• コラム

ふくし教育からSDGs運動を

ふくし教育からSDGs運動を

求められる新しい社会教育士

 SDGs(持続可能な開発目標)が広く知られるようになり、多くの企業や自治体、市民団体がその実現に向けた取り組みを進めています。しかし、SDGsが単なるスローガンにとどまらず、地域や職場、家庭の日常的な実践として根づくためには、人々がともに学び、行動を生み出す仕組みが欠かせません。その鍵を握るのが「ふくし教育」ではないかと考えています。

 ふくし教育とは、「ふだんのくらしのしあわせ」をめぐり、多様な人々が出会い、学びあい、支えあう関係を育む教育的営みです。従来の福祉分野に限定されず、地域づくり、企業活動、環境問題など、暮らしに関わるあらゆる課題とつながっています。

 私はSDGs運動を「SDGsを軸とした生活・社会改善運動」と捉えています。SDGsの17目標は、貧困、格差、健康、教育、環境、紛争、働き方など、私たちの身近な暮らしの課題そのものです。これらを自分事として捉え、行動につなげ、自らを取り巻く関係性を変えていくためには、すなわち「当事者性の変容」を生み出すためには、多様な立場の人々との出会いと対話・協働が不可欠です。ふくし教育は、そのための土台を提供します。

 また、私は2005年以来、「ESD(持続可能な開発のための教育)プラットフォーム創成プロジェクト」に取り組み、地域の多様な主体とともに持続可能な社会づくりを進めてきました。その20年の実践から学んだ最も大切なことの一つは、障害のある人々や社会的困難を抱える人々こそが、SDGs運動を照らす光であるということです。社会の課題は彼らの日常に最も鮮明に現れ、同時に、その存在にこそ人間の変化の可能性が宿っています。誰もが暮らしやすい社会を考えるとき、私たちはまず、そうした人々との「出会いなおし」から始める必要があります。そこに、SDGsが求める「常識の見直しと再構築」の原動力があります。

 こうした学びと協働の場を生み出し、人と人、人と組織、組織と地域をつなぐ役割として、これから期待されるのが、※「社会教育士」です。社会教育士は、単に学習機会を提供する存在ではありません。多様な主体が出会いなおす気配をつくり、対話を促し、新たな実践を生み出す場をつくるコーディネーターまたは発起人です。企業、行政、学校、NPO、地域コミュニティなど、あらゆる分野でその力が求められています。

 2027年4月に開設される日本福祉大学総合政策学部では、社会教育士養成課程を置き、こうした社会の要請に応える人材育成を目指しています。

 ふくし教育からSDGs運動を!その実践を支える社会教育士に注目が集まっています。持続可能で包摂的な社会づくりに向けて、「学びあい」を社会の中心に据える時代が来ているのではないでしょうか。

社会教育士
20年度に文部科学省が新設した公的な称号。学びを通じて「人づくり」「つながりづくり」「地域づくり」を推進し、地域課題の解決に中核的な役割を果たす専門人材。

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Profile

松岡 広路 全学教育センター 教授

  • ※この原稿は、中部経済新聞オピニオン「オープンカレッジ」(2026年7月8日)欄に掲載されたものです。学校法人日本福祉大学学園広報室が一部加筆・訂正のうえ、掲載しています。このサイトに掲載のイラスト・写真・文章の無断転載を禁じます。

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