ため池の価値はどれくらい?

便益と同等の維持費が適切

 ため池は、農業用水を確保するために水を蓄え取水できるよう、人工的に造成された池のことである。数あるため池のなかで最も有名かつ最大のものは香川県の満濃池である。満濃池は、平安時代に弘法大師が改修したことでも知られる。

 ちなみに、ため池は一つ二つではなく、「サンズイに弘」と書いて「コウまたはオウ」と数えるそうだ。だとすれば愛知県内には3千コウ以上、全国には20万コウ以上のため池があるということになる。

続きを見る

 その昔、ため池は、食用のフナやコイを飼うためにも利用された。底にたまった泥は乾燥して肥料として田畑にまかれた。後に多くのため池は大規模灌漑(かんがい)システム(用水)により、遠隔の河川などの安定した水源と接続するようになった。

 現在では、たとえばレクリエーションや防災など、灌漑以外の多様な目的のために維持されるようになっている。ため池は、景観を維持し自然の湿地と同様に生物多様性を育む可能性や地域コミュニティーの活性化をもたらすという点でも注目されている。

 にもかかわらず、ため池の維持管理は必ずしも十分だとはいえない状況だ。たとえば、放棄された釣り糸やルアーの類い、不法投棄などは至る所で見られる。また、生活排水の流入や鵜糞などにより富栄養化しているものも少なくない。だから、ため池を適切に維持管理することは、相当な社会的便益をもたらす可能性がある。

 都市部のため池には、有刺鉄線で囲む代わりに、遊歩道やベンチを備えることができる。コンクリート堤体の代わりに湖岸線を自然の趣に似せることも可能である。定期的な排水と浚渫(しゅんせつ)により、外来種などを除去することも可能である。

 今から10年ほど前、科学研究費を得てため池の社会便益評価の研究を行った。選択実験の手法や分析結果の詳細については原著論文に譲るとして、ここでは結果の一部を外国の類似事例とともに紹介しよう。

 水質の改善に対するわれわれの推定結果は320円/月であったが、英国のハンレイらは河川の水質改善に対して12~40ポンド/年(当時のレート換算で200~670円/月)としている。外来生物の除去に対するわれわれの推定結果は780円/月であったが、スウェーデンのカールソンは外来ザリガニに対し600クローナ/年(当時のレート換算で800円/月)としている。

 このような属性別の価値評価から、属性の異なるため池1コウあたりの価値評価を行うことができるのだが、統計的に有意であったのは、山間部に見られるくさび形の山池に限られた。

 そこで、市街地に見られる円形の皿池に関しては、別途、半田市と常滑市の土地の公示価格に対し小学校や駅や皿池からの距離を回帰して得られるヘドニック関数を推定した。その結果、皿池から近いほど有意に土地価格が高いこと(1メートルごとに16円/平方メートル上昇)がわかった。

 市街地のため池も、遊歩道などが整備された公園として一定の評価を得ているということなのだろうか。一考の価値はありそうである。