へのインタビュー調査から得られた経験や語りを紹介しています。また、DVの本質である「強圧的コントロール(coercive control)」の視点を重視し、この理解に立脚した支援のあり方を意識して構成しています。本ツールが、被害者のエンパワメントにつながり、そのプロセスに支援者が寄り添い支援するための一助として活用いただけましたら幸いです。
本ツールは、大きく以下の3つの内容に分かれています。
SEAT 1
関係につらさを感じている
あなたへのメッセージ
あなたを大切にするための一歩
DVと支配のメカニズムを知る
SEAT 2
暴力と支配から離れた
あなたへのメッセージ
あなたの大丈夫を
ゆっくりふやしましょう
SEAT 3
子どものいる
あなたへのメッセージ
子どもの回復とあなたとの
よりよい関係のために
いろいろな相談場面や機会での使用が可能です。使用の前提として、加害者の影響を受けない安全な状況で用いることが必要です。例えば、以下のような場面・機会、対象者への使用を想定しており、実際に多くの実践現場で使用されています。
活用事例1
活用事例2
活用事例3
上記以外の様々な相談や安全確保の場面で、DV被害者やその可能性がある人に対して、
また、被害者自身が読むことで、自らの状況について考えるきっかけとしても活用していただけます。
知識を得ることで、自分が置かれている困難やつらさの正体や理由を客観的に捉えることができ、自責感や暴力・支配の過小評価を軽減します。また、自分の努力や強みに気づく機会にもなります。
人との関係における安全性や安心感、適切な距離感(境界線)について理解を深めることができます。
今の状況を少しでも楽にするために、自分にできることや取り組めそうなことを考える機会を得られます。
ツールを使うと相談者が前のめりになって見て、話してくださるので、状況がわかりアセスメントしやすくなります。イラストをみて暴力で押しつぶされている状態とか、DVによる影響の気づきにもつながっています。
(女性相談支援センター職員)
まずは傾聴して「こんなことに困っているのですね」と理解するようにしています。
そこから、ツールを使って、「これも当てはまる、これもそうだったんですね」と一緒に確認しながら面接をしています。
(配偶者暴力相談支援センター職員)
ロールプレイ研修を開催して、所内や市町村職員と共通して使用しています。初めて支援の仕事につくひとにも、ベテランの支援者にも役立ちます。
(女性相談支援センター職員)
面接のときは常に持っています。目に見える形で説明できるツールとして役に立つと思っています。
(女性相談支援員)
身体的暴力はないけど、何時間も説教されたり、日常生活に細かなルールを決められていたり、とてもつらいと思っていました。相手は強圧的コントロールを行っていたんだと理解して、すっきりしました。
(DV被害経験者)